【完結】浮気や愛人が許される世界に転生。皆が私に期待する

天冨 七緒

文字の大きさ
37 / 63

不安が不安を呼ぶ

しおりを挟む
 長期休暇も終わろうとし、今日王都に戻る。
 使用人に見送られながら馬車に乗り込む。
 私と父が王都に戻る為に使用人が見送りに集まっている。

「お嬢様、ケーキ美味しかったです。ありがとうございます」

 領地でお世話になった使用人にお礼を言われる。

「いえ、美味しかったので皆さんにもと思っただけです」

「エイジャックスに聞いております、お嬢様が働いたお金で購入されたと」

「あっ、それは……」

「お嬢様のお気持ち大変嬉しかったです」

 その事を知っているのは彼女だけでなく、控えていた使用人全員がお辞儀する。
 領地に到着した時に比べ、皆の表情が変わったように見えた。
 私は来た時と同じようにマキシーと一緒に馬車に乗り込む。
 数日かけて王都に戻る。
 
「はぁぁぁぁあああああ」

 王都の屋敷に到着すると自然と体を伸ばしていた。
 公爵令嬢としてあるまじき行動だが、長時間の移動をするとこうなってしまう。
 私よりも使用人の方が疲れているはずなのに、マキシーは疲れている姿を一切見せない。
 
「私より貴族ね」

 マキシーの働きに感心している。
 私と言えば領地でのこともあり、学園が始まるまで大人しくしているつもり。
 
「先生に手紙を書いたら迷惑かな? 」

 助けてもらったのに、お礼も言わずに王都に戻ってきてしまった。

「お礼の手紙は問題ありませんよ」

「なら、書く」

 キングズリーに手紙を書くと決めたものの、なんて書いていいのか分からず机に向かって時間が経った。
 
「お嬢様、休憩なさいますか? 」

「……そうする」

 手紙が書けないでいる私に見兼ねたマキシーが紅茶を差し出す。

「お嬢様、二日後には学園が始まります。手紙が難しいようなら直接お礼を伝えてはいかがですか? 」

「直接……それの方が難しいっ」

 マキシーの言葉で手紙へのやる気が出て、急いで書き終えキングズリーに届けた。
 手紙でお礼を伝え安心していると、次第に不安が押し寄せる。

「あれ? 手紙にあんなこと書く必要なかったのか? 」

 手紙にはお礼と……
 『勘違いさせてしまったのは私の至らなさですが、あの人とは何の関係もありません。誤解しないでください』
 等と、言い訳のような手紙を書いてしまったような気がする。
 
「あの言葉いらなかったのかな……ねぇ、先生からの返事はない?」

「届いておりません」

 学園が開始となれば生徒よりも教師の方が忙しい。
 そんな時期に重要でもない手紙の返事を頂こうなんて……

「学園で直接お礼すればいいよね。手紙は事前告知のようなもの……」

 手紙の返事がないまま長期休暇が終わり、学園が始まる。
しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず
恋愛
 行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。  お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……? ※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。  姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。  ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。

婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?

柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。 わたしには、妹なんていないのに。  

処理中です...