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洗濯は、浴室で
しおりを挟む暴走した光は寝て起きてもうっすらと明るくて、制服に着替えて部屋を出るとまだ夜明け前だった。馬車移動でのサイクルがまだ残ってるみたいだな。昨日寝る前に読んだ冊子等によると、起きる時間に鐘が鳴るとあった。けどそれじゃあ朝食を食いっぱぐれると思うので、早め早めは心掛けよう。
食堂に向かうが生徒の姿は見えず、厨房で大人達が食事を作っている忙しない音が聞こえていた。まだ食べれないっぽいので顔でも洗おうと今度は浴室へ向かうと、こっちは湯の雨が降っている。それならと部屋に戻り、昨日まで着てた下着と濡れたタオルを持って再び浴室に向かい、全身と汚れ物を洗った。
部屋に戻り、箱の上で平ら干しにし終えたら、今度こそ朝食を食べに食堂へ。まだ学生は居なかったが、料理の入った箱をカウンターに持って来る人が居たので確認をし、食べて良いとなった。ちなみに今持って来た箱はお弁当で、1人2つまで持ってって良いそうだ。もちろん早い者順であるのだが、迷わず2つゲットした。
外の見える食堂より部屋の方がまだ明るいので、部屋にトレーを持ち込んで食事をする。普通ならダメみたいだけど、部屋は目と鼻の先なので事後報告で許してもらった。部屋割りが決まってからはダメだってさ。
鐘が鳴り、生徒が食堂に密集する頃合いを見て寮を出て学舎へ向かう。カバンには持って来るよう書いてあった弁当2つに紙束と小冊子。他には乾いたタオルとおやつの干し肉。そしてナイフ。僕の学生生活が始まった。
生徒用の玄関を入ると、すぐ左手に購買がある。ここでは学園生活で使う備品や簡単な携行食が売られていると見取り図に書かれていた。携行食は弁当を貰い損ねた者が買うのだろうか。僕は講義で使うためのメモと炭ペン、紙束を保存するファイルを買わなきゃいけないので購買に入り、開店作業中だったおばさんに無理言って揃えてもらった。もっと早く、昨日の内に買いに来いって言われたけど、魔力暴走で医務室に運ばれた人がいたのは知ってたみたいで何となく納得してもらえた。紙束を綴じたメモ、棒炭とペン軸のセット、薄い板で出来たファイルで10,00ウーラ。1食分のお金が飛んでった。
見取り図と日程表を頼りに教室へと向かう。2階に上がって左の部屋らしい。入口の引き戸に付けられたゲル版から中を覗き込むと、机と椅子がたくさん並んでるのが見えて、誰か居ないか探してしまう。早く来過ぎたのもあって、入るのに躊躇ってしまったのだ。
「何が見えるの?」
「うっ、誰も居なくて入るのに緊張してたんだよ」
後ろから急に声がしたもんだからビクッとしてしまった。慌てて振り向くと頭1つ大きい女性が立っていて、僕が居るのを気にも止めず顔をゲル版に近付ける。顔に迫る大きなモノに、僕はドアに張り付くくらいに身を引いた。
「お、お胸が当たりそうだよ…」
「女同士、気にするでも無いでしょ」
「僕男だからっ」
「…男にモテそうね」
考えて発した言葉がそれか。
「僕より君の方がモテるでしょ」
「はは、無い無い。さ、中に入りましょ」
頭の上から腕が伸び、ガラガラと引き戸が開けられると僕毎体で押し入った。柔らかい!
「うぷ。押し込まないでよ」
「満更でも無いクセに~。アンタ見ない顔だけど、この教室で合ってたの?」
「多分」
紙束を見てもらい、ココで合ってるのが確認出来た。
「僕、どこ座れば良いんだろ?」
「席は決まってないから好きなトコ座んなよ。アタシの膝の上でも良いわよ~?」
煽り言葉を無視して最後尾の真ん中に座ると、女生徒はその右隣に着いた。
「アタシロシェル、アンタは?」
「…ユカタ。ロシェルはいつもこんなに早いの?」
「夜明け前から鍛錬してっからね。アンタは違うの?」
「僕は昨日まで馬車に乗って移動してたから、その名残が残ってるんだよ」
「なら今日から補習漬けかい。大変だね」
「今日?」
「今日は休日だよ。補習に来たんだろ?」
何と、今日は休日だったようだ。
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