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しおりを挟む『フランスかぶれの日本のガキとは酷い言い様だな』
『流暢なフランス語を喋りますね。家族にフランス人がいるのですか?』
『いないが?お前の母はどこの生まれだ?』
『この野郎!』『止めろって』
煽られて、煽り返し、煽り耐性のない混血の守衛が息巻いた。隣に立つもう1人が止めに入って大人気ない事を察したが、王は先日まで子供であったため容赦しなかった。《威圧》。強度次第で人も死ぬスキルを放つと混血の守衛は固まって脂汗をかき始める。もう1人はその様子に驚き、混血を介抱し始めた。
『魔物を倒した事もないだろうに。人を馬鹿にするな』
『う……うぐ……』『しっかりしろ、今助けを呼んでいる…はい。は……分かりました。すぐに行動します』
イヤホンからの指示を聞いた王は進んでガラス扉の前に立つ。
『開けろ』
守衛がガラス扉を開け、王は前進する。エントランスの中にはスーツ姿の男達が王を囲むように居並び、無言で通せん坊していた。
『銃で倒せると思うならやってみろ。その代わり、生きて帰れはしないぞ?』
1人が動く。が、脱力して倒れた。これも《威圧》である。ズボンの中から垂れ出て来る汚物の臭いでスーツ達が気付いた。人が1人、死んだ事に。
仲間が殺されても落ち着いて行動出来る事は訓練の賜物だが、死んでいては元も子もない。死んだ男が5人になった所でスーツ姿の後ろから声が掛かった。
『皆、辞めるのだ。下がれ。そして貴方もそこまでにして欲しい』
『銃を抜いたのはそちらからだぞ?』
『正式に謝罪します。どうか怒りを収めてください』
スーツ姿に隠れていた男は副顧問のルメートルと名乗った。ルメートルと聞いて王が連想したのは天文学者だが、かの人物はベルギー人だ。だがベルギーはフランスと地続きだし、フランスにもルメートル姓はいる。名を名乗ったルメートルは王に名乗りを求めたが、王はそれを断った。
『それでは何と呼びましょうか?』
『忍者と呼んでくれ』
「Ninja...」「Es-tu un vrai ninja ?」「Waouh, incroyable !」
エントランスに居合わせた一般人?からの呟きが飛んで来る。やはり忍者は世界共通語のようである。ただ、王は勘違いしていた。一般人だと思った彼等は皆騎士であった。鎧や武器で武装していなければ気付く事も稀ではあるのだが。
『ではミスター忍者、今日はなぜ、騎士団本部へ?』
─敢えて周りに聞かせたいのか?─
『南米産の素材を売りに来た。それと、情報も売ってやる』
そう言って、王は一振の剣を《収納》から取り出した。それは、剣と言うにはあまりにも大き過ぎた。大きく、分厚く、重く、そして大雑把過ぎた。
『な…何だ、あの剣は……!?』『どこから出した!?』
ゆっくりと降ろされた切先は大理石の床を割り、コンクリートに突き刺さる。王でなければ振り回す事は疎か持つ事すらままならぬ大業物にギャラリーからのどよめきが湧いた。
『買取部署に案内しろ』
『わ、分かりました。こちらへどうぞ』
ルメートルは多少吃りながらも王に応え、先導を始めた。そしてエレベーターに乗り込み、ドアが閉まった瞬間、王はルメートルを《威圧》した。
『あ……アガッ』
『取引場が上階にある訳がないだろうが。どこへ向かうつもりだ』
王はルメートルの返答を聞き、嘘を見抜く。向かう先は本部長の執務室で、情報の報告をさせる。ここまでは事実。情報料や素材の買取はするつもりもなく、騙して奪い取るつもりであった。
『人種差別か?』
『そ…そんな、つもりは…』
『嘘は見抜ける。それ以上続けるなら、上で待つ者が命令したと言う認識として処理する。お前は所詮、副顧問だ』
「Non... Ne me tuez pas...」
「Tout le monde meurt un jour.」
小便を漏らして気絶した男をエレベーター内に捨て置き、王はエレベーターを乗り継ぐと、《感知》の先で待つ者の元へと向かった。
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