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セイと、シと
しおりを挟む倒れ込みジタバタ暴れる年寄りの悲鳴を聞いて、集まって来ていた獣人達が悲鳴を上げる。男に発破を掛けるとようやく急ぐ気になったようで、10人程の獣人が僕達の前に集まった。
「隠れてたりしない?」
「こっ、コレで全部だ!ギャッ!」
「口の利き方」
「ちょっと見て来てよ」
獣人女性にお願いし、集落の中を探ってもらう。ロシェル連れて来れば良かったな。結果、小さい子供が1人と大人の男が2人出て来た。
「嘘吐きめ」
「旦那、そろそろ」
集落に残った16人に向けて、これからする事、その後どうするかを決めてもらう。相談はせず、自分の意思で決めて欲しい事を伝え、痛みで横たわる年寄りに剣を突き刺した。
「あがっ!あっ、あっ…」
「この剣は先日攻めて来た獣人の持っていた物だ。この村からも男を出してるよな?知り合いの持ち物だったりするのか?」
返事は無い。自分の身の振りを考えるのに必死なのだろう。皆の考えが決まるまで、拾った武器で年寄りを刺す。獣人達は目を逸らしているが、考えは決めたのか?催促すると1人、また1人と僕達の村への移住を宣言し始めた。移住を希望したのは大人の女と男女子供。年寄りは村に残ると言い、大人の男は村を去ると言った。
それは敵になると言う事だな?
「敵になるんだね?」
「そ、そんな事は」「俺は歯向かわっ歯向かわないっ!ません!」
「お前は?」
「お許しをっ、お許しを…」
「許す訳無いだろ」「ユカタッ」
飛び込んで来たレイナが僕を止める。そんなんじゃ止められないけど、仕方ないな。
「貴方達も解ったでしょ!?次は無いから、出て行きなさいっ!」
レイナに言われ、着の身着のまま集落を出る男達。
「これから行く村に告げ口しそうだよね」「あっ」
僕がそう言うと、男達は声も無く倒れた。獣人達は泣き崩れ、膝を着く。
「どうして…」
「言った通りだよ。二度と襲撃して欲しくないんだ」
「だからって」
「レイナ、止めとけ。旦那は間違っちゃねえ」
「コレは戦争なんですよ。国同士なら国力を削って攻められないようにしやす。村同士ならこうもなりやしょう」
「そもそもアイツ等、隙を見て首を取ろうって腹だったんだ。逃がしてもロクな事ありゃしませんよ」
「私は皆殺しでも良いくらいさ。私を選んだ奴等だからねっ!あンた等も!せいぜい旦那様に愛想尽かされないようにしなっ!!」
女達が僕を見る。見られても困るな。働いてくれたらそれで良いのに。
この集落で手に入った新規住民は男子2女子1、大人女性4の総勢7人。男は20人以上はいたハズなのに女性は4人。少な過ぎる。
「ねえ、大人の女性少なくない?」
「なんだい、物足りないのかい?」
「違うよぅ」
「ふふっ、わーってる。逃げたのさ」
この集落出身の女性は、僕達が来る前に逃げたと言う。どこかの予想は出来ていて、族長の村ではないかと予想を述べた。
「何年かに一度、村毎に若い女を出すのさ。で、たまに知らねぇ女が村に来る。私の母もその口さ。今回は若くないのも行ったみたいだがね」
ヒトの村だと男が村を出るが、獣人達の風習だと女性なのか。狩りの上手さが繁栄に繋がるから、男は出したくないのだろうな。
「ん?さては私の親を抱きたくなったかい?」
「違うってば」
「居ない女より、今目の前のを抱いておくれよ」「あ、狡いよ?あたいもしておくれ」
言うが早いかスカートを捲って尻尾を引き抜く。僕は皆を見るが、一様に目を逸らした。
「強い男が女を迎える。そう言う事、さ」
「この風習、何とかしないとダメだよね…」
「オレ等馬車戻ってっから」「今日はコレで戻りましょう」「私は少し休むわ」
エヴィナ達は馬車へと戻る。僕は獣人達の見せしめにされた。住民達は大人も子供もなく集まって、強い者の庇護を得た。親がそうさせたのだ。この村唯一の女子は初めての痛みに泣いた。せめて優しく相手した。
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