【完結】浮気や愛人が許される世界に転生。皆が私に期待する

天冨 七緒

文字の大きさ
44 / 63

パーティーの事を考えると疲れる

しおりを挟む
「アイゼンハワー公爵令嬢、よろしいかしら? 」

 久しぶりに生徒に声を掛けられる。
 相手の名前は分からない。

「はい、なんでしょう? 」

「小耳に挟んだのだけど、キングズリー先生にハンカチを贈ったというのは本当かしら? 」

「贈った? 何のことです? 」

「……剣術大会でアイゼンハワー嬢がキングズリー先生にハンカチを贈るのを目撃したという方がいましたの。その方を疑っているわけではないのだけど、見間違いの可能性もあるでしょう? 間違っていたらあなたに申し訳なくて」

「噂の確認されるなんて、正義感溢れる方なんですね。ですが確認して頂き感謝します。私は誰にもハンカチを贈ってはいません。失くしてしまいましたから……もしかしたら私のハンカチをキングズリー先生が拾ってくださったのかもしれませんね。諦めていたのですが、確認してみます」

 贈ってはいない。
 手当に使用しただけ。
 キングズリーが私のハンカチを手にしていても、問題ないような理由を提示しておいた。

「まぁ、そうだったの? 落とし物をキングズリー先生が……噂は訂正しておくわね」

「ありがとうございます」

 最近、私の名前を口にしている生徒が多いのには気が付いていた。
 相手がキングズリーだったりアンダーソンだったり顔も知らない人だったりと、正確な内容が掴めなかった。
 だが、これで少しは解決できたのではないだろうか?
 満足したのか、令嬢達は去って行く。 

「私のハンカチの行方なんてどうでもいいじゃない? 」

 キングズリーに興味があるなら本人に当たって砕ければいいし、アンダーソンは婚約解消し恋人とも別れたので今はフリー。
 パートナーに誘うのに私を気にすることは無い。
 自由にしたらいい。
 
「アイゼンハワー嬢」

 振り向くのが嫌な人物に声を掛けられてしまった。
 通ってくる雰囲気に逃げ切れないと身構える。

「アイゼンハワー嬢……剣術大会の試合見てくれたか? 」

 剣術大会が終わり、男子生徒は一気にハンカチ争奪戦に挑み始める。

「いえ、観ておりません」

「そうか……三回戦まで通過したんだ。ブロックの優勝は逃してしまったが、令嬢が見てくれていると頑張れた」

「観ていません」

「そうだね。だけど、観てくれていると思っているだけで、実力を出せたと思っている。アイゼンハワー令嬢が俺に力をくれた」

「勘違いですよ」

「絶対に認めないんだな。それより、ハンカチの話なんだが……」

「別の令嬢から受け取っては如何です? 」

「アイゼンハワー嬢から貰いたい」

「ありません」
  
「キングズリー先生が拾ったって聞いたけど? 」

 噂の訂正が、ここに影響するとは……

「汚れていたので、廃棄しました。誰かに贈れるような状態ではなかったので」

 既にハンカチはこの世に無いと教えた。
 これで諦めるだろう。

「そうか、なら誰にも贈ってないってことだよな? なら俺とテレンシオールパーティーを一緒に行かないか? 」

「行きません。何故私が婚約解消した貴方と一緒に参加しなければならないんですか? 」

「俺が令嬢をエスコートしたいんだ」

「私は貴方のエスコートなど受けたくありません」

「でも、パーティーにパートナーは必要だろう? 誰も君を誘ってないと聞く」

「パーティーに参加する者はパートナーが必要でしょうけど、私にはパートナーは必要ありません」

「一人で参加するつもりなのか? 」

「いえ、参加するつもりがないんです」

「参加……しないのか? なら、その日は予定がないってことだよな? なら、俺に時間をくれないか? 」

「お断りいたします。はっきり言わせてもらいますが、私がアンダーソン伯爵令息と再婚約する事はありません。このような話は二度としないでいただきたい。それでは、ごきげんよう」

 しつこすぎる。
 きっと、公爵家との繋がりが切れたのが相当な痛手で必死なんだろうが、手遅れだというのを認めて私とは関係のない人生を歩んでほしい。
 
「私を巻き込まないでほしい……テレンシオールパーティーの日、本当に公爵家に訪れたりしないよね? 」

 あの様子だと、我が家に突撃してきそうで怖い。
 テレンシオールパーティーを出席するにはこれからパートナーが必要となり相手を探すのに苦労しそうだが、欠席すればあの男が屋敷まで現れそうで精神的に疲れそう。

「どうしたらいいの? 」
しおりを挟む
感想 58

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした

柚木ゆず
恋愛
 行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。  お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……? ※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。

婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。  ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果

柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。  姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。  ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。

婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?

柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。 わたしには、妹なんていないのに。  

処理中です...