【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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昼寝が、出来ない

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「ありがとうお兄ちゃん達」

「オレ女だぜ」

「ありがとうお姉ちゃん達」

 僕男…とは続けない。食事と休憩が終わって再び出発。娘ちゃんはエヴィナに懐いてしまった。きっと街で次発を待つ父や兄に姿を重ねているのだろう。女だと言われてもまだくっ付いてるけど。

 席が変わり、僕は出入口前。正面にはマキがいて、その隣はエリザベス様。僕の隣にはロシェルだ。

「本当にありがとうございました」

「困った時はお互い様ですよ」

 馭者側では母親さんとアルアインさんが喋ってる。食事を通して打ち解けて来たみたい。飯を食って重くなった瞼を落とし、耳で辺りを警戒する。お尻に掛かる衝撃がなければ寝てしまう所だ。

 耳から入って来る情報だと、母娘はオドノヒューにある家に帰る途中であったそうな。家族4人、総出で旅が出来るのは、それなりに稼ぎの良い家なのだろう。乾物の問屋である事を、アルアインさんは聞き出していた。

「街に着いたら、お礼は必ずさせていただきます」

「お礼ですって。ユカタ、どうする?」

「ユカタ寝てる~」「起きてるよ」

 全く失礼しちゃうよ。しかしお礼か。僕はどっちの立場で答えるべきだろう?

「貴方様のご意志のままに」

「それなら…問屋買いでもさせてもらおうか。ジュン、不足分買ってあげて」

「分かった。私コダマ商会の娘のジュンです」

「まあ。大棚様にはいつもお世話に」

 乾物問屋なだけあって、ジュンの実家とは懇意にしてるそうだ。昨日まで王都に居たのもコダマ商会が個人的に問屋を集めた会合があったからだと言う。きな臭いぜ。

 夜はジュンの壁のおかげで夜警が楽だ。ジュンの消耗があるので戦闘も行わず、静かにとは行かないが夜を過ごせた。

「また来たよ。雑魚だけど」

「少し頻度が高いかしら。左右に2匹ずつ。合流したら後ろから来ますわね」

 昨日もそうだが、昼間の会敵が多い気がする。モンスターも野獣も基本は夜行性だ。夜襲が来るのは理解出来る。だが昼間の街道にまで出て来る事はそうそう無いハズなんだ。森で何かが起こっているのか?

「見えた。馭者さんに伝えて。ブフリムだから速度そのまま」「あいよ。聞こえたろ?」

 聞こえてても言うんだよっ。今日の隣はエリザベス様。柔らかい物を押し当てて、外に向かって腕を伸ばした。

「支えて下さいましね」

「向かい合わせになりたいな」「馬鹿ユカタ馬鹿」

「殺すと面倒だ。吹き飛ばす程度で良いよ」

「よろしくてよ」

 短い詠唱を終えると、伸ばされた掌から風が吹き出す。馬車を走らせる時に使えそうだと思いながら敵を注視していると、風魔法が当たった雑魚共は、転がりぶつかり塊になって倒れ伏した。あの分だとかすり傷だろうが、追って来るには面倒な程度の距離は稼げた。十分な成果だ。

「お疲れ様、ベス」

「もう少し支えて下さいまし」

「向かい合わせに「馬鹿ユカタ馬鹿馬鹿」」

 一変して、この日は夜襲が無かった。雑魚の群れから離れたのかも知れないし、たまたまかも知れない。どちらにしても静かな夜だった。

 王都出発から9日経った夕方、村に到着。夕飯を作る合間に交代で清拭をする女性陣。僕は最後で良いからと料理に没頭する。

「アルアインさんも体拭いて来なよ」

「私はこの後整備があるから、するならユカタの後になるわね」

「僕が脱がないと整備出来ない訳か」

「前衛の方が痛むからね。先に行ってくれた方がありがたいかも」

「女性を差し置いて先には、ちょっとね」

「ユカタ様、小屋が空きました」

「様?いつもの呼び方で良いのに」

 マキ達が小屋での清拭を終えて出て来たのだが、何で急に様なんだ?

「お仕えする先ですから。今から慣らしておきませんと」

「じゃあ、主として命令するのにも慣れとかないとな。マキよ、普通の呼び方に戻すが良い」

「はっ、承知しましてございます。ユカタ君様」

 それは冗談でやっているのか?








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