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3.仲直りはベッドの上で
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「格好悪くなんてないよ。わたしがやきもちを焼いて駄々をこねたとき、就職活動がうまくいかなくて落ち込んでいたとき、いつも航は泣いているわたしのそばにいてくれたよね」
子どもっぽいところはわたしも同じ。心を許した人だからこそ、見せることができる姿だと思う。
「本当は泣かせたくないんだよ。俺のことでならなおさら。俺の力が及ばないときは、せめてそばにいたい」
「航はいつもわたしを守ってくれたよ。今日のことは、もう恥ずかしくて。むしろ、航には見られたくなかった」
「なんで?」
「航が格好よすぎるからだよ。わたしも、自分のいいところだけを見せたいもん」
「あのスピーチは、心がこもっていてすごくよかったよ。さみしかったんだろう? 智花ちゃんが自分から離れていったみたいに思えて」
「……うん」
わたしが言いたかったことを代わりに言ってもらい、それだけで心がすっとした。
「そういうふうに思うのは別におかしいことじゃないから」
「航もそうなの? 蒼汰くんが結婚してさみしいって思うの?」
「はあ? 俺は違うから! 気持ち悪いこと言うな!」
かなりムキになって否定するので、思わず笑ってしまった。わたしは「冗談だよ」と首に軽く腕を絡める。キスをせがむと、ゆっくりと重ねられた。
こういうのもいい。自分から求めると、無言のままあたり前のように応えてくれるこの関係が心地いい。
熱くて深いキスは、やめどきがわからない。角度を何度も変えて、さらに夢中になった。
航がストッキング越しにわたしの太ももをなぞっていく。その手がワンピースのなかに入り込んで腰のあたりをまさぐったので、軽く浮かせると、はぎとるようにしてストッキングを脱がされた。
それから航はいったんわたしから離れ身体を起こすと、乱暴に背広を脱ぎ捨て、ネクタイもはずす。わたしはワイシャツのボタンを下からひとつずつはずしていった。
だけど、もどかしくなったのだろう。わたしが三つ目のボタンに手をかけようとしたとき、航はワイシャツのボタンを上から全部自分ではずし、スラックスも一緒にベッドの下に放り投げた。
再び覆いかぶさってくる重みを受けとめると、唇の感触を首のあたりに感じ、くすぐったさに身をよじったら、今度は二の腕に吸いつかれた。
その間も自由になる左手でわたしの脚を撫でている。さらにワンピースの裾をめくりあげ、お腹に手を触れさせてくるので、たまらなくなって息をもらすと、航が顔をあげ小さく笑みを浮かべながら言った。
「ねえ、この服どうやって脱がすの?」
その顔が楽しげで、茶目っけもある。なのにすぐに引きしまって、男の人の顔になるからドキッとした。
起きあがってうなじのところにあるボタンを自分ではずしたあと、ばんざいをしてワンピースとインナーのキャミソールを脱がせてもらう。下着姿をざっと眺められ、恥ずかしさで目をそらしたところで、「なにを今さら」と軽く笑われた。
「裸を見られるのはやっぱり恥ずかしいよ」
いまだに毎回思うことだ。この瞬間はいつもドキドキして、緊張する。
航はそんなわたしをやさしく抱きしめ、わたしもそれに応えるように背中に腕をまわした。
シフォン素材でノースリーブのワンピースだったせいか、わたしの身体はじゃっかん冷えていて、航の体温を熱く感じた。でも胸のふくらみをもまれ、首や鎖骨、耳たぶまで念入りにキスされていくうちに、その熱は航なのか自分のものなのか、わからなくなっていく。
「恥ずかしいって言われてもな」
「えっ?」
「こんなに気持ちよさそうな顔されたら、もっとその顔見たいって思うだろう」
航は慣れたようにブラのホックをはずし、露わになったわたしの胸もとを手のひらで包み込む。そのままベッドに倒され、沈められると、長い時間をかけ全身をくまなく愛してもらい、甘い声が次から次へともれた。
キスの合間の航の息遣いが荒くなっていく。もちろんそれはわたしもだけど、体力もあって経験も豊富な航の余裕のない態度を目の当たりにすると、うれしくなって、もっとそれを見ていたいと思ってしまう。
航の背中にまわしていた腕を腰のほうに移動させ、肩口にキスをする。そこでようやく意をくんでくれた航がニヤリと笑った。
「そんなにほしい?」
「意地悪言わないで」
「聞きたいんだよ、たまにはね」
「やだよ、言わないから」
「そんなこと言っても、俺も言うまでしてやらない」
こんなときに頑固にならないでほしいよ。
でも普段めったに見ることのできない航の気弱なところを見てしまったせいか、今日はわたしのほうが我慢できそうにない。今すぐ……という衝動がさっきからずっと続いている。
「言葉にしなくても見ればわかるでしょう?」
涙目で訴える。本当にもうもたない。
「どうしよっかな。俺はもっとストレートなセリフを期待してたんだけど」
そう言って航がわたしから離れようとするので、背中をぐっと引き寄せた。
「やだ、これ以上は無理だよ。お願い、航。早く……このままだと苦しいの。わたしをここまで追い込んでおきながらじらすなんて、ひどいよ」
「よし合格。マジでこういうのもいいね。美織、すっげーかわいいよ」
そしてようやく航とひとつになる。じらしたわりには航もちょっと焦っていて、急ぐように埋めていく。
「んっ……」
奥まで届いてゆらゆらと動き出すと、そこからはふたりで一緒に溺れていく。激しくて力強いのに、わたしを支配するのはとろけるような甘い快楽。
世界がまるで変わる。日常からかけ離れ、本能の赴くままに淫らに乱れて、いつもとは正反対のもうひとりのわたしになる。
確実に導いてくれるその瞬間は、いつも理性が飛び、我を忘れるほど。今日も身体の奥がどうしようもなく疼いて、もう自分の手に負えないところまできていた。
「航、だめ、もう……」
息を止め、航の背中を強く抱いた。続けて息を乱した航の腰が強くぶつかってくる。
そして訪れた瞬間──。
身体の芯がしびれ、わたしのなかから吐き出された絶頂の声が部屋中に響き渡る。航がわたしに耳もとで小さくうめき声をあげ、わたしの上に倒れ込んだ。そのまま唇にキスされて、力の抜けたわたしの身体を航は力強く抱きしめた。
子どもっぽいところはわたしも同じ。心を許した人だからこそ、見せることができる姿だと思う。
「本当は泣かせたくないんだよ。俺のことでならなおさら。俺の力が及ばないときは、せめてそばにいたい」
「航はいつもわたしを守ってくれたよ。今日のことは、もう恥ずかしくて。むしろ、航には見られたくなかった」
「なんで?」
「航が格好よすぎるからだよ。わたしも、自分のいいところだけを見せたいもん」
「あのスピーチは、心がこもっていてすごくよかったよ。さみしかったんだろう? 智花ちゃんが自分から離れていったみたいに思えて」
「……うん」
わたしが言いたかったことを代わりに言ってもらい、それだけで心がすっとした。
「そういうふうに思うのは別におかしいことじゃないから」
「航もそうなの? 蒼汰くんが結婚してさみしいって思うの?」
「はあ? 俺は違うから! 気持ち悪いこと言うな!」
かなりムキになって否定するので、思わず笑ってしまった。わたしは「冗談だよ」と首に軽く腕を絡める。キスをせがむと、ゆっくりと重ねられた。
こういうのもいい。自分から求めると、無言のままあたり前のように応えてくれるこの関係が心地いい。
熱くて深いキスは、やめどきがわからない。角度を何度も変えて、さらに夢中になった。
航がストッキング越しにわたしの太ももをなぞっていく。その手がワンピースのなかに入り込んで腰のあたりをまさぐったので、軽く浮かせると、はぎとるようにしてストッキングを脱がされた。
それから航はいったんわたしから離れ身体を起こすと、乱暴に背広を脱ぎ捨て、ネクタイもはずす。わたしはワイシャツのボタンを下からひとつずつはずしていった。
だけど、もどかしくなったのだろう。わたしが三つ目のボタンに手をかけようとしたとき、航はワイシャツのボタンを上から全部自分ではずし、スラックスも一緒にベッドの下に放り投げた。
再び覆いかぶさってくる重みを受けとめると、唇の感触を首のあたりに感じ、くすぐったさに身をよじったら、今度は二の腕に吸いつかれた。
その間も自由になる左手でわたしの脚を撫でている。さらにワンピースの裾をめくりあげ、お腹に手を触れさせてくるので、たまらなくなって息をもらすと、航が顔をあげ小さく笑みを浮かべながら言った。
「ねえ、この服どうやって脱がすの?」
その顔が楽しげで、茶目っけもある。なのにすぐに引きしまって、男の人の顔になるからドキッとした。
起きあがってうなじのところにあるボタンを自分ではずしたあと、ばんざいをしてワンピースとインナーのキャミソールを脱がせてもらう。下着姿をざっと眺められ、恥ずかしさで目をそらしたところで、「なにを今さら」と軽く笑われた。
「裸を見られるのはやっぱり恥ずかしいよ」
いまだに毎回思うことだ。この瞬間はいつもドキドキして、緊張する。
航はそんなわたしをやさしく抱きしめ、わたしもそれに応えるように背中に腕をまわした。
シフォン素材でノースリーブのワンピースだったせいか、わたしの身体はじゃっかん冷えていて、航の体温を熱く感じた。でも胸のふくらみをもまれ、首や鎖骨、耳たぶまで念入りにキスされていくうちに、その熱は航なのか自分のものなのか、わからなくなっていく。
「恥ずかしいって言われてもな」
「えっ?」
「こんなに気持ちよさそうな顔されたら、もっとその顔見たいって思うだろう」
航は慣れたようにブラのホックをはずし、露わになったわたしの胸もとを手のひらで包み込む。そのままベッドに倒され、沈められると、長い時間をかけ全身をくまなく愛してもらい、甘い声が次から次へともれた。
キスの合間の航の息遣いが荒くなっていく。もちろんそれはわたしもだけど、体力もあって経験も豊富な航の余裕のない態度を目の当たりにすると、うれしくなって、もっとそれを見ていたいと思ってしまう。
航の背中にまわしていた腕を腰のほうに移動させ、肩口にキスをする。そこでようやく意をくんでくれた航がニヤリと笑った。
「そんなにほしい?」
「意地悪言わないで」
「聞きたいんだよ、たまにはね」
「やだよ、言わないから」
「そんなこと言っても、俺も言うまでしてやらない」
こんなときに頑固にならないでほしいよ。
でも普段めったに見ることのできない航の気弱なところを見てしまったせいか、今日はわたしのほうが我慢できそうにない。今すぐ……という衝動がさっきからずっと続いている。
「言葉にしなくても見ればわかるでしょう?」
涙目で訴える。本当にもうもたない。
「どうしよっかな。俺はもっとストレートなセリフを期待してたんだけど」
そう言って航がわたしから離れようとするので、背中をぐっと引き寄せた。
「やだ、これ以上は無理だよ。お願い、航。早く……このままだと苦しいの。わたしをここまで追い込んでおきながらじらすなんて、ひどいよ」
「よし合格。マジでこういうのもいいね。美織、すっげーかわいいよ」
そしてようやく航とひとつになる。じらしたわりには航もちょっと焦っていて、急ぐように埋めていく。
「んっ……」
奥まで届いてゆらゆらと動き出すと、そこからはふたりで一緒に溺れていく。激しくて力強いのに、わたしを支配するのはとろけるような甘い快楽。
世界がまるで変わる。日常からかけ離れ、本能の赴くままに淫らに乱れて、いつもとは正反対のもうひとりのわたしになる。
確実に導いてくれるその瞬間は、いつも理性が飛び、我を忘れるほど。今日も身体の奥がどうしようもなく疼いて、もう自分の手に負えないところまできていた。
「航、だめ、もう……」
息を止め、航の背中を強く抱いた。続けて息を乱した航の腰が強くぶつかってくる。
そして訪れた瞬間──。
身体の芯がしびれ、わたしのなかから吐き出された絶頂の声が部屋中に響き渡る。航がわたしに耳もとで小さくうめき声をあげ、わたしの上に倒れ込んだ。そのまま唇にキスされて、力の抜けたわたしの身体を航は力強く抱きしめた。
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