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村に伝わる、防除法
しおりを挟むマッチョ兄弟の考えをまとめて食堂で夕食。ピリピリしたり暗くなったり、皆次にここへ来た時どう処分が下されるのか不安そうな面持ちで、普段より幾分静かに飯を食う。男共が情けない顔を晒しているのも仕方の無い事。食堂に着いたマッチョに雑魚がヘラヘラしながら寄って来たからだ。馬鹿な提案を始める馬鹿に2人は顔真っ赤。馬鹿は真っ青となり、それを見ていた外野も赤マッチョの言葉を聞き血の気が引いて、今に至ると言う訳だ。
「ったく、何がハーレムだ」
「兄貴よ、そんな事よりとっとと食っちまおうぜ」
2人が憤る気持ちも分かる。雑魚がにやけ顔で放った提案は、元々2人が思い付いてロシェルにダメ出しされた案だったからだ。雑魚でも思い付く発想に、2人は恥ずかしくなってしまったのだろう。
「兄弟よお。お前ぇさっきからずっと黙ってっけどよ、お前ならどうすんよ」
齧り付いた肉を飲み、ミルコが僕に話を振る。学舎の裏で話した時は、ロシェルの意見に乗っただけだったのを思い出したみたいだ。
「…んぐ。さっきの様子じゃ、納得されないと思うけど」
僕は自論を語る。朝、講師のマッチョに言われてからずっと考えていた案なのだが、冒険者の行動かと問われると疑問が残るので口には出さなかったのだ。
「そりゃあ、納得されんわな」「レイド以前の問題だぜ」
僕の案は、ダンジョンを焼くためのレイド組みをする事。魔法が使えるパーティーをレイドにし、その他のパーティーは燃料と松明を持って、列を成して放火して…とそんな感じ。残念ながら却下された。
「地上部の2層だけでも小さな町くらいあるんだぜ?燃やし切れるモンかよ」
「その前にだ。ダンジョンを燃やしたりしたらその日暮らしのオッサン共に目ぇ付けられっぜ?」
「2人は山焼きって知らない?」
「食いモンか?」「流れ的に違うんだろうな」
山は焼いても食えないぞ。2人に山焼きについて教えてやった。
「山狩りなんてのも初めて聞いたが」
「山狩りで見付からねぇ悪党を炙り出すのが山焼きって訳か」
実際に山火事を起こす必要は無い。煙で炙って近付けさせなければ良いのだ。地走りに限らず、狩りを生業にする者は煙をまとうのを嫌う。その習性を利用して、こちらに近付けさせないようにすれば安全を確保する事が出来るのだ。だがそれは魔物を遠ざける事にも繋がる。ダンジョンでどうかは知らないが、村ではブフリムの追い出しに山狩りは行われていた。
「3層に潜ってくれれば御の字って感じ」
「作戦ありきで構成を考えた訳だな」
「その考えは無かったぜ。俺等どう組むかって所ばっか見てたからな」
生徒が死んだとは言え、敵さんがどれ程の者かわかってないのなら仕方の無い事だ。もちろん僕にだっていかほどの者かなんて分からない。走る馬車に弩の罠をぶち当てて、騎士の捜索から逃れられる程度の実力…としか分からないのだ。
食後、湯の雨を浴びて再び食堂へ集まる。しばらく待ったが、その数は食堂の席数を半分超えた程度。キレたマッチョがお前等とは絶対レイドなんぞ組まんっ、なんて言うからだ。
「はぁ。見捨てちまおうぜ」
クリスは優しいな。
「仕方ね。初めっか」
ミルコも優しい男だ。僕なら待たない。集まった男達に2人の説明会が始まる。自分達の考えを述べ終えて、皆から出る質問に頑張って頭を捻っている2人は本当に良い奴等だ。男達に慕われているだけの事はある。
今回の話し合いはあくまで女子との話し合いを経て決まる話だが、一枚岩になれずとも枚数を減らしておくに越した事は無い。そして集まりに来なかった者は、剥がれた岩の一欠片となった。要するに、文句言っても数に入ってないからお好きにどうぞ、と言うヤツだ。
「明日、女達とナシ付けて来っからよ」
はてさてどうなる事やら…。
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