27 / 61
27 希望は持てない
しおりを挟む大人達が魔物を殺すのに慣れる事はなかったが、ある程度殺しを続けて行く内に忍者の凄さが分かるようになって行った。どこから出して来たのか、角材1本と身一つでモンスター共を圧倒し、銃弾の効かなかった体を砕いている。正にモニタ越しに見る忍者そのものであった。もちろん日本の忍者は角材で敵を屠る事もしなければ人前で殺陣を晒す事もない。彼等の知る忍者は外国人のイメージから生まれた存在なのである。
『所長。貴方は忍者ですか?』
『いいえ。俺は一般人です』
『一般人夫婦から忍者が産まれる事は出来ますか?』
『それはあり得ますが、俺の妻は普通の人です』
「¿Por qué puedes cortar a tus enemigos con un palo de madera?」
『彼はなぜ木の棒で敵を切れるのか?と聞いています』
『ああ、なるほど。忍者の技術だと思う』
「Ninja Techniques…」「oh…」「Vaya…」「Yo también quiero recordar」
適当な事を言う父純一は、ジョンが言った言葉の意味は分からなかったが、皆が羨ましがっていると言う気持ちは感じ取れた。
車が停り、王がその場に居た最後の1匹の首を撥ねる。少し動きを止め、王が車に手を振ると、運転手のジョンが建物を指差す。そこに仲間がいるハズだと、車を向けた。
─乗せてはくれない、か─
臭いからに他ならないが、せめて労って欲しかった。しかしエアコンで吐きかけた男達だ。愚痴を言っても仕方ない。
『リカルド!いるのかリカルド!?』『返事をしろ!』
鍵のかかった休憩室のドアを叩き、男達が声を上げる。
「父さん、合鍵は?」
「お、そうだった」
「撃たれないようにねー」
「oh… Someone please take my place and open the door.」
父純一は基本的には慎重派である。本来ならPMCが逃げた時点で街に戻るべきだが、変な正義感やら責任感のある男でもあり、仲間を助けるべく危険に身を晒す事をしてしまう。だが撃たれて死ぬのは嫌なようで、鍵を開けた後の突入は仲間に任せた。魔物が現れた今ならば、そのくらい慎重で良いと王は感じた。
リカルドは休憩室の奥、冷蔵庫と長ソファーをバリケードにした狭いスペースに蹲っていたのを保護された。狂乱して銃を乱射…等なくて良かった。だが助けが入らねばいつ狂乱するかと言う状態で憔悴し、坑道にいた者の詳細は分からないと答えた。
『所長。助けに行きましょう』
『危険だ。俺達は武器を持っていない』
『しかし、ミスター忍者さんがいる!』
『自分の息子を危険に晒す親がいるか?』
『それが唯一の解決策です』
「父さん、俺は行くよ。そうしないと父さんも戻れないでしょ。Give me directions.」
男達は王に言われた通り、斧や鉄パイプ等物理攻撃に特化した武器を探して来て坑道に潜る支度を始めた。父も諦めてヘルメットを装備する。非戦闘員の父は正直足手まといだが、この場で1人待つ方が悪手なので同行頂いた。
『ミスター。忍者刀は無かった。代わりにコレを使ってください』
父のマネージャーであるピケが持って来たのは大型のサバイバルナイフ。地球では三徳包丁より大型の刃物は持った事のなかった王だが、異世界ではロングソードを多用していた。刃渡り50cm程の長さはショートソード程か。王は受け取ると重さを見て問題無い事を告げた。
「アナタニ シカー タ、ヨーレマセーン。ドウゾ ヨローシークー オネガシマー」
「生きていれば助けるよ。そのために来たんだから」
「スミ マセーン。ニ、ホンゴ ベンキョチューデース」
王は英語で言い直し、探索の準備を進めてもらった。
坑道の入口にはまるで見張りをするかのように、ウルフを連れたゴブリンが二組いた。それ即ち、坑道内部で統率が取れたと言う事になり、攻略難度の上昇が窺える。統率を取る者がいるのだ。
─中は、絶望的だろうな…─
11
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる