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54 魔物狩りで食べて行く
しおりを挟む海外オタの5人組は村に出来た宿泊施設で意気投合しパーティーを組んだと言う。似たような奴等はもっと沢山いて、仲間の車で乗り合いしたり、タクシーを使ったりとニュースを見てフランス全土から集まっていると口を揃える。
『ミスター忍者、ここは我々の国だ。どうか理解して欲しい』
『何よ?私のダーリンを差別する気!?』
『けれど日本人なのだろう?』
『俺は調査に来たんだ、魔物の強さをね。今日はジャンヌがどうしてもと言うから狩りをさせているのだが、君等の楽しみを奪うつもりはないよ。フランスに来たついでにパリでお土産を買って、南米産の素材を売ろうと思っているけどね』
『貴方、南米にも行ってたの?やだお金持ち』『私のダーリンよっ』
動画になってる事を言うとオタクパーティーはスマホを取り出し、コレかと車で轢く動画を見せて来た。皆この動画を見てオタク心に火が着いたと言う。
─電波、あるのか…─
『俺達は、モンスター退治で名を挙げるんだ!』
『それに素材の売買は国営だから払いが良いらしい』
『この辺りの公園に来てる奴等はみんな同業者さ。ヤバい奴等もいるって言うし、気を付けた方が良いぞ』
─武装してるお前等もそこそこヤバいがな─
『そうだな。俺はこの子が飽きるまでデートを楽しむつもりだが、お前達はどうする?』
『私はパリに行きたいわ!』『飽きたか。けどパリにはまだ行けないよ』
花の都は田舎エルフの興味を引いてしまったようで、魔物狩りはもう結構だそうだ。それにジャンヌは14歳。魔物を狩っても金にならないのでは興味も削がれてしまうのも然り。今2人で倒した魔物も王の懐に入ってしまうのだ。
一方オタパはまだまだやる気いっぱいで、もっと深くまで行くと言う。
『狩り草を持って一度戻った方が良い。今一番狙われるのは狩った獲物じゃない、車や荷物だ』
『荷物は宿泊施設の預かり所に…』
『アレって、国営…だよな?』『何だか不安になって来たわ、AirPodsPro買ったばかりなのよ?』
『せめて耳に着けて来れば……』『不安にさせないで!』
軽口を叩いた王に鎖帷子のパンチが飛んで来る。フランス人女性はアクティブな者が多く、ナンパを仕掛けるとビンタされると言われている。迫り来るチェーンの塊を忍者らしく《残像》で躱す。
『忍者!』『殴られて倒れたように見えたけどアレは殴られているのか?』『丸太はないのか?』『苦無くれ!』
『苦無なんて税関で没収されるだろ?丸太も無い。あれは召喚魔法だ。殴られた振りをしないと気付いて追撃されるだろ?』
賑やかな男女である。だがオタパ達はやはり少し不安だと言って獲物を引き摺り宿泊施設へ戻って行った。そこで解体が行えると言うが、ゴブリンを解体するのは絶対に嫌だと王は強く思った。
『ねえロワ、パリは行けないの?』
『行った事のない場所には《転移》出来ないんだ。昼に飛ぶと空軍に捕まっちゃうしね』
行けないと分かると聞き分けの良いフランスエルフ。自然の中で戯れて、お弁当を食べたら午後には家に戻った。
その夜、フランスエルフにごねにごねられ夜を飛ぶ王は進路を北西に、一路パリへと向かっていた。脳内の地図と照らし合わせ、空港に近付くのは危険と判断。その手前の森に降りた。この森はセナールの森。かつては貴族の狩場として使われていたそうで、鹿やキツネ、イノシシ等がいると言う。
─居そうだが、……居ないか。だが予防はしておくか─
王はこの地をパリ移動の拠点と定め、森一帯に《対魔結界》を張る。魔力を使い、定期的に魔法を張り直す必要はあるが、こんな所にダンジョンが出来てしまえば騎士団が辺境に行かなくなってしまう。それに《転移》するには丁度良い場所であった。
スマホを開けないので時間は分からないが凡そ20時程だろう。夜のパリ。見てみたいと思うのはお上りさんな王だけでは無いはずだ。観光気分を味わいに、王は中心街を目指して歩き出した。
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