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はしたない、女達
しおりを挟む人攫いの首は大した値段にならなかった。高額な賞金の掛けられた大悪党があんなチンピラな訳が無いから当然と言えば当然だ。汚れた分損したまであるぞ?血生臭い服のまま宿屋の向かいの風呂に行き、番台のおばさんに凄い目付きで見られたが、気にせず湯に入り服を洗った。
「次やったら出入り禁止だかんね」
帰り際そんな事言われたが、そうそう殺し合いなんてしてたまるか。
「姉御!旦那様から血の匂いがするっ!」
「女か?」「私と言う者がありながら…」
部屋に戻ると皆帰って来てて、鼻の利くハキに血の匂いを嗅ぎ付けられてしまった。それは良い。何で相手が女なんだ?
「男だよ」
「「私と言う者がっ」」
貴族が2人して同じ事を言う。まあ男女問わず殺して良いなんて事は無いよな。
「人攫いに襲われてね。1人殺って、銀貨3枚になったよ。余ってた皮も売って来ちゃった」
「攫われなくて何よりですが…」
「迂闊だぜ?」
「旦那様ならきっと良い旦那に買ってもらえるさ」
「尻奴隷にされるって言われたよ」
「おう…」「まあ」「尻?尻って出るトコだろ?」
エヴィナはハキの肩を組み、ヒソヒソ何やら話し出した。エリザベス様まで参加しておられる。
「ち、ちん…を?…そんなっ」
「ハキ、せっかく女の子っぽくなったのにはしたない会話に混ざるんじゃないよ」
「男色を好まざる女子は居りません、とジ、メイド達が」
ジ?
「家の奴等も好きモノ多いぜ?色々溜まってんだろーなー」
「それなら男女で致しなさいよ。村にはそんな人居なかったよ?」
「田舎だからだろ?田舎だけに、ヒヒッ」
新しい古着を着て一層女の子っぽくなったハキを悪の道に引きずり込もうとする貴族達。僕が注意しても一笑に付されてしまった。ヒソヒソが収まる様子無し。夕飯まで寝てしまおう。
「俺13だし、酒くれぇ飲めらあ」
夕食に酒を頼む貴族2人に続けて頼もうとした子供に注意すると、生意気な言葉を返しよる。
「僕はちゃんと15まで我慢してたけどな。それにしてもお前13か。10歳くらいだと思ってたよ」
「多分13だぜ」
「飲むなら薄めて飲めよ?飲み過ぎるとハゲマッチョになるからな」
「何だそれ?脅してんのか?」
「尻尾がツルツルになったら恥ずかしいだろ?」
「……おぅ…」
尻尾ツルツルは流石に嫌らしい。ズボンから飛び出してる尻尾を腹に巻いてイジイジし始めた。
ハキはプロカヴィアンだと思う。が、彼女自信、自分がどの種か分からないみたいだ。僕自信、あまり獣人を見た事が無いのだが、耳はアルアインさんと同じプロカヴィアンに見える。だが尻尾はモコモコしてなくて、根元が太くて先が細い短毛型。丸っきり別種か、プロカヴィアンとの雑種なのかも知れないな。
「うぇへ~、甘くねえけど飲めるぜぇ~」
薄めろって言ったのに。案の定、1杯でこんなになってやがる。それは飲めるとは言わない。飲まれてるんだぞ?
「甘いのを挟んで飲むんだ。僕の果実水飲んで良いぞ」
「んなぁ、旦那しゃまぁしゅき~」
「あらあら、甘え上手な事」「今夜は寝らんねーな」
「寝るぞ?」
「あらいけず」「旦那は年上好きだもんなー」
「ハキとしたら孕んじゃうし」
「あ」「そう、でしたわね…」
今更気付いたのか?
「旦那しゃまぁ…、おぇのこと、きぁい?」
「…後悔すんなよ?」
まあ、しないけどな。ベッドに寝かせたらすぐ寝ちゃったし、一緒のベッドで寝てやっただけだ。
翌日は全員揃って行動する。また人攫いに襲われたら堪ったモンじゃないからな。洗濯屋に行ったり足りない買い物をして、午後はギルドで到着と出発の処理をする。受付嬢には小言をもらったが、明日には出るので仕方ない。
「数日前からですが、エヴィナ様に言伝がありますね」
エヴィナが受け取ったメモ書きには、どこそこの宿屋で待つと書いてあった。
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