ご主人様は小学四年生

ましゅまろ

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日常と訓練

ドSな計画

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翌朝――
目を覚ますと、妙な視線を感じた。

「……うわっ」

視線の主は、僕の顔をじっと覗き込んでいた陽翔だった。しかも、枕元に正座して。

「おはよう、執事」

「……おはようございます、ご主人様。って、なにしてるの?」

「今日から“新しい任務”を与えるよ。君の執事力をさらに高めるためにね」

どこか含みのある笑みを浮かべる陽翔。胸騒ぎしかしない。

「内容によりますが……」

「今日は“忠誠度テスト”を実施します!」

「……それ、また変なことさせる気じゃ……?」

「ふふ、それはやってみてからのお楽しみ。君には、これから6つの課題を用意してある」

陽翔は、どこからともなく取り出した厚紙のリストを広げてみせた。
そこには、筆ペンで丁寧に書かれた文字が並ぶ。



忠誠度テスト:本日の課題
①ご主人様のくつ下を片方ずつ丁寧に履かせること
②ご主人様の筆箱をランドセルに入れ忘れないように確認すること
③ご主人様の髪型を整えながら「今日も世界一かっこいいです」と3回唱えること
④お昼のお弁当袋に手書きの応援メッセージを添えること
⑤下校時に玄関前で“おかえりダンス”を踊ること
⑥夜は添い寝しながら“今日のよかったこと”を3つ褒めること



「なにこの羞恥プレイ……」

「ドSな計画、発動中だよ。でも大丈夫。達成度によって、ボーナスがつくから!」

「ボーナスって……」

「ポイント制だよ。ご主人様からの“信頼ポイント”。溜まったら、ご褒美があるの」

そう言って、にっこり笑う陽翔。
この子はきっと、喜ばせるのと困らせるのを半々で楽しんでいる。まったく、恐ろしいご主人様だ。


朝の支度では、例の「世界一かっこいいです」三唱に顔が引きつりつつも、陽翔はまんざらでもない様子だった。むしろ、耳まで赤くしながらも、得意気に髪を撫でていた。

「執事のくせに、なかなか褒め上手じゃん」

「……日々、訓練の成果ということで」

「よろしい! 2ポイント進呈!」


“ごっこ遊び”と切り捨てるには、あまりに真剣で、
“しつけ”と呼ぶには、少しおかしくて、
それでも、この小さな主従関係は、確かに心を満たしてくれるものだった。
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