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オドノヒューの、町
しおりを挟む「おはようございます。馬車に戻ってお着替えなさいますか?」
「んん、おはようございます。着替えは宿に入ってからでも良いかな」
起きているのに柔らかい物にくっ付いては居られない。柔らかい物から離れると、槍を天井に納めた。
「お楽しみだったねー」
覗き窓から恨みがましい声と視線が飛んで来る。早起きのロシェルだ。お楽しみも何も、僕は寝てただけだ。
「みんな起きてる?畑が見えてるから町も近いと思うよ」
「おはようございます。お楽しみだったのですか?」
「ユカタ君、おはよう…。楽しかった?」
「ユカタ君、楽しかったのかしら?」
更にロシェルを押し退けて、3人衆が顔を出す。面白がってるなこれは。
「みんなおはよう。寝て起きたら朝だったよ」
「安眠出来たのなら何より。馬車にお戻りなさいな」「お嬢様、お戻り下さい」
エリザベス様までお顔を見せる。朝から良い笑顔だ。
「ふふ、一度停車致します。ここから先は畑に入りますので停められません。少し息を入れましょう」
馬車が停ると女性達が降りて来る。メイドさん達が先に降り、ロシェルを先頭にして最後にエリザベス様だ。僕も馭者席から降りて体を伸ばす。
「何で乗り込まなかったのさ」
伸ばした所を背後から抱き上げられ、逃げられなくなった。背中が柔らかい。
「心配したのよ?」「しました」「しました…」
「乗り込む時間が惜しかったのと、馭者さんに何かあった時手綱を握れるようにだよ」
正面からは3人衆が詰め寄るが、僕は僕の仕事をしたと思ってるので退けない。
「心配してくれてありがとね」
それでもお礼は欠かさない。
「軽食を用意しましたのでよろしければ」
「食ーべるー」
ロシェルは甘えた声を出すと、僕を捕獲したままメイドさんの用意した軽食を摘みに向かった。離せよ。
小休憩から再出発。畑の間を抜けて町の壁が見えて来た。アレがオドノヒューの町だそうな。アッゼニとスミヨン市を繋ぐ経由地で、双方の輸入品がこの町に集まるため、倉庫や駐車場が多く、壁の外には馬の繋養牧場があって木製の壁が町の石壁の外に作られていた。馬を飼養するから牧草畑も広い。
「道が広いね。アッゼニの倍はあるよ」
「馬車が行き交う町ですので。歩きで横切る時はご注意下さい」
「別邸までもう少しですが、先に宿に向かいますね」
「アタシ降りなきゃだしね」
「僕も着替えなきゃ」
ロシェルはお茶会欠席なので、宿に入ってお留守番だ。僕もまだ少し濡れてるので着替えのために降りる。馬車は先に別邸に向かうので、メイドさんが1人降りて僕に付いてくれる事になった。
宿屋の前で降車して、着いた宿は何と言うか高そうな感じ。店員に舐められないようにしないとエリザベス様の気を悪くさせる気がする。宿の軒に立つ2人守衛は馬車の家紋を見て察し、すぐにドアを開けた。コレ僕とロシェルだけだったら絶対開けてくれないだろうな。
メイドさんを先頭に中に入る。入ってすぐ横にカウンターがあり、男女の職員がメイドさんに頭を下げる。
「いらっしゃいませ。大鳥の宿へようこそお越しくださいました。私副支配人のジョアンと申します。お客様のご家名を頂戴してもよろしいでしょうか」
メイドさんがエリザベス様の家名と予約してある旨を伝えると、既に横に待機していた女性従業員が部屋まで案内してくれる運びとなる。
「ん?僕の部屋は無いの?」
「大部屋一部屋と聞き及んでおりますが、個室でよろしければ今から手配致します」
「問題ありません。着替えてすぐに出ますので」
僕の願いは却下された。着替えるのにロシェルもメイドさんも居るんだよ?僕全部脱ぎたいのに。
「お気になさらないでください。それともお手伝いしましょうか?」
「見て減るモンじゃないじゃん」
「お湯も持って来て貰いますので、体をお清めになって下さいね」
凄い恥ずかしいんだけど!?
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