異世界から帰ったのに何かおかしい 〜俺ってそんなにモテてたか?〜

もる

文字の大きさ
37 / 61

37 変わり行く日本

しおりを挟む


 総称がゴブリンと決まった魔物達は、南米同様日本各地の穴と言う穴から発生した。鉱山に洞窟、廃トンネルに下水道。自衛隊がどんなに頑張って働いていても、結界や封印が出来ないのであれば穴の1つ2つ殲滅させてもいずれ再び湧いて出る。そして日本特有の理由で殲滅速度が低下する事案も発生していた。

『ゴブリンが発生してる状況ですよ?放置していれば地権者を含めて被害者が出るかも知れないじゃないですか。それを土地の使用料を取るってどうかしてますよね?なら貴方は自衛隊の代わりにゴブリンと戦えるんですか?私なんて絶対無理ですよ。ご自身が出来ないなら土地の使用料なんてケチ臭い事言ってないで安全を確保してもらうべきではないですか?』『はい。では一旦CMを挟んで……』

 朝食を食べている居間にコメンテーターの声がテレビを通してそこにいない地主を煽る。口だけなら何とでも言えるが王もコメンテーターの意見には同意であった。田舎の洞穴でこうなのだ、都会の下水道はもっと酷い。避難指示が出されると何かと補償やら補填をばら撒けと騒ぎ立て、政府の支持率を下げると脅す。ばら撒いたツケが未来の自分達に返って来る事を理解していないのだろう。

─南米の方が素直だな─

「ねえお兄ぃ、家の前が避難指示出たらいくらくらいもらえるのかな?」

「0だな」「何でよ?」

「俺が殺るし、二度と湧かないようにする」

「きんちゃんには、危ない事はしないで欲しいわ」

「危なくはないよ。アレよりは」

 アレと言ってテレビを見遣る。CMが明けたスタジオでは、一般が撮影したスマホ動画が流されている。縦長の映像には木刀やバットを持った学生が数人。そしてその奥に映るはテレビ局によりモザイクが掛けられたゴブリンであろう動く物体。『これからショッキングな映像が流れます』とテロップが入り、徒党を組んだ子供達がモザイク相手にギャーギャーと喚きながら鈍器を振るう。

「ご飯食べる時間に流す動画じゃないよぉ」

「その内これを生業にする奴等も出て来るだろうね」

「きんちゃんはそう言う事しないでね?」「私は?」

「する気もないでしょ」

 樹里はテレビを消して、まあねと返す。王は母の願いに返事を返さなかった。

─殺らなきゃ人質に取られるんだけど、忘れてるな─

 今の所日本での協力はないが、王は南米の治安を守っている。自宅で朝食を食べている今であってもだ。何人もの分体が人の踏み入らぬ土地の穴を殲滅して《対魔結界》を張り、都市部では女を抱いている。父にはあれから会わないようにしているが、ニアミスした回数は10を超えていた。

 11月に入り、ゴブリンが自衛隊の手に余るようになると子供達の間に鈍器を持つ事が流行り始めた。もちろん抜き身で持って補導される馬鹿も居るが、球技や武道を嗜んでいたり過去に経験ある者は、携行用の入れ物を背負って外に出た。そして運良く魔物に出会った者は己の力を存分に振るい、弱い者は淘汰され、強い者は魔物を殺し、弱い者を傷付けた。

「何かさ、みんな武器持ってるね…」

「王君あたし怖~い」「王君は武器持たないの?」

「臭いけど手で殺れるし、遊んでもいられないよ。自衛隊も頑張ってるみたいだしね」

 駅を出て、通学路。樹里は周りの学生の背中に指された長物を見て呟いた。聞こえた女子は態とらしく怖がって胸を押し付け、他の女子は王の装備を気に掛ける。王は正式な依頼が来るまで日本での協力はしないと決めていたし、相手方にもそう伝えてある。国民の税金を花代にして欲しくなかったのだ。

「お前さあ、武器も持たねーで女ぁ守ってるつもりかよ」

「俺等ゴブリン10匹は殺ってんぜ?」「そんなのより俺達と行こーぜ?」

─僻みか…─

 女子の群れを掻き分けて、態々王にケンカを売りに来たのは背中の得物が原因か。

「はあ?あンた達より王君の方が良いに決まってんじゃん」「王く~ん暴力振られた~」

 口で女に敵う訳がない。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...