【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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寝るのも、訓練

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 大きく迂回して他の生徒達の様子を伺いながら移動して、下り勾配側から陣地に戻ると、陣地の中に枝葉の壁が出来ていた。外壁から1人分程の場所にある枝葉の塊はペニー達がみんなと協力して作った寝床らしい。

「戻ったよー」

「…ユカタ君ね」「ふぅ~」

 枝葉の塊からレイナが姿を現すと、他の面々は息を漏らす。

「侵入者でも居た?」

「ユカタ君が最初の侵入者です。罠の作り直しですね」

「罠って、鳴子の事?あれならまあ、あれで良いんじゃない?」

 貴重な糸を使った察知用の罠は、カシーが作った物だった。泥で汚した枝を跨ごうとしたした先に、落ち葉で隠した糸が仕掛けられていたのだ。

「ユカタ君には、見切られちゃった」

「まあね」

 残念そうに眉を八の字にするカシーだが、枯れ枝じゃなかったら僕でも引っ掛かってたと思う。枯れ枝は薪にするだろうし余り物の生木を使ったのだと思われる。

「鳴子にも感心したけど、良いの作ったね。茂みにしか見えないよ」

「アタシいっぱい切ったよ」

「よしよし」

「私はパンを作ったわ」「お手伝いしました」「今、焼いてます…」

「夕飯が楽しみだよ」

 屋根の無い茂みの壁は天気が崩れなければ何とかなる感じで各自の荷物が安置され、中央に作られた焚き火の周りには、小さく丸められたパン生地が枝に刺されて焼かれていた。僕はみんなに採集品を出す。トイレ用の葉っぱに、スープの具にする野草。コップ代わりに使える糖の実も人数分拾って来た。

「なにこれ」

「パカッと割ると飲み物が注げるよ」

「それ糖の実よね」「敷地内にも、生えてたんだ」

「糖の実と言うと、砂糖の原料か」「甘いのでしょうね」

「割ってみて、い?」

「中身がちょっと苦いかも知れないけどね」

 甘い物と聞いて、静かな中活気満ちる女性達。ロシェルは僕の剣でみんなの分までパカパカ割ると、各自配られた物の中身を確認する。赤くなってるのは2つだった。

「レイナ様はこちらを。私がそちらをいただきます」

「2つあるのだから分けましょ。苦い方も興味あるわ」

「レイナちゃん、私にもその半分ちょうだい」

「ん…じゃあ、アタシも」

 1人は流れに乗る羽目になったが、4人は仲良く苦いのを分け合った。僕は苦いの確定か。

 パン生地入れの役目を終えた鍋に休みは無い。生地の欠片が残る鍋に水を入れ、お玉で擦り落としたら干し野菜、干し肉を入れて火に掛ける。そろそろ夕方。パンが焼け、スープが煮えるまでガリガリと糖の実を齧りながら過ごした。そして夕飯は糖の実の殻をお椀にしたスープにカリカリのミニパンとなった。

 明日の分はジュンのマジックバッグに納められ、盗み食いの心配は無い。無いのだが…。

「僕、どこで寝るのさ」

「「「あ…」」」

 僕、男なんだけど。みんな気にせず作ってしまったようで2人を不寝番にしてもくっ付いて寝なきゃ焚き火に突っ込む状態だ。

「アタシが抱いて寝る」

「そうか…」

「わ、私も頑張って抱き着き…ます…」

「やっぱり木の上に寝床作れば良かったかな」

「頑張りますっ」

 頑張らないで欲しい。不寝番はロシェルとジュン、レイナとマキ、ペニーとカシー、僕が2時間ずつ、僕の後に女子全員で3時間やる事になった。

 レイナとマキに挟まれて、広げたシートの上で寝る。左右を押し出す訳にも行かず、僕は細い棒のようにピンとして息を潜めた。

「レイナ様、ユカタ君が緊張しております」

「子守唄でも歌おうかしら」

「やめてよ…」

 お腹ぽんぽんされた。エプロンの上からトントンと小さな打音が聞こえて来るが、子供じゃあるまいし、そんな事で寝入るはず無いだろうに…。

「ユカタ、起きて」「見張りの時間よ?」

「ん…ぐ、動け、ない…」

 気付いたら眠ってて、ロシェルに片腕と脚を絡められていた。もう片方の腕はジュンに枕にされている。どうやって起き上がれば良いんだ。




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