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同化型④
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最後のホームルームの終了を知らせる鐘が鳴り、んん、と伸びをする。今日も授業で疲れてしまった。……午後の授業に至っては、ほとんど寝かけてしまった。反省する。
放課後になって。翔たちには共に帰れないことを話しておいた。というのも──二階堂くんから以前誘われていた喫茶店へと、彼と共に行く約束をしていたからだ。彼のおかげで参宮くんの暴走を抑えられた。なにか奢ってあげたいものだ。二階堂くんと落ちあい、学校を出て。どこか楽しげな彼の後ろに続いて足を進めていれば、それはふと止まった。
「喫茶店、ここです!」
「わ……こんなとこ、あったんだ」
スマホで位置を確認していた二階堂くんが、顔を上げてとある方向を指さす。通りに面してはいるがなんだか他の建物よりもひっそりとしていて、言われなければ気が付かなかっただろう。
レトロな小さい電光看板。それによれば喫茶店は「ルポス」という名前らしい。どんな意味なのだろう、と思いながら扉を開けた。からん、とベルの音が鳴る。
「いらっしゃいませー!」
出迎えてくれたのは、聞いたことのある声。そちらを見れば──明るい髪の友人が、そこに立っていた。
「え、四方田くん?」
「あれ、田山くんじゃん! 友だち?」
落ち着いた制服に身を包んでいる。目を丸くしてから、ぱあっと顔を明るくして。後ろにいた二階堂くんを見て、不思議そうに声を発した。
「あはは、そう。可愛い後輩」
「一年の二階堂です。よろしくお願いします」
「おわ、礼儀正し! 二年の四方田、よろしくねー」
生真面目な二階堂くんと、派手やかで一見チャラい印象を与える四方田くん。なんだか正反対なふたりだ。だけど、仲良くなれそうな気もする。簡単に挨拶を交わし、四方田くんはトレーを片手に俺たちを案内した。
「こちらへどーぞ!」
案内されたのは、奥の席だ。周りにお客さんは数組ほど。みな和やかに談笑をしている。木目調のテーブルや椅子。茶色を基調としたそれらは目に優しく、時計の秒針が刻む音がなんともゆったりとした感じで落ち着く。
腰を落ち着けてから、メニューを開く。手書きのそれは温かみを感じ、定番のものが揃えられていて悩んでしまう。だが、食べすぎたら夕飯が入らなくなってしまう。ケーキ辺りが無難だろう。
「二階堂くんは何が食べたい?」
「ええと……ショートケーキ、かな。でもチーズケーキもいいですね……うーん……」
彼もどうやらケーキを頼みたいようだ。難しい問題集を相手にしたときよりも悩ましげに、眉根を寄せて呟いている。可愛らしいその姿に、思わず吹き出しそうになった。
「っはは、じゃあ俺がチーズケーキ頼むから、分けよう」
「……いいんですか?」
「もちろん」
もともと俺の奢りだ。ショートケーキの苺もきっと彼が食べたいだろうし。……いちご大福といい、段々と彼の好みがわかってきた気がする。
飲み物はアイスティーでいいようだ。俺は……メロンソーダにしよう。すみません、と少しだけ声を張って呼べば、四方田くんが飛んできてくれた。
「はーい、ご注文は?」
「ショートケーキとチーズケーキ。あとアイスティーと、メロンソーダで!」
「はーい、かしこまりました! 少々お待ちくださーい!」
元気な声があがる。周りのお客さんは常連なのだろうか、「ほんと元気ねえ」とひと組の老夫婦がくすくすと控えめに笑っていた。四方田くんはどうやら元気な従業員として親しんでいるらしい。……なんとも彼らしくて、微笑ましい。
視線を戻し、二階堂くんと視線を合わせた。周りが気になるのだろうか。なんだかそわそわとしているようだ。
「誘ってくれてありがとうね」
「いえ、そんな……僕が来たかっただけで……」
「いや、本当にありがとう。メッセージくれたおかげで助かったから」
本心からそう言えば、彼は不思議そうな表情を浮かべて。
「助かった? ……なにが──ああ、」
空気が変わった、ような気がした。まずい。言わなければよかったと後悔したところで、時すでに遅し。自分の迂闊さが憎くなる。なんだか最近はこういうことばっかりだ。
「あの不良ですか」
放課後になって。翔たちには共に帰れないことを話しておいた。というのも──二階堂くんから以前誘われていた喫茶店へと、彼と共に行く約束をしていたからだ。彼のおかげで参宮くんの暴走を抑えられた。なにか奢ってあげたいものだ。二階堂くんと落ちあい、学校を出て。どこか楽しげな彼の後ろに続いて足を進めていれば、それはふと止まった。
「喫茶店、ここです!」
「わ……こんなとこ、あったんだ」
スマホで位置を確認していた二階堂くんが、顔を上げてとある方向を指さす。通りに面してはいるがなんだか他の建物よりもひっそりとしていて、言われなければ気が付かなかっただろう。
レトロな小さい電光看板。それによれば喫茶店は「ルポス」という名前らしい。どんな意味なのだろう、と思いながら扉を開けた。からん、とベルの音が鳴る。
「いらっしゃいませー!」
出迎えてくれたのは、聞いたことのある声。そちらを見れば──明るい髪の友人が、そこに立っていた。
「え、四方田くん?」
「あれ、田山くんじゃん! 友だち?」
落ち着いた制服に身を包んでいる。目を丸くしてから、ぱあっと顔を明るくして。後ろにいた二階堂くんを見て、不思議そうに声を発した。
「あはは、そう。可愛い後輩」
「一年の二階堂です。よろしくお願いします」
「おわ、礼儀正し! 二年の四方田、よろしくねー」
生真面目な二階堂くんと、派手やかで一見チャラい印象を与える四方田くん。なんだか正反対なふたりだ。だけど、仲良くなれそうな気もする。簡単に挨拶を交わし、四方田くんはトレーを片手に俺たちを案内した。
「こちらへどーぞ!」
案内されたのは、奥の席だ。周りにお客さんは数組ほど。みな和やかに談笑をしている。木目調のテーブルや椅子。茶色を基調としたそれらは目に優しく、時計の秒針が刻む音がなんともゆったりとした感じで落ち着く。
腰を落ち着けてから、メニューを開く。手書きのそれは温かみを感じ、定番のものが揃えられていて悩んでしまう。だが、食べすぎたら夕飯が入らなくなってしまう。ケーキ辺りが無難だろう。
「二階堂くんは何が食べたい?」
「ええと……ショートケーキ、かな。でもチーズケーキもいいですね……うーん……」
彼もどうやらケーキを頼みたいようだ。難しい問題集を相手にしたときよりも悩ましげに、眉根を寄せて呟いている。可愛らしいその姿に、思わず吹き出しそうになった。
「っはは、じゃあ俺がチーズケーキ頼むから、分けよう」
「……いいんですか?」
「もちろん」
もともと俺の奢りだ。ショートケーキの苺もきっと彼が食べたいだろうし。……いちご大福といい、段々と彼の好みがわかってきた気がする。
飲み物はアイスティーでいいようだ。俺は……メロンソーダにしよう。すみません、と少しだけ声を張って呼べば、四方田くんが飛んできてくれた。
「はーい、ご注文は?」
「ショートケーキとチーズケーキ。あとアイスティーと、メロンソーダで!」
「はーい、かしこまりました! 少々お待ちくださーい!」
元気な声があがる。周りのお客さんは常連なのだろうか、「ほんと元気ねえ」とひと組の老夫婦がくすくすと控えめに笑っていた。四方田くんはどうやら元気な従業員として親しんでいるらしい。……なんとも彼らしくて、微笑ましい。
視線を戻し、二階堂くんと視線を合わせた。周りが気になるのだろうか。なんだかそわそわとしているようだ。
「誘ってくれてありがとうね」
「いえ、そんな……僕が来たかっただけで……」
「いや、本当にありがとう。メッセージくれたおかげで助かったから」
本心からそう言えば、彼は不思議そうな表情を浮かべて。
「助かった? ……なにが──ああ、」
空気が変わった、ような気がした。まずい。言わなければよかったと後悔したところで、時すでに遅し。自分の迂闊さが憎くなる。なんだか最近はこういうことばっかりだ。
「あの不良ですか」
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