【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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住民達ですら根性注入棒が配られてるのに、僕にだけ無い。

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 ギルマス代理が居なくなった所で仕事は滞り無く進む。何せ外から入って来る仕事が無いからな。男女2人ずつの職員達は開店準備に注力出来ると言う訳だ。

「兄貴ー、飯ー」

「旦那様、飯だってよ」

 壁の上から見張りをしてる子供等が昼を告げる。僕と一緒に外壁の土台を作るハキもそれを聞いて口を開いた。

「重石を置く所までやったら終わりにしようか」

「ん、分かった。後で行くってよー」「おーう」

 いつもよりちょっと広めに作業したから昼飯までに終わらなかった。早く壁を建てたいけれど焦りは禁物だな。今日は2人だけだったし。

 作業を終わらせ現場を離れると食事帰りのギルド職員達に道を譲られた。

「り、領主様。ご機嫌麗しゅう」

 ギルマス代理代行の男が挨拶を述べると4人並んで頭を下げる。皆貴族家を離れた者だ。侯爵家の無作法者に対する処置を目の当たりにして舐めた態度が取れなくなったみたいだな。

「皆もギルマスが来るまで準備を頑張ってくれ」

 礼には礼を返す。職員達はさらに何か言いたげだったが、腹を空かせたハキが引っ張るので食堂へ向かった。

「旦那様、鼻の下伸びてたぜ?」

「誰だい?」「針子のお婆共か?」「あたしになら好きなだけ伸ばして良いんだよ?」

「ギルドの女」

「伸ばしてない!エヴィナには服作らないように言うからな?」

 ハキの失礼な報告と、エヴィナの失礼な憶測に声を荒らげる。それに針子さん達はおばさんであってお婆さんではないのだ。村に着いて早々に服屋を開けてくれたってのになんて事言いやがる。

「お嬢、言葉が過ぎやすぜ?」

「へいへい。わーったよ、悪うございましたー」

「お嬢、根性叩き直しやすので表へ」

「!?やんのか?」

 僕の気に触ったのが分かったのだろう。ライラは根性注入棒を抜いた。エヴィナも売り言葉に買い言葉で外に出て行った。せいぜい反省させられてしまえ。

 途中から職人達に手伝ってもらい、夕方まで壁作りをして再び食堂に向かうと、エヴィナがボコボコになってエリザベス様に回復魔法を受けていた。ライラは強いのだ。

「旦那、さっきは言い過ぎた。悪い」

「謝る先は僕じゃないけどな。一矢報いるくらいは出来たのか?」

「赤子の手にも及びやせんね」「かすっただろうが」

 ライラも攻撃を受けたようで、肩口が少し汚れていた。エヴィナも実力を上げて来ているな。そんなエヴィナを赤子以下に見るライラは前に来た不審者なんて1人で蹂躙出来ただろうに。それはそれで角が立つ、か。2人は午後を丸々大立ち回りしてたそうで、こちらの角も立てぬよう、夜は優しくしてやった。

 2日後。昼食を食べているとギルド職員より要望が来ていたそうで、要望書を見ながらパンを齧る。

「貴方様、お行儀」

「う…」

 要望は、周辺施設の充実とある。要するに、ギルドを利用する者が泊まるための宿と酒場が欲しいと言うのだ。

「確かに、とは思うけど、そんなに急には増やせないかな」

「仮設で良いならジュンもやると申してますわ。この地は雨の少ない地ではございますが、いつまでも屋根しかない食堂と言うのもどうかと」

「それはそれで別に作ろう。酒場はお金を取りたいからね。ギルド職員達からも、本来食費はもらうべきなんだ。お酒だって飲み足りなきゃ酒場でお金を落とせば良いしね」

 その日の夜、財政担当が集まって村民達に支払う給与について話し合われた。物々交換な村に貨幣経済を持ち込むのは大変な事だけど少しずつ慣れてもらおう。まずは日々の日当を金銭で支払う。今までの分を一気に渡すとどれだけ使って良いか分からないだろうから、前の分は後で渡せるようにした。そして酒場と服屋からは代金を徴収するようにして、売上は村の金庫に納められる。そしてギルドからも土地代を徴収する事に決めた。ギルドが開業してからになるが、納められないならあってもしょうがないからな。

 この日の話で、セーナは金融王になる事が決まった。










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