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50 西洋美人はエルフに見える
しおりを挟む「レマン湖!」
レマン湖。スイスとフランスを跨ぐ湖で、北側はスイス、南側はフランスと言う国境の切り方をされた湖であり、日本人男子なら一度は口にしたい地名の一つである。夜のヨットハーバーで、王は二度その名を口にした。そして自分がスイス側に居る事を知り、下調べの重要さを再認識した。やはり王は浮かれていたのだ。
「…ふぅ」
─場所はジュネーヴの近くだし、ニアピンなのは間違いないか。国境越えどうするか……─
考えて、阻害系スキルを増し増しにして北上する事にした。騎士団の本部がパリにあり、素材の買取施設もそこにあるからだ。
ウィルソン通りを北上し、フランス通りには入らず側道へ入り、いくつかの建物を抜けてモン・ルポ公園へ。
─昼間なら観光したかったけど、夜だと雰囲気ヤバいな─
途中に見掛けたヨーロッパ建築は西洋ホラーに出て来そうな雰囲気を醸し出していた。ただでさえ魔物が出るようになってしまったのだ。アンデッド系の魔物が発生してしまうと、凡そ人では太刀打ち出来なくなる。物理攻撃が効かなくなるためだ。
国境越えはすんなり出来た。ボア・シャットン道路を北上し、コレックス・ボシー道路に入るとそこはフランス。道路に引かれた白線の間隔が両国で違うのが面白い。
左右は森。しかし少し歩くと畑が現れる。《感知》を最大に使っても魔物を発見出来なかったため早く移動したかったが、日が登り始めてしまっては無理出来ない。2km程歩いてスシーへ入り、そのままジェクスへ。しかし朝に開いているレストランがない事を目の当たりにして王の腹は鳴いた。
「Tu es japonais ? Tu m'as appelé à voix haute ?」
隣にはこちらを仰ぎ見る翠眼が、背中まで伸びた金髪ストレートを揺らしていた。国を越えても王のモテ加護は変わらない。
─異世界人みたいだ…っていかんいかん─
「Oui, je suis japonais. Je cherche une supérette. Si vous savez où elle se trouve, pourriez-vous me l'indiquer ?」
つい見蕩れてしまったフランスエルフに、王は少し早口で返答してしまう。だがフランスエルフは流暢な言葉遣いに感心し、近場のコンビニに連れて行ってくれた。
─腕を組む必要は…柔らかいな……─
「ここが、コンビニ……」
「Qu'est-ce qui ne va pas ? Ça va ?」
王は海外のコンビニに初めて訪れた。そして日本のコンビニとの品揃えの違いに目を見張る。意外な程青果が多く、飲み物は冷蔵もあるが常温が多く並んでいた。だが、王は気付かない。品揃え自体は日本のコンビニとほとんど変わらない事に。そして冷蔵コーナーに酒が置いてあるか否かと、弁当、レジ前フードのあるなしに気付かなかった王はリンゴとバナナ、チョコクッキーとPETコーヒーを買ってコンビニを出た。
「Merci, jeune dame. Tu m'as sauvé. Maintenant, je n'aurai plus faim.」
「Je m'appelle Jeanne. Comment t'appelles-tu ?」
『ジャンヌさんですね。俺の名前はキングです。』
『イギリスの名前なのね』
『フランス呼びにしても問題があります』
『そうね。公園に行きましょ?食事するのでしょ?』
ジャンヌさんは公園にも案内してくれると言う。予定を聞くが、予定はないそうだ。多分嘘だろう。お詫びに飲み物とお菓子を奢らせてもらった。
ガール通り沿いのセードル公園は植樹に遊具と駐車場のある一般的な公園だ。遊具を正面にしたベンチに座った。
『ジャンヌさんは朝食を食べましたか?』
『もちろん。私は飲み物を頂くわ』
フランスの朝食は、飲み物の他に紅茶を飲むそうで日本人としては多いと思った。逆に水や果実水だけの異世界は日本に近いと感じる。
「Faisons l'amour ?」
10
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