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諦めの悪い女視点
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<エヴァリーン・マルティネス>
学園に復帰したのに、ジャイルズは一向に私に会いに来ない。
私が廊下を歩くだけで周囲は気が付き噂するのに、ジャイルズが私に気が付かないはずがない。
「あっ、ジャイルズ……」
すれ違っても彼は私に声を掛けなかった……
「私と婚約する気ないの? 」
婚約する気がない人間が、婚約者を放って他の令嬢を優先するなんてどう考えても婚約に不満を持っている証拠。
誰もが、私達は婚約すると思っていた。
「私は……愛人なんかで終わらない」
二人で美術館を訪れ流行りの絵画を楽しんで眺めた。
その時、悔しがるあの女に遭遇して優越感に浸っていた。
あの日見た、『夫が愛人と淫らに戯れる』はとても印象的な絵画で今でも覚えている。
「夫……」
愛人が夫人より愛されている絵画だが、結局は『愛人』のまま。
夫は夫人と別れる事は無く、愛人は夫人にはなれない。
そんな絵画……
「絶対に私が婚約してやる」
どうにかして関係を修復しなければと考えを巡らせているとおかしな噂を耳にした。
『アンダーソン伯爵がアイゼンハワー令嬢の為に大会に挑み、アイゼンハワー令嬢はアンダーソン伯爵にハンカチを贈る……』
その噂をする者は、必ずと言っていいほど私を確認する。
「なんなのよ、その噂」
私と同じようにそんな事ありえないと考えているジャイルズの友人が確認している場に遭遇した。
「俺が貰う」
ジャイルズは私のハンカチではなく、アイゼンハワーのハンカチを貰う予定だと宣言した。
「今さらなんなのよっ」
公爵令嬢の婚約を解消させた事で『我が家は社交会で避けられている』と母がヒステリックに騒ぐようになった。
お茶会やパーティーの招待が届かないだけでなく、父の仕事にも影響が出始めていると耳にした。
執事が日々届く手紙を父に届けるのを躊躇うようになっていた。
その姿からして、良い報せではないのは予想できる。
次第に商人が遠のき新作の物が手に入らなくなった。
以前まで親しくしていた友人達も、私を見つけると視線を逸らし去って行く。
この状態でジャイルズまでいなくなったら、私はきっと問題しかない令息か歳の離れた老人と結婚させられる。
それだけは避けたい。
「ジャイルズとアイゼンハワーを遠ざけないと……」
大会当日。
ジャイルズはあの女の為に試合を勝ち進んでいる。
ジャイルズはあの女と婚約する気でいるが、あの女は明らかに興味がないように見える。
本当にハンカチを贈る約束をしたのだろうか?
「あの女、一度もジャイルズの試合見てないじゃない。そもそも、どこにいるのよ? 」
会場内を見渡してもあの女を探し出すことが出来なかった。
自身に関係ない試合もしっかり見て応援しているのは平民と下位貴族令嬢くらい。
大抵の令嬢は婚約者もしくは、想い人の試合を確認すれば競技場をあとにする。
会場が込み始めるのは、準決勝あたりからだ。
ジャイルズが無事二次予選を通過し、あの女が何処にいるのか探すことにした。
「ん? 何見てるの? 」
あの女を発見することができたが、何かに気を取られている様子。
「三人と……先生? ……強っ」
男子生徒二人の試合に教師が加わり二人を制した。
教師はキングズリー。
温和な性格で清潔感があり、思春期の令嬢からも好かれている。
そんな男性が未熟とはいえ、男子生徒二人を一気に制圧する技量の持主だという事に驚く。
彼の意外性に、ジャイルズよりも『素敵』と思ってしまったがその感情を振り払う。
四人と一人の関係を遠くから観察する。
すると、生徒三人は競技場の方へと向かい教師は落ちていた剣を拾い倉庫へ。
そして、あの女は教師の後を追うので私も追った。
「ん? 距離近っ……ん? もしかして……ハンカチ……んふっ……へぇ……」
教師の腕にハンカチを巻いたので、先程の戦いで怪我でもしたのだろう。
経緯はどうであれ、あの女のハンカチは教師に渡り、教師が所持している事になった。
その事実を心優しい私はジャイルズに教えてあげた。
ありもしない噂が拡散され、元婚約者のハンカチを手にするのは自分だと思っていたジャイルズは信じられないと表情が言っていた。
それでもあきらめきれずにいるようなので、一押ししてあげることにした。
「アイゼンハワー令嬢はキングズリー先生とパーティーに参加されるみたいよ。剣術大会の時に、競技場の裏でキングズリー先生が令嬢のハンカチを受け取る姿を目撃したの。素敵な光景だったわ」
私の状況を嫌味で攻撃する令嬢達に情報を与えた。
その中の一人が本気でキングズリーに思いを寄せているのは知っている。
それは私だけではないので、知っている者は彼女を確認していた。
「まさか。キングズリー先生は生徒から一切贈り物を受け取らない方ですよ」
面白いように私の挑発に引っかかってくれる。
「まぁ、それだけアイゼンハワー令嬢を特別に思っていらっしゃるんですね」
「そんなわけないでしょっ。アイゼンハワー令嬢が無理やり押し付けたのよ」
鋭い。
令嬢としては信じたくないあまりの反論だが、あの状況は確かに強引とは言わないがキングズリーが自らの意思で受け取ったかと言われるとそれも違う。
ただの手当だもの。
そこで会話を終わらせたが、噂は拡散された。
「アンダーソンがアイゼンハワーのハンカチを勝ち取った」
「アイゼンハワーはキングズリー先生にハンカチを贈った」
そんな噂から始まり、時間と共に変化していく。
「アイゼンハワーは婚約解消後、様々な貴族に言い寄っている」
「パーティーの為にアイゼンハワーは何枚ものハンカチを配り歩いている」
次第に、噂を肯定する者が現れる。
「俺も貰った」
「私も贈っているのを目撃しました」
学園はアイゼンハワーの醜聞で盛り上がっていた。
学園に復帰したのに、ジャイルズは一向に私に会いに来ない。
私が廊下を歩くだけで周囲は気が付き噂するのに、ジャイルズが私に気が付かないはずがない。
「あっ、ジャイルズ……」
すれ違っても彼は私に声を掛けなかった……
「私と婚約する気ないの? 」
婚約する気がない人間が、婚約者を放って他の令嬢を優先するなんてどう考えても婚約に不満を持っている証拠。
誰もが、私達は婚約すると思っていた。
「私は……愛人なんかで終わらない」
二人で美術館を訪れ流行りの絵画を楽しんで眺めた。
その時、悔しがるあの女に遭遇して優越感に浸っていた。
あの日見た、『夫が愛人と淫らに戯れる』はとても印象的な絵画で今でも覚えている。
「夫……」
愛人が夫人より愛されている絵画だが、結局は『愛人』のまま。
夫は夫人と別れる事は無く、愛人は夫人にはなれない。
そんな絵画……
「絶対に私が婚約してやる」
どうにかして関係を修復しなければと考えを巡らせているとおかしな噂を耳にした。
『アンダーソン伯爵がアイゼンハワー令嬢の為に大会に挑み、アイゼンハワー令嬢はアンダーソン伯爵にハンカチを贈る……』
その噂をする者は、必ずと言っていいほど私を確認する。
「なんなのよ、その噂」
私と同じようにそんな事ありえないと考えているジャイルズの友人が確認している場に遭遇した。
「俺が貰う」
ジャイルズは私のハンカチではなく、アイゼンハワーのハンカチを貰う予定だと宣言した。
「今さらなんなのよっ」
公爵令嬢の婚約を解消させた事で『我が家は社交会で避けられている』と母がヒステリックに騒ぐようになった。
お茶会やパーティーの招待が届かないだけでなく、父の仕事にも影響が出始めていると耳にした。
執事が日々届く手紙を父に届けるのを躊躇うようになっていた。
その姿からして、良い報せではないのは予想できる。
次第に商人が遠のき新作の物が手に入らなくなった。
以前まで親しくしていた友人達も、私を見つけると視線を逸らし去って行く。
この状態でジャイルズまでいなくなったら、私はきっと問題しかない令息か歳の離れた老人と結婚させられる。
それだけは避けたい。
「ジャイルズとアイゼンハワーを遠ざけないと……」
大会当日。
ジャイルズはあの女の為に試合を勝ち進んでいる。
ジャイルズはあの女と婚約する気でいるが、あの女は明らかに興味がないように見える。
本当にハンカチを贈る約束をしたのだろうか?
「あの女、一度もジャイルズの試合見てないじゃない。そもそも、どこにいるのよ? 」
会場内を見渡してもあの女を探し出すことが出来なかった。
自身に関係ない試合もしっかり見て応援しているのは平民と下位貴族令嬢くらい。
大抵の令嬢は婚約者もしくは、想い人の試合を確認すれば競技場をあとにする。
会場が込み始めるのは、準決勝あたりからだ。
ジャイルズが無事二次予選を通過し、あの女が何処にいるのか探すことにした。
「ん? 何見てるの? 」
あの女を発見することができたが、何かに気を取られている様子。
「三人と……先生? ……強っ」
男子生徒二人の試合に教師が加わり二人を制した。
教師はキングズリー。
温和な性格で清潔感があり、思春期の令嬢からも好かれている。
そんな男性が未熟とはいえ、男子生徒二人を一気に制圧する技量の持主だという事に驚く。
彼の意外性に、ジャイルズよりも『素敵』と思ってしまったがその感情を振り払う。
四人と一人の関係を遠くから観察する。
すると、生徒三人は競技場の方へと向かい教師は落ちていた剣を拾い倉庫へ。
そして、あの女は教師の後を追うので私も追った。
「ん? 距離近っ……ん? もしかして……ハンカチ……んふっ……へぇ……」
教師の腕にハンカチを巻いたので、先程の戦いで怪我でもしたのだろう。
経緯はどうであれ、あの女のハンカチは教師に渡り、教師が所持している事になった。
その事実を心優しい私はジャイルズに教えてあげた。
ありもしない噂が拡散され、元婚約者のハンカチを手にするのは自分だと思っていたジャイルズは信じられないと表情が言っていた。
それでもあきらめきれずにいるようなので、一押ししてあげることにした。
「アイゼンハワー令嬢はキングズリー先生とパーティーに参加されるみたいよ。剣術大会の時に、競技場の裏でキングズリー先生が令嬢のハンカチを受け取る姿を目撃したの。素敵な光景だったわ」
私の状況を嫌味で攻撃する令嬢達に情報を与えた。
その中の一人が本気でキングズリーに思いを寄せているのは知っている。
それは私だけではないので、知っている者は彼女を確認していた。
「まさか。キングズリー先生は生徒から一切贈り物を受け取らない方ですよ」
面白いように私の挑発に引っかかってくれる。
「まぁ、それだけアイゼンハワー令嬢を特別に思っていらっしゃるんですね」
「そんなわけないでしょっ。アイゼンハワー令嬢が無理やり押し付けたのよ」
鋭い。
令嬢としては信じたくないあまりの反論だが、あの状況は確かに強引とは言わないがキングズリーが自らの意思で受け取ったかと言われるとそれも違う。
ただの手当だもの。
そこで会話を終わらせたが、噂は拡散された。
「アンダーソンがアイゼンハワーのハンカチを勝ち取った」
「アイゼンハワーはキングズリー先生にハンカチを贈った」
そんな噂から始まり、時間と共に変化していく。
「アイゼンハワーは婚約解消後、様々な貴族に言い寄っている」
「パーティーの為にアイゼンハワーは何枚ものハンカチを配り歩いている」
次第に、噂を肯定する者が現れる。
「俺も貰った」
「私も贈っているのを目撃しました」
学園はアイゼンハワーの醜聞で盛り上がっていた。
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