300 / 385
ドアは、無い
しおりを挟む魔法を頼んだジュンを連れて、着いたのは拠点の入口だ。すぐ裏なので寝床から10m程しか離れてない。
「門でも建てるの?」
「まずは壁からだね。少しずつ伸ばして湿地までお願いしたい。基礎からやってくだろうから本当に少しずつで良いよ」
「穴を掘って壁を建てる感じで良いかな」
普段の野営では直接壁を建ててるが、長く使うと考えるとその方が安心だ。高さはウォリスが上がれなそうな高さでと注文を出したが入られたら入られたで食料や素材になってもらうから問題ない。
土魔法の穴掘りは不思議な魔法だ。掘った後の土を消すと、二度と帰って来ないのだ。学者の世界でもこの土がどこに行ったかの議論は決着しておらず、異界に送られてる説や魔素に変換されている説等色々あると学園で習った。ジュンは魔法で四角く穴を開け、中に石壁を生やす。ある程度土台が出来たらブロック状の石壁を乗せて高さを出して行く。ジュンは途中で飽きたのか、入口の反対側に移って同じ事をして、入口の両端に長い石壁を乗せた。
「門」
門作ってたのか。
「魔法建築って凄いよね。戦時中はコレで砦作ってたってんだから」
「100年持たないらしいけど、そんなに長くやってられないもんね」
100年持てば十分な気もするが、何代も持たせるならばやはり手間を掛けるべきなのだろう。その後少しだけ壁を伸ばして壁作りを終えた。寝床に戻ると馬と皆が帰って来てて、レイナとマキが寄って来た。
「ユカタ、ジュンにあまり無理をさせないでね?」
「もちろんだよ。今夜の夜警は免除してもらうつもりでお願いしたんだ」
「旦那様、浴槽のアレはなんでしょうか」
「アレはね、レイナちゃんにお願いしようと思ってたの。付いて来て。ユカタ君もお水~」
ジュンの背嚢にも水はあるのだが、そっちは飲食用に分けるみたい。僕のも飲食用なのだけど。浴室に付いてくとジュンがレイナ達に用途を説明する。2人共なるほどと言った顔で頷いて、早速火魔法をぶっ放した。
「マキちゃんっ蓋は後でっ」「え?あ…熱っ」
「ユカタ君、お水」「はいはいっ」
筒の中の火球は、その場に停滞させておくだけなら4時間は持つと言う。風呂に入る時に蓋をして水が入らないようにするそうだ。
食事をして3時間、お湯の調子を確認する。入るには少し温いがお湯にはなった。温いけど入れる事を伝えに行くと、ハキは一番乗りと駆けてった。
「旦那、アイツ放っとくと飛び込むぜ?」
「それ僕に一緒に入れって事?」
「頭からナニから洗ってやるんだろ?」
ホレホレと手を振られ、ハキを追い掛けた。脱衣場にいた全裸のハキが獣に見えてちょっとびっくりしたのは内緒だ。全身体毛の獣人の裸はまだ見慣れてないのだ。
「ハキー、洗ってやるからまだ入るな」
「旦那様ぁ、俺だって身体くれぇ洗えっぜ?」
「洗ってやるって、約束したろ?」
脱衣して洗い場に座ると、バケツで湯を汲み頭から湯を被る。
「この中で洗っちゃダメなのか?」
「みんなで使うんだぞ?お前も座れ」
「お、おう…」
…なぜ裸の膝に座るのか。場所を指定しなかった僕のせいか?ハキに湯を浴びせ、頭を揉む。水浴びはして来たと言うが、洗うって言っちゃったしな。全身の体毛にも湯を掛けて、毛の間に残っているであろう埃や垢を揉み落とす。
「掌と足の裏は生えてないんだな」
「うう…。恥ずかしいよぉ」
「湯に浸かったら今度は石鹸で洗うからな」
まだ火の残る筒に蓋をして湯に浸かる。もっとバシャバシャ煩くするかと思ったが、ハキは俺の上に腰を下ろすと大人しく浸かってる。
「おう、入ってっか?」
ガサツなエヴィナがはしたない格好で浴室に入って来た。先に入れって言ったのお前だろうに。
「入ってるぞー」
「ちっ、マジかよ。おいハキィ、気持ち良いだろ~、ん~?」
「分かんない…初めて、らもん…」
ん?初めて?この間浴場に行っただろ?
20
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
私が過去に投稿していたファンタジーの短編集です
再投稿に当たり、加筆修正しています
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -
花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。
魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。
十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。
俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。
モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる