ご主人様は小学四年生

ましゅまろ

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日常と訓練

お勉強タイム

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午後四時――。
玄関の扉が開く音がして、僕は廊下へ迎えに出た。

「ご主人様、おかえりなさい」

「ただいま、執事。……今日はね、宿題がめちゃくちゃ多いの」

ランドセルを降ろしながら、陽翔は疲れた顔で言った。
クラス替え直後、担任の先生が“やる気に満ちた人”らしく、宿題の量も多いらしい。

「じゃあ、紅茶をいれて、少し休憩してからにしましょうか」

「ううん。先にやる。終わらないと落ち着かないから」

そう言って、自分の部屋へ向かっていく後ろ姿は――まるで本当の“大人”のようだった。


「じゃあここ、“分数のかけ算”なんだけど……この約分って、必要?」

「必要だよ。かける前でも後でもいいけど、最終的にはできるだけ簡単な形にしないと、減点されることもある」

「ふーん。大人って大変なんだね」

「これは大人の世界でもよくある話さ。効率よく、でも正しくやる。でなきゃ評価されない」

「それって、なんか寂しいね」

ノートにシャーペンを走らせながら、陽翔はふとつぶやいた。

「正しいだけじゃ、ダメなのかな。間違ってなくても、叱られることってあるじゃん」

「……」

僕は、思わず言葉に詰まった。
それは、まさに僕がかつて会社で味わった理不尽そのものだった。

「でも、君は違うよね。僕が間違ってても、怒らない」

陽翔は、僕の顔を見ずに言った。

「間違えても、やり直せるって思わせてくれる。だから、頑張れる」

その一言が、胸の奥にじんわりと染み込んでいく。

「そっか。なら、その気持ちは絶対裏切らないよ」

「じゃあ、今日の宿題が終わったら……また褒めて」

「もちろん。全力で」

「“天才です!”って、3回言ってね。世界一のご主人様って」

「はいはい……了解しました、ご主人様」

笑い合いながら、僕たちは宿題という“任務”に向き合った。
この時間が、いつまでも続けばいいのに――
ふと、そんなことを思ってしまった。
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