異世界から帰ったのに何かおかしい 〜俺ってそんなにモテてたか?〜

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27 希望は持てない

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 大人達が魔物を殺すのに慣れる事はなかったが、ある程度殺しを続けて行く内に忍者の凄さが分かるようになって行った。どこから出して来たのか、角材1本と身一つでモンスター共を圧倒し、銃弾の効かなかった体を砕いている。正にモニタ越しに見る忍者そのものであった。もちろん日本の忍者は角材で敵を屠る事もしなければ人前で殺陣を晒す事もない。彼等の知る忍者は外国人のイメージから生まれた存在なのである。

『所長。貴方は忍者ですか?』

『いいえ。俺は一般人です』

『一般人夫婦から忍者が産まれる事は出来ますか?』

『それはあり得ますが、俺の妻は普通の人です』

「¿Por qué puedes cortar a tus enemigos con un palo de madera?」

『彼はなぜ木の棒で敵を切れるのか?と聞いています』

『ああ、なるほど。忍者の技術だと思う』

「Ninja Techniques…」「oh…」「Vaya…」「Yo también quiero recordar」

 適当な事を言う父純一は、ジョンが言った言葉の意味は分からなかったが、皆が羨ましがっていると言う気持ちは感じ取れた。

 車が停り、王がその場に居た最後の1匹の首を撥ねる。少し動きを止め、王が車に手を振ると、運転手のジョンが建物を指差す。そこに仲間がいるハズだと、車を向けた。

─乗せてはくれない、か─

 臭いからに他ならないが、せめて労って欲しかった。しかしエアコンで吐きかけた男達だ。愚痴を言っても仕方ない。

『リカルド!いるのかリカルド!?』『返事をしろ!』

 鍵のかかった休憩室のドアを叩き、男達が声を上げる。

「父さん、合鍵は?」

「お、そうだった」

「撃たれないようにねー」

「oh… Someone please take my place and open the door.」

 父純一は基本的には慎重派である。本来ならPMCが逃げた時点で街に戻るべきだが、変な正義感やら責任感のある男でもあり、仲間を助けるべく危険に身を晒す事をしてしまう。だが撃たれて死ぬのは嫌なようで、鍵を開けた後の突入は仲間に任せた。魔物が現れた今ならば、そのくらい慎重で良いと王は感じた。

 リカルドは休憩室の奥、冷蔵庫と長ソファーをバリケードにした狭いスペースに蹲っていたのを保護された。狂乱して銃を乱射…等なくて良かった。だが助けが入らねばいつ狂乱するかと言う状態で憔悴し、坑道にいた者の詳細は分からないと答えた。

『所長。助けに行きましょう』

『危険だ。俺達は武器を持っていない』

『しかし、ミスター忍者さんがいる!』

『自分の息子を危険に晒す親がいるか?』

『それが唯一の解決策です』

「父さん、俺は行くよ。そうしないと父さんも戻れないでしょ。Give me directions.」

 男達は王に言われた通り、斧や鉄パイプ等物理攻撃に特化した武器を探して来て坑道に潜る支度を始めた。父も諦めてヘルメットを装備する。非戦闘員の父は正直足手まといだが、この場で1人待つ方が悪手なので同行頂いた。

『ミスター。忍者刀は無かった。代わりにコレを使ってください』

 父のマネージャーであるピケが持って来たのは大型のサバイバルナイフ。地球では三徳包丁より大型の刃物は持った事のなかった王だが、異世界ではロングソードを多用していた。刃渡り50cm程の長さはショートソード程か。王は受け取ると重さを見て問題無い事を告げた。

「アナタニ シカー タ、ヨーレマセーン。ドウゾ ヨローシークー オネガシマー」

「生きていれば助けるよ。そのために来たんだから」

「スミ マセーン。ニ、ホンゴ ベンキョチューデース」

 王は英語で言い直し、探索の準備を進めてもらった。

 坑道の入口にはまるで見張りをするかのように、ウルフを連れたゴブリンが二組いた。それ即ち、坑道内部で統率が取れたと言う事になり、攻略難度の上昇が窺える。統率を取る者がいるのだ。

─中は、絶望的だろうな…─









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