【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

文字の大きさ
159 / 385

村に伝わる、防除法

しおりを挟む


 マッチョ兄弟の考えをまとめて食堂で夕食。ピリピリしたり暗くなったり、皆次にここへ来た時どう処分が下されるのか不安そうな面持ちで、普段より幾分静かに飯を食う。男共が情けない顔を晒しているのも仕方の無い事。食堂に着いたマッチョに雑魚がヘラヘラしながら寄って来たからだ。馬鹿な提案を始める馬鹿に2人は顔真っ赤。馬鹿は真っ青となり、それを見ていた外野も赤マッチョの言葉を聞き血の気が引いて、今に至ると言う訳だ。

「ったく、何がハーレムだ」

「兄貴よ、そんな事よりとっとと食っちまおうぜ」

 2人が憤る気持ちも分かる。雑魚がにやけ顔で放った提案は、元々2人が思い付いてロシェルにダメ出しされた案だったからだ。雑魚でも思い付く発想に、2人は恥ずかしくなってしまったのだろう。

「兄弟よお。お前ぇさっきからずっと黙ってっけどよ、お前ならどうすんよ」

 齧り付いた肉を飲み、ミルコが僕に話を振る。学舎の裏で話した時は、ロシェルの意見に乗っただけだったのを思い出したみたいだ。

「…んぐ。さっきの様子じゃ、納得されないと思うけど」

 僕は自論を語る。朝、講師のマッチョに言われてからずっと考えていた案なのだが、冒険者の行動かと問われると疑問が残るので口には出さなかったのだ。

「そりゃあ、納得されんわな」「レイド以前の問題だぜ」

 僕の案は、ダンジョンを焼くためのレイド組みをする事。魔法が使えるパーティーをレイドにし、その他のパーティーは燃料と松明を持って、列を成して放火して…とそんな感じ。残念ながら却下された。

「地上部の2層だけでも小さな町くらいあるんだぜ?燃やし切れるモンかよ」

「その前にだ。ダンジョンを燃やしたりしたらその日暮らしのオッサン共に目ぇ付けられっぜ?」

「2人は山焼きって知らない?」

「食いモンか?」「流れ的に違うんだろうな」

 山は焼いても食えないぞ。2人に山焼きについて教えてやった。

「山狩りなんてのも初めて聞いたが」

山狩りソイツで見付からねぇ悪党を炙り出すのが山焼きって訳か」

 実際に山火事を起こす必要は無い。煙で炙って近付けさせなければ良いのだ。地走りに限らず、狩りを生業にする者は煙をまとうのを嫌う。その習性を利用して、こちらに近付けさせないようにすれば安全を確保する事が出来るのだ。だがそれは魔物を遠ざける事にも繋がる。ダンジョンでどうかは知らないが、村ではブフリムの追い出しに山狩りは行われていた。

「3層に潜ってくれれば御の字って感じ」

「作戦ありきで構成を考えた訳だな」

「その考えは無かったぜ。俺等どう組むかって所ばっか見てたからな」

 生徒が死んだとは言え、敵さんがどれ程の者かわかってないのなら仕方の無い事だ。もちろん僕にだっていかほどの者かなんて分からない。走る馬車に弩の罠をぶち当てて、騎士の捜索から逃れられる程度の実力…としか分からないのだ。

 食後、湯の雨を浴びて再び食堂へ集まる。しばらく待ったが、その数は食堂の席数を半分超えた程度。キレたマッチョがお前等とは絶対レイドなんぞ組まんっ、なんて言うからだ。

「はぁ。見捨てちまおうぜ」

 クリスは優しいな。

「仕方ね。初めっか」

 ミルコも優しい男だ。僕なら待たない。集まった男達に2人の説明会が始まる。自分達の考えを述べ終えて、皆から出る質問に頑張って頭を捻っている2人は本当に良い奴等だ。男達に慕われているだけの事はある。

 今回の話し合いはあくまで女子との話し合いを経て決まる話だが、一枚岩になれずとも枚数を減らしておくに越した事は無い。そして集まりに来なかった者は、剥がれた岩の一欠片となった。要するに、文句言っても数に入ってないからお好きにどうぞ、と言うヤツだ。

「明日、女達とナシ付けて来っからよ」

 はてさてどうなる事やら…。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です 再投稿に当たり、加筆修正しています

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...