【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

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モテる、男

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「ユカタ、節操を持ちなさい」「私もしたいのですよ?」

「ハーレムしてんなぁ」「破廉恥でしてよ?」

「その内刺されるわね」

 誰が刺すのさ?湯上り女子が席に着き、ジュンとマキが注文をまとめてウェイトレスに告げる。取り敢えずエールをピッチャーで4つとか聞こえたぞ?すっかり飲兵衛になっちゃったな。

 僕の居る席にはロシェルにエヴィナとセーナ。もう1つの席にはエリザベス様と3人衆が着いて、酒が届くと乾杯が始まる。

「ユカタさん、また飲まねーの?」

「飲まなくても寝れそうだし。飲んだらこの場で寝ちゃいそうだもん」

「ひひっ、ってこたぁオレ等の寝込みを襲う気だな?」

「寝ててくれ。もしかしたら夜這いに行くから」

「そんくらいの甲斐性なしなら良かったのにね~」

「良い事じゃない。腹ボテで遠征なんて、したくないでしょ?」

 とは言え明日からすぐに依頼を請けて…とはならない。今夜みたいな宿に何泊もするのはお金が勿体ないからだ。それにセーナの店舗兼住宅を掃除すれば何人かはそこで寝られるだろうし、少なくともセーナの分の宿代は浮く。荷物を置いておけるのもデカい。明日は朝からセーナの家の掃除をしたいと提案した。

「そうね。宿代もバカにならないものね。あンた達の寝場所くらいなら用意してあげるわ。屋根裏だけどね」

「寝られりゃどこでも構わないぜ」

「屋根裏なんて、入る事を禁じられていたわ。なんだか楽しみね」

 楽しんでくれるなら何よりだ。ちなみに僕は屋根裏に部屋があると言う概念がムルザバに来るまでなかった。壁の上には梁があり、さらに上には屋根だろう?梁の上に板を張ってそこに住むって事を知ったのはムルザバで宿を取った時が初めてだったのだ。

 酔っ払いがちゃんと寝てくれたおかげで僕もぐっすり寝る事が出来た。朝になり、3階の4人部屋に起こしに行く。

トトントトン、トトントトン

「起きてー」

「起きてるー」「ま、まだ開けないでっ」

「開けないよー」

 中に入る必要は無いので隣の部屋へ。

トトントトン、トトントトン

「起きてー」

「オレぁ起きてっけど、2人が寝剥がしてんぜ」

 こっちはお寝坊さんがいるみたいだ。しばらくして、

「お、起きますわっ」

 と1人起きたみたい。食堂で待つと伝えて下に降りた。

「ご機嫌よう。昨夜は良く眠れて?」

「ご機嫌よう。良く寝られたよ」

「ユカタが来なくて寂しかった~」

「夜更かしさせたくなかったんだよ」

「あンた女ったらしの素質あるわよね」

 ある訳がない。長い事パーティーを組んでて慣れただけだ。煮込み肉の解し身とソーサーにスープでお腹を満たし、宿を引き払ってセーナの店へ直行する。裏口に回ると、こっちはまだ朝の仕事の最中で、井戸の周りでは洗い物する主婦達がお喋りしながら色々してた。

「あら?セーナじゃないか」「帰ったんだねっ」

「昨日着いたの。今日からこの子達が住み込むから、よろしくしてあげて」

「あら、良い男」

「オレ女だぜ?」

「最高じゃない」「後でお話しましょ?ね?」

 エヴィナは主婦にモテるんだな。家に入るセーナに続く。

「クモの巣張ってるわ…」

「掃除をするなら上からが良さそうですね」

「お掃除道具と、お水と…後は…」

「まずは部屋を見てもらうわ。そこから掃除の手順を考えて行きましょ」

 全員で3階へ上がる。僕も使ってた作業部屋だ。だがここは屋根裏部屋ではない。セーナがアレよ、と指差す先には天井から垂れ下がってる綱があり、引っ張ると階段が降りて来る仕組みになっていた。去年は気付かなかったけど、上にも部屋があったんだな。

「こんなの気付かなかったよ」

「去年は布を掛けてあったもの」

 おばあちゃんを養老院に預ける時、使う物を持ち出すのに上がったんだって。1人ずつ上がれと言われてロシェルとエヴィナが上がってく。僕は最後になっちゃった。





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