【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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仕事の、対価

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「売り物よね?」

「売り物なのは家で作ってるヤツよ。ちゃんと外で掘って来たんだから」「うんうん」

 買取り嬢が困り顔なのも当然だな。売り物作ってる家の子が外で育てた物だから。それくらいご立派様なトロミネが30本。とは言え盗品と疑うのは普通だろうか?

「どこで採れたか、どうやって育てたかの説明を求めます」

 周りに商売敵がいる中でソレは無いな。疑い眼の買取り嬢に、ペニーも呆れ顔になって息を吐いた。

「それ家の農場とケンカするって事だけど。問題よ?」

「それでは買取り出来ません。ご苦労様でした」

「はぁ。初依頼は失敗ね」「売り先はあるし、大丈夫よ」

「僕のまで失敗かぁ」

 そもそも2人はあまりギルドには卸したくないのかも知れない。ランクを上げる必要が無いし、確実にボられるから。

「ユカタ、聞き捨てならないわね。それに他の子はどうしたの?」

「あ、ルイ姐さん」

 依頼の失敗と聞いてルイ姐さんが寄って来る。あまり歩いてる所を見た事ないから新鮮だな。ルイ姐さんは僕達を見て、買取り嬢を見る。見詰められた買取り嬢は固まってしまったのか、目を逸らす事しか出来ないでいた。

「説明なさい」

「えと、この子達が、うっ、売り物の素材を売りに来たからっ」

「だったら買い取れば良いじゃない。何か問題でも?」

 店売り素材を持ち込む者は少なからず居る。ギルドとしては、だからどうしたと言うスタンスだ。買い叩くから損はしないし、冒険者が身銭を切って貢献度を上げるってだけの話だから。なので採集依頼で失敗するなんて事は、余程程度が悪いとか数採れてないとか違うの混ざってたとかでなければありえない。情報を流さなかっただけで買取不可等あってはならないのだ。ルイ姐さんはそんな事を聞かせると、買取り嬢をカウンターから追い出した。

「さ、こっちに。私が処理させてもらうわ」

 とは言えルイ姐さんの席は列がある。並びたくない僕に気を使ってくれたのか、ルイ姐さんの席のさらに奥、ドアのある部屋に招いてくれた。

「ここ、尋問室…よね?」

「調書を取る部屋よ。ケンカの仲裁に使う事が多いけれど」

 大きなカゴと秤を持って来たルイ姐さんは、もう机の上に秤とカゴを1つ、残りのカゴを机の横に置いて買取処理をしてくれる。最初は僕で、トロミネ全部を机に並べた。

「本当に見事な物ね。ユカタがコレを?」

「こっちの2人だよ」

「あはい。私の家薬草農家なの。この辺の街にも卸してるからこんな目に遭っちゃったのかも」

 ペニーの家は有名みたいで、親の名を出すとルイ姐さんでも分かるようだった。

「なるほどね。私も見た事はあるけれど、買った事はなかったわ」

「ルイ姐さんも毒消し食べたりするの?」

「…そうね。ギルドなんかで働いてると、毒が溜まるのよ」

 忙しそうだもんな。お腹痛くなったりするんだろう。もっと小さい、今日僕が掘ったくらいの大きさのトロミネならたまに買ってるんだって。多少日持ちするし、薬を買うよりは安いから、街でも食べて治す人が多いのだろう。そう考えると、コッチの大トロミネは業務用なのかも知れないな。

「アッゼニゲシも採って来たよ」

「トロミネの後で見せてもらうわ」

 まずはトロミネ。1つずつ重さを計って足し算し、単価を掛けて価格が出る。ペニーとカシーで12,85,20U。僕は6,20,10Uとなった。疑われた分儲けたぜ。

 アッゼニゲシは1個10,00U。37個で3,70,00U也。うまうま。お金はギルド証に振り込んでもらった。

「掘る手間を考えるとそっちの方がお得よね」

「育てる手間はあるかもだけど、大金稼ぐならそっちでしょ」

「どちらも出来ない冒険者ばっかりよ。あまり外で自慢話しない方が良いわね。2人は早く、信じられる護衛を見付けなさい」

 これだけ金になると知ってしまえば護衛が敵になる未来もある、か。





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