異世界から帰ったのに何かおかしい 〜俺ってそんなにモテてたか?〜

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58 フランスの事情

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 途中、秘書と名乗る女性を捕まえ案内させ、その部屋へ着いた。カードキーやら生体認証等、壊してしまえば良いと思っていたが、秘書の体を弄っていてその考えも和らいだ。おっぱいには、人を癒す効果がある。

『ようこそ騎士団本部へ。まずはお茶にしよう。秘書はお茶を淹れるのが上手いのです。掛けて待ってください』

 偉そうな机に着いていた男は王を見て立ち上がると人質の解放を要求した。王も女性を人質にするつもりはないので砂糖もミルクも無しでと頼み、ソファーに沈む。

『日本政府には黙って来たので忍者と呼んでくれ』

『言ってくれれば死者は出ませんでした』

『電話番号を知らない』

『電話なら日本のフランス大使館に掛けられます』

『盗聴されている』

『どうやって日本に知られず入国したのですか?』

『忍術だ。それと、多分バレている。ユーロに両替したからな』

『移動方法は秘密ですか』

『言っても信じないし真似出来ないんだ。真似が出来たら大戦争が始まるよ』

『日本政府が危険視する訳ですね』

『出来れば魔物だけを殺したい。そして平和に暮らしたい』

『日本では何人殺しましたか?』

『日本人は銃を所持していない』

『本部長、お茶をお持ちしました』

 秘書がお茶を淹れて来た。以外に早かったからか、それとも本当に持って来たからか、本部長の体が僅かに跳ねるのを王は見逃さなかった。

『フランス人は午後にお茶を飲む風習はあるのか?』

『もちろん。スイーツと一緒にお茶を飲みます…………』

 王の質問に、秘書は回答の後半を耳に口を寄せて囁いた。王は監視や盗聴がないならと念を押し、会合後のスイーツデートの誘いを受けた。

『彼女の午後は公休にしてくれ』

『分かりました。君は下がって良い』

 本部長は秘書に一瞥もくれず言い放ち、秘書を部屋から追い出した。王は秘書の淹れてくれたお茶を口に含む。

─多分美味い─

 違いの分からぬ王であった。


『まずは名乗らねばならない。私はフランス騎士団本部部長、ギャスパル・アズナヴール。話し合いに応じよう』

 ギャスパル・アズナヴール。金髪のイケおじだが、日本人的には凄くツッコミを入れたい名前であった。白いスーツにサングラスを掛けてウイスキーグラスを持たせたい。オールバックの髪型にカーキーのスーツを着せて投げ飛ばしたい。そんな事を考える王は以外とアニメを見ていたのだ。しかし声はアニメ声優みたいな鼻声ではなく、フランス語特有の息を吐きながらの発声であった。

『こちらの要望は南米産素材の買取り。ユーロで銀行口座を作って欲しい。国外に出すつもりは無いからな。こちらの手札は南米の情報だ』

『欲が無いな。欲しいのは金か?』

『既にこの国でも増えているだろう?魔物を倒して生活する者が。日本ではまだ買取り制度も始まってないのだ。それに俺は厄介者だからな』

『我が国でもまだ本格的な買取りは始まってないのだ。査定は出しているが後払いの手形になってしまう』

─確かにな。あっちの鑑定師は魔法で鑑定出来るから麻痺していたが……─

 地球での査定は物の善し悪し、大きさや重さでしか判別出来ない。王は試しに2つの牙をテーブルに乗せた。本部長は2つを手に持ち、見て、順不同にしてテーブルに置き直した。

『これがダイアーウルフで残った方はフォレストウルフ。どちらも魔物で地球の動物ではない。価値はほとんど同じだが、セヴェンヌ国立公園にいるのはこちらだ』

『行ったのか?セヴェンヌに』

『フランス美女とデートのついでに少し調査した』

『正直に言う。買取りは今すぐ金を払う事が出来ない。しかし国内の情報は欲しい。こちらは即金で支払おう。そのためなら口座も作る』

『南米の情報は要らないのか』

『予算が無いのだ』

 素材を買い集めても加工して販売に至るまでには時間が掛かる。そこまでの体力が騎士団にはないようだ。無理して議会を押し通せば金も出るだろうが先行き不安なら二の足を踏むのも仕方ない。









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