【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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鳥の、足

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 翌日。朝食を食べて集まったのは魔法鍛錬場。僕は初めて入る場所で、鍛錬場の奥にある大きな建物だ。僕やロシェルみたいに魔法を使えない、使わない者は鍛錬場で体だけを鍛えるが、レイナやジュンみたいに魔法も扱う者は2日に1度はコッチで魔法の鍛練をしている。座学である戦闘技術の授業も半分は魔法技術の授業で教室を分けて受けている。昨日のドロップを分けるだけでは暇なので、以前言ってた魔法を見せてもらう事になったのだ。

「屋根無いんだね」

「どんな天候でも撃てるようにって事みたいよ」

「暴走したら屋根が落ちて来てしまいます」

 僕の言葉にレイナとジュンが返す。光の魔法が暴走したのを思い出す。アレが火魔法や土魔法だったら命が危うかっただろうな。

「待ちましてよ?」

 見えない所から声がする。エリザベス様がどこかから声を飛ばしているようだ。

「こっちよ。早く上がって来なさい」

 今度は取り巻きの声がして、振り向くと入り口の上、横側全体が観覧席になっていて、エリザベス様と取り巻き3人は先着して待っていた。どうやら風魔法ではなかったようだ。出入口の左右に階段があり、レイナとジュンの後ろに並び観覧席へと上った。

「おはようエリザベス様。3人もおはよう」

「ご機嫌よう。昨日は苦労をかけたわ。疲れは癒えて?」

「いっぱい食べて寝たから平気だよ」

「何よりね」

 観覧席と言っても椅子が並んでいる訳ではなく、所々にテーブルがある。これは毎年数人入学して来る貴族向けの配慮らしく、平民は座っちゃいけないみたいで椅子も4脚しか無い。エリザベス様は座ってるのに取り巻きが立ってるのだからそうに違いない。座る程疲れてもないので早速報酬を分けよう。

 ブフリムの袋には、基本小銭が入ってる。たまにアクセサリーやゴミ、ブフリムにとっては価値のある物が入ってて、人の眉間に皺を寄せる事になる。昨日は気にせず袋に突っ込んだので、何度か眉を寄せる事になるだろう。テーブルに皿を乗せ、その上にキレイな袋に入ったお宝?を流し込む。チャリチャリジャラジャラ小銭の音の中に、ゴロッと異音が混じってる。鳥の足だな。

「アイツ等何で袋にそんなの入れてんだろ?」

「食べるの、かな?」「食べられるの?」「どうでしょうか…。試したくもありませんね」

 鳥の足の他にも木の枝やら小石、砕けた枯葉なんかが入っていて、コレは袋に戻して後で捨てる。

「エリザベス様、浄化します」

「そうなさい」

 取り巻きの1人が呪文を唱えて魔法を放つと、皿が薄緑に光った。浄化の魔法?洗うのとは違うのか?とにかく初めて見る魔法だ。

「キレイになった。凄いな」

「玄関前のアレと同じよ」

 玄関前の石版にはこの魔法が付与されてると言う。それ使えるだけで食うに困らないんじゃないか?さっさとしろと急かされて、キレイになった皿の中身を検める。鉄貨に銅貨がほとんどで、小さな魔石が4つ入ってた。

「…どれも、ウォリスの魔石だね。1つ1,00ウーラ、です…」

 商家のジュンの付けた値はギルドの買取価格だな。ギルドで聞いた事がある。

「魔石を確保したい人は居る?」

「なら私が買い取るわ。魔道具の材料を集めてるのよ」

 レイナの言葉に取り巻きの1人が名乗りを上げた。皆反対しないので彼女に魔石が渡ると、銅貨を4枚報酬の小山に合わせた。

「鉄貨44枚に銅貨81枚。9人で分けたらいくら?」

「え、アタシ!?」

 銅貨9枚まで勘定してロシェルは勘定をリタイアした。そして1枚ずつ配り出す。

「あ…、1枚足りない…」

「そう言う事もあるわ。ドロップだしね」

 各4枚配り、足りなかったのはレイナ。マキはウズウズしているが、エリザベス様の居る前でゴタゴタを見せたくないのだろう。

「ロシェル、そんな時はどうする?」

「う…。みんなでなんか買って食べる!」

「よしよしえらいぞー」

 端数で買える物なんて無いのだが、これが1番ゴタゴタしない方法だ。補習の時に出た話を覚えていたようだな。






 
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