【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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発展が、始まる

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  ジュンと棟梁達がお屋敷の仕上げに忙しいので、僕達は畑仕事と狩り、そして地下に埋まった資源を掘る生活をして過ごす。採石の手伝いに慣れて来た事で採石場の利用を許された僕は、狩り組と同行しながら石と粘土と砂を回収し、いずれ来る建築ラッシュに備える。

「領主様ァ、そんな乾きモンよりこっちを弄っとくれよォ」

「そんなの後回しで構いやしないんだからさあ」

 狩りの囮としても重宝された。お腹大きくなってるのに元気な女性達だ。元気な女性達を見ているのは気分が良い。釣られて僕も元気になった。

「で?朝まで楽しんでたって訳?」

「夜の方が獲物が来るんだよっ」

 狩りのし過ぎて朝帰りになってしまった僕にロシェルのヤジが飛ぶ。事実、夜の方が何もしてなくても獲物が来るのだから効率が良いのだ。狩り草を見せて納得させたが、お腹の子のためにも無理はダメだと注意された。正論なので何も言い返す事ができず、狩り組には休んでもらい、解体や精肉は僕がする事になった。

「腹と背で2つに分けるんじゃ」「そうそう。首から脇腹に沿っての」

 腹側と背中側で皮の質が違うのは僕も理解していたが、2枚に切り分けるのは獣人達の知恵だそうで、硬さや厚みと言った用途に応じて上下の皮を使い分けると言う。孫みたいな歳の僕に教えたくて仕方がないようで、年寄り達が寄って集って見物に来た。

 年寄り達の教えに従い、狩って来た獲物は先に皮を剥ぐ。内臓を取り出した後では皮が汚れるし、普通に縦に腹を割いたら腹側の皮が使えなくなる。その分血抜きが遅くなるので作業を早く終えなければならず、肉の味は皮剥ぎの得手不得手で決まると言われた。僕は背嚢から取り出す時点で血を異界に残してあるので血が出ない。美味しい肉を食べるためならいくらだってズルをするぞ。年寄り連中は一滴の血も流れない事を不思議がっていた。

 狩りで出たゴミは採石場の始点側、要するに伐採地から離して捨てる事で伐採が格段にしやすくなった。血や内臓、ブフリムですら最早資源と言う認識である。

「引越しが終われば今度は壁作りじゃ」

「同時に家も建てるからの。野郎共、気張れよ!」

 お屋敷の施行が終わり、新たな仕事が始まる棟梁達と一緒に伐採に出る。前日に貯めてあった寄せ餌を遠くに捨てておいたのでロシェルから敵襲を告げる報告もなく、10本の巨木を安全に伐採する事が出来た。コレでまた、家と家財が作れる。

 村に戻ると引越し作業は終わっていた。荷物自体多くないし、ポーチに入れたらすぐだしな。いつでも壁を壊せるように、獣人達の家を仮設する方が時間が掛かったとジュンは言っていた。そして仮設された獣人達の家は、村の東西を繋ぐ石畳に沿って四角くく作られていた。義母様の設計図を見て作ったようで、二階建て集合住宅がズラっと5棟並んでた。

「コレだから魔法建築は」「兄貴、止めんか」

「す、すみません…、勝手な事して…」

「悪意は無いし責めてもおらん。ワシ等がコレを作るに何日掛かるやと思うとな、便利過ぎて言葉も出んわい。ご苦労じゃったの、女棟梁」

「私こそ、皆さんの仕事を見て勉強させて頂きましたっ。縦横、大事ですねっ」

 縦横とは垂直と水平の事だろう。三階から上を作らなかったのは縦横にブレが出始めて怖かったからだと続けた。

 枝払いや皮剥ぎをして夜になり、僕は寝床がどこか教えてもらってない事に気付いた。テントはあるから地べたでも寝られるけどさ。

「お屋敷って、義母様の家だよね?」

「そうですが」

「なら何で僕達の部屋があるのさ」

「客間を当面使えるようにしました」

 壁が新築されるまで、僕達もお屋敷に住めるようにとメイドさん達が整備したそうだ。指示を出した義母様は澄まし顔でお茶等嗜んでいるが、そうなるよう仕向けたに違いない。義母様の自室の隣に客室なんて作らないだろうし、メイドさんの控え室か衣装部屋だったのを変えたのだろうと僕は推測した。








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