173 / 385
いざ、実戦
しおりを挟む「ブフリムの魔石なんてココでしか取らねえよな」「だな、臭ぇし。鉄クズもあったぜ」
エヴィナが見付けた鉄クズは、ブフリムの武器であるナイフの事だ。外の奴等のとは違って臭くないのが特徴で、ちゃんと研げば使用に耐える、底辺冒険者必携の品でもある。
「敵がいるって事は、今日は手付かずなのかな?」
「皆下へ向かっているのかもね。エリザベス様、私達はいかがしましょうか」
レイナに問われたエリザベス様は、少し考える素振りを見せて、指示を出す。
「私達も下に向かいましょう。ここよりも道幅が広いと習いましたし。よろしくて?」
僕を見てどうしたいのか。エリザベス様が先を行きたいって事は、敵の数が少ないのだろう。もしくは他のレイドと付かず離れずの位置を保ちたいのか。僕は目で合図した。
敵の出ない道を歩き、学生と冒険者を飲み込んで行く階段に辿り着く。流れに乗って階段を降りるとまた広い空間に出た。降りた段数と天井の高さが釣り合わない。鳥が飛べる程の高さがある天井は、地下に潜む飛行型の魔物が屯するための空間なのだとか。数年に1度起こる厄災では、この空間が魔物で一杯になると習ったが、今は学生の休憩地として使われている。
「お、ミルコさんっ」「クリスさんも今からですか!?」
「お前等もう上がりか?」「ちゃんと俺等の分残してあんだろうな?」
残すも何も、大して殺ってないそうな。タダ働きだし、本職の邪魔も出来ないとあれば学生のやる気なんてこんなモノだ。チョロっと魔物を倒したら魔石を拾ってココで休憩。昼飯食ったらいくつかのレイドと一緒に帰るみたい。正しい判断だ。
「すまねえ!釣れ過ぎちまった!!」
いざ行かんと通路に入ろうとした所に横槍が入る。他の通路から出て来た学生連中が敵を引き連れて来ちゃったみたい。エリザベス様は行きますわよとそちらを指示し、前衛全員駆け出した。
「元デブは左右を閉めて。マッチョは中央。その他は盾から零れたのを足止め!魔法来るから射線に注意で」
「「「「おうっ」」」」「おうよっ」「おーう」
敵の数が分からない以上、広い通路から散り散りになられては困るので、密集させる指示を出す。この後はレイナ辺りが指示してくれるだろう。休んでた学生達もその他に加わり敵を待つ。盾の後ろに槍持ちが構え、中々見栄えがする陣取りだ。
「たっ!助かるっ!?ミルコさんっアザー!!」
「クリッさんッ敵は10以上っス!」
「手前ぇの尻は手前ぇで拭け!」
「さっさと戦列に入りやがれ!」
敵は10以上と聞いてビビる奴は、いる。だがこちらの方が数も戦力も圧倒的に上だ。左右4本の槍に出口を狭められ、バラバラな2列で飛び出して来た敵をマッチョな大剣が足止めする。はみ出る者にも刃物が浴びせられ、後続の足が止まり完全に一塊にする事が出来た。
「火魔法放ちますっ。防御固め!」
マキか!レイナが撃つのか!?
「前衛、腰落とせーっ!」
マッチョが左右に退くと同時に僕も声を上げる。2人の間に放たれた火球が密集した敵に向かって一直線に飛んで行き、ぶつかると同時に風が渦を巻いた。エリザベス様の魔法だろう。離れた相手に効く魔法を練習してたからな。
渦巻く風に火球は爆炎と化し、高い天井一杯に火柱が上がる。装備してない手と頭が熱い。が、敵はそれ所じゃないだろう。動く事も出来ない程の苦痛を味わい、倒れた地面に吸収されていた。
「被害知らせ!」
皆口々に無いと言う。下手な指示にならなくてホッとした。男共はマッチョの所に寄って行くので、僕は女子の方へ行こう。
「お疲れ~」「ご苦労さん」
「お疲れ様。相変わらず凄い魔法だね」
「あのくらいは居ないと回数が勿体ないものね。それにエリザベス様の魔法も素晴らしい物でした」
「鍛錬の結果ね。融合魔法より威力は落ちるのだけど、その分魔力は抑えられるのよ」
アレであの威力か。とんでもないな。
20
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です
再投稿に当たり、加筆修正しています
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -
花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。
魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。
十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。
俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。
モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる