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普段の、生活へ
しおりを挟むオーイで買い物等をして1泊し、10日掛けて村へと戻った。結構長く空けていたのもあり、皆心配していたそうで、僕はお風呂で揉みくちゃにされた。
「もう帰って来ないかもってっ」「諦めて洗われてください」「今夜は寝かせないわよ?」
しばらくは眠れぬ夜が続きそうだ。
僕がいない村では、僕の代わりに棟梁達が壁作りをやってくれていたそうで、結構な距離が作り替えられていた。ジュンの背嚢と各自のポーチで何とか遣り繰りしたそうな。帰って来るなり呪物をよこせと奪われてしまったが、買い物したのが入ってるんで早めに食料班に渡して欲しい。
棟梁達が壁作りしてるので村の中は手付かずかと言うとそうでもない。東西通りには家が並び、酒場通りには公共浴場と宿屋が新設された。そして僕がいない間に隣村から1家族4人が移住して来たそうだ。農家の次男で自分の畑が欲しいとの事だったが、僕の村もやってる事は小作農だから、移住して来た家族の境遇は前と変わらないんだよな。とは言えこちらは日給が現金でもらえて生活費も無料なので断然こちらが良いらしい。
せっかく冒険者ギルドが出来たと言うのに冒険者は来てないそうだ。さっきの家族に聞くと、隣村までは来るものの護衛依頼が多く、隣村に滞在するような冒険者も、モグリで行商人の護衛をする程度なのだと。街道横の凹みには土を入れたので魔物も寄るようにはなったが、それでも狩りには来ないみたい。
「旦那様、果樹を植えに行きたいと思いやす」
2日経っての休み明け。ライラがそんな事を言って来た。オーイで食べた果物の種の事なのは察したが、僕も付いてく程の事?
「はい。魔獣帯に植えやすので、護衛をよろしくお願いしやす」
「なるほど。山育ちにする訳か」
魔獣帯の中でお酒を作る訳ではない。魔獣帯の中に果樹園を作って生育速度を早めようと言う魂胆だ。
「荒らされなきゃ良いけどね」
「魔獣帯の魔物は肉食です。折られたりしなければ問題ありやせんよ」
この間食べた実は樹生で樹高が高くなるそうで、迷い込んだブフリムでも登って食べる事は出来ないと言う。それなら食害に遭う事は無さそうだ。荒らされて折られたとしても魔獣帯の植物はすぐに新しい枝を伸ばすので、少し我慢すれば元に戻ると言う。これは山育てと言って森のある村ではよく知られた栽培法だ。樹生の木の実や蔓植物を植えて促成栽培したりする。魔物の強さが段違いである点を除けばどちらも同じと言える。
僕とライラは戦車に乗って村を出る。初めて戦車に乗せてもらえた。車高が低くて疾走感が凄く、馬の尻も近くて蹴られないか心配になる。ハキも初めて乗った時は似たような事言ってたな。
「こ、これは、早い。早く感じるっ」
「舌を噛みやす。ご注意を」
水無川の際を走り抜け、伐採に使った場所に着く。以前切った巨木の切株からは新しい枝が何本も伸びて太り、元の太さに戻ろうとしていた。こんな端っこでも魔素の強さは相当だな。
「あまり長居は出来やせん」
「枝を差したらそのまま育つんだよね?」
「え、はい。よくご存知で」
ならばと種蒔はライラに任せ、僕は防獣対策をする。切り株から生えたヒコバエを1つ切って枝を払うと、果樹園予定地の際を囲むように払った枝を地面に突き刺して行く。水を撒いて、後は太く密に育ってくれれば小物が入って来られなくなるだろう。僕が終わった頃にはライラも種を植え終えて水遣りを待っていた。
「明日もまた見に来よう」
「そんなに早くは実になりやせんよ」
「手入れしないとただの高木になっちゃうんだ」
「それで良いのでは?」
ライラは農作業に関しては素人だ。魔素による促成栽培は知ってても、植えた後の事までは知らないみたい。放置してても実は成るけれど、それだけだと農業としてはダメなのだ。切り株のヒコバエを全部切り、回収して村に帰った。数日は掛かる仕事だが、出来上がったら納得するハズだ。
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