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53 ヨーロッパ
しおりを挟む『ダサくはないけど、銀の鎧を着てみたかったわ』
フランスエルフは鎧の重さを知らないと見える。夕食時、革の装備を身に着けて、家族の前で回って見せた。
『銀より高価な素材だよ。南米の強い魔物から得た素材だからね』
『雪が降ったら外に着て出られるわ』
『寒さよりも敵の攻撃と返り血を防ぐ効果があるんだ。ナイフ程度じゃ傷も付かないよ』
『やってみる』『止めなさいジャンヌ!』
母の注意を聞かず、肉を切り分けるナイフでグリグリ刺しだすジャンヌだが、その効果を見て喜んでいる。
『顔に攻撃を受けないようにな』
『私を守ってくれないの?』
『指示を聞いて動き回らないでくれたら守ってあげるよ』
『なら平気ね!』
─どこがだ?─
その日はエッチな事をせず、明日に備えて寝室に籠るジャンヌ。王は母親とセックスし、夜中の空に飛び上がる。地図は頭に入っているのでセヴェンヌ国立公園にはすぐに着いた。真夜中の森には人の気配はなく、人ならざる者の気配が漂っている。《感知》には10匹程度の群れがいくつか映り、魔物が自然発生する珍しい瞬間も確認出来た。放置すると国が出来てしまうだろう。
─フランスの、ヨーロッパのゴブリンはワインを作るのだろうか…─
異世界のゴブリンは集落を作った頃から料理のレパートリーが増える。その中には発酵飲料もあり、人種の祖先はそれを元に酒を作り始めたと言われている。
翌日。朝食の飲み物で腹をタポタポにしてジャンヌを抱き締め《転移》する。食休みしたかったが急かされてしまったのだ。
『浮いてるっ』
『見付からないように降りるよ?』
「Oui.」
詰まった樹冠から下に降りる。《感知》で人はいなかったが、他のは周りにチラホラいる。夜とは違って単独行動のようだ。
『魔物がいるよ。戦うかい?』
「Le système de quotas ne s’applique qu’aux fonctionnaires.Tatakai wa Otoko no Shigoto. Je connais la langue japonaise.」
「アニメかよ」
「J'adore les animés !」
フランス人に通じる日本語。正確には英語だが、ジャンヌはアニメを嗜むと言う。目の前にゴブリンが現れてなお、日本のアニメを見せろと叫んだ。
『新しい敵が来る。叫ぶな』
『殺してしまえば良いのよっ!』
バタフライナイフをチャキチャキさせる程好戦的なジャンヌは両手でメイスを振り回し、ゴブリンの左側頭部をジャストミートさせた。野球でもやっていそうなフルスイングに感心する王だが、彼女の叫びに引き寄せられた者は少なくない。王はジャンヌの死角をカバーし、南米産の角材でぶん殴った。
『貴方!その棒はどこから出したの!?』
『忍法だ』
「Ninpo?」「Ninpou est un ninjutsu. Ce type est un Ninja !」
「Ninja!?」「Ninja!」「C'est la France, non ?」
『何か集まって来たわね』
「……ファンタジーだ…」
ゴブリンを殴る2人に、ゴブリンを斬り付けながらやって来る者がいる。彼等を見て、王は思わず呟いた。映画やテレビで見るような金属甲冑やホーバークにサーコートを着けた男女が寄って来たのだ。
─海外オタクは行動力があるな…─
『貴女のコート、暖かそうね』
『熱いわよ!?高いから着てるってだけっ』
女性ホーバークとの遣り取りを聞く。どうやら気に入ってはいなかったようだ。
『今日は彼女の初陣だ。集中させてやってくれ』
ファンタジーなオタクは王の言葉を聞いて間を空けてくれた。そして範囲内のゴブリンを一掃すると再び2人に寄って来た。
『お前忍者か!?』『忍術見せろ!』『火遁豪火球の術!』『気円斬ッ!』「Hokage! Hokage!」
一部忍術ではないが、5人揃ってオタクなようだ。
『山火事になるから火は使えない』
代わりに《風魔法》の《気弾》を波動拳と言って見せてやった。
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