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雑魚の、足取り
しおりを挟む「王都の近くは結構出たけど、一村越えたらその先さっぱりだったよね?馬の脚なら逃げられる量だし、奴等が歩きの帯同者だとして、倒せない程の敵じゃ無いハズだよ。それに」
エリザベス様の質問に答える。ローウィラーに逃げ込むって事は、襲われたのはローウィラーと1つ目の村の間、長くても次の休憩地って事になる。さらに言えば、街から近い休憩地で起きたに違いない…と続けると、皆の顔が渋くなる。
「どうしてそう?」
「朝から酒飲んでんだよ?朝飯にエール。なら朝一番で門に入らなきゃ腹一杯になってほっつき歩いてないよね。開門と同時くらいに入ったなら、夜の内に門前に居た可能性もあるよ。で、1つ目の休憩地なら夕方、2つ目の休憩地には昼に着く。金や食料を持った親子を襲うならいつが良い?」
「なぜそんな事まで知っている」
「片割れの母娘が飯も、その場で出せるお礼も持ってなかったから。それが縁で今日店に行ったんだ」
「貴方方、そろそろ仕事に戻りなさい。すべき事があるでしょう?」
「……総隊長」
「承知した」
「子供が売り捌かれてなきゃ良いね」
「…失礼する」
僕の嫌味に答えもせず、2人はメイドに連れられ屋敷を出た。
「ベス、なんかイライラするよ」
「仕事に忠実なのでしょうが、心が痛みますね」
夜になり、食事と風呂を終えた頃、執事長とエリザベス様が離れにやって来た。
「夜這いに来るには早いよ」
「それは後程」「ゲフンゲフンッ、昼間の件について、ご報告があります」
執事長は大きく咳払いをすると、調べさせた内容を読み上げる。曰く、開門から間もなく街に入った3人組はその足でギルドへ移動して処理を行い、売り物もせずギルドを出た。その後朝までやってる酒場で閉店過ぎまで飲んで店を追い出され、僕に当たりに来た…と。
「いつ門前に着いたか分かる?」
「はい。夜明け前には居たようです」
「行商の馬車とか並んでるよね?」
「ですが、相手は武器を持っておりますれば」
「ろくでなしですわね」
「なあ、ソイツ等がどうした?喧嘩でも吹っ掛けられたんか?」
話が入って来ないエヴィナでも、感覚として相手が敵と分かるようだ。ちなみにロシェルはもう寝に行ってる。
「夜襲から逃げ出した雑魚だね」
「夜襲から、ならば良いですが」
「門前より前の情報は、難しいよね」
「はい。今向かわせておりますれば、朝には持ち帰る事でしょう」
襲われた跡地を見に行ってると言う。流石貴族家だな。
「さあ、明日は街を出ます。今宵は早寝致しましょう。さあ、貴方様」「ゲフンゲフンッ」
「お休みベス」「あらいけず」
「たっぷり搾り取っておきますわ」
「外から解呪を飛ばしましょう。ではご機嫌よう」
2人が本邸に戻ってく。
「…キスだけにしとくか?」
「明日のご飯が無くなるよ?」
「そりゃあ困る」
困らせてやった。
「ユカタがエヴィナのおっぱい吸ってた」
朝から困る報告をされ、エリザベス様をプンプンさせてしまった。ご飯はちゃんと貰えたが、
「私、お待ち申しておりますの」
食後はずっとその一言だけで過ごすようだ。
「ベスはこんな雰囲気も無い時に致されて嬉しい?」
「…分かっておりますっ」
これから昨夜から外に出てる情報も来るってのに、拗ねっ放しでは困るので、ハグして頭を撫でてやる。以前贈った頭飾りがシャラシャラ鳴った。
「貴方様…」「ベス…」
「ゲッフンゲフンッ!お戯れはお控え下さいませ!昨夜の情報が着きまして御座いますっ」
エヴィナを筆頭に笑われてしまった。そういや皆居たんだった。
持ち込まれた報告は笑い事では無かった。嫌な予感は当たる物で、報告者は徒歩の帯同者による犯行と見たようだ。馭者以外の乗員9名の内、男性死者6名女性不明2名男性不明1名。ローウィラーに戻ったのは馭者だけとなっている。馬と馭者を殺さなかったのは護衛が本格化するからだろう。
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