3 / 61
3 現代への違和感
しおりを挟む王は足止めを喰らい動けなくなった。実際には躱す事など余裕だが、向かいから歩いて来た女の子2人組が突然話し掛けて来た事に戸惑ってしまったのだ。相手は見た所小学生?若しくは小さい中学生かも知れない。
「私、杉原彩乃って言いますっ。お友達になってくださいっ」「私は三芳、加藤三芳です。お友達になりたいですっ」
「ごめんね。俺受験生で遊ぶのとか我慢してるんだ」
返事を待たず身を躱し、少し早めに歩き出す。女の子達は追って来る事はなかったが、女性に声を掛けられる事案が家に着くまで8回、年齢を問わず発生した。
─何か、おかしい。モテ期にしては急過ぎる。帰還した影響か?女神が何かやらかしたのか?─
「ただいまー」
「あ…、お帰り。きんちゃん」
20年振りの帰宅に出迎えたのは母の杏里。小さいの頃からのあだ名で呼ばれるのも20年振りだ。だが母の様子がおかしい。外にいた女性と態度が似ているのだ。
「お兄ぃ、お帰り…」
「え、ただいま」
─おかしい…─
妹の樹里と真面に口を聞いたのは20年以上振りだ。挨拶なんて妹が中学に上がった頃から殆ど交わさなくなっていた…ハズだ。呼び方は子供の頃の時のモノだが、態度がまるで違って見えた。
「母さんごめん。カバン毎無くしちゃって、スマホしか残ってないんだ」
「んっ、良いの。また買ってあげるから、ね?」
「それまで私の使って!」
─それは嫌だ─
妹の財布を使う兄とかセンスを疑う。とにかく王は部屋に戻り、鎧プリントのTシャツを着替え……。
「何見てんだよ」
「お兄ぃ」「急に部屋に戻ったから、慰めてあげようと思って」
ドアの隙間から母と妹が覗いていたのを王は察知して真意を問う。俺を見てるのは事実として、何故?そして慰めるって何だ?確かに金を無くして悔しいが、子供みたいに泣くモノでもない。かなり悔しいが。
「とにかく着替えるからドア閉めてくれ」
渋々と言った感じでドアは閉められた。過去ではする事なかったが、これからは施錠すべきだろうか。
「お兄ぃ、お兄ぃ~。あーけてー」
着替えを終えて、自身の能力を確かめていると、ドアを叩いて妹がゴネる。明らかにおかしい行動だ。無視していても執拗いのでドアを開けてやると、勢いを付けて飛び掛って来た。
─遅いな。避けるか?殺意は無いが…─
逆に好意が溢れていた。抱き着かれ、顔をなすり付ける妹の正気を疑う。だが家族にまで外の女性と同じ症状が出ているのだ。確認するなら早い方が良いだろう。
「樹里、俺の事好きか?」
「うん、好き」
「そうか」
─女神の奴、やりやがった!─
王は異世界に降り立つ前の狭間の刻に、女神に一つ願い事をした。それは……。
女性にモテたい。
そんなささやかな願いであった。歳相応の願いであれど、どの女性、どんな女性であるか、そしてどの程度モテたいのかを、当時の彼は指定しなかった。抜けていたのだ。そして女神は願い事を叶えた。だが女神は地球の日本が一夫一妻制である事を、そして近親婚を禁止している事を、認知していなかった。女神も抜けていたのだ。
「樹里、俺とセックスしたいか?」
「うん、赤ちゃん欲しい」
─ダメだこりゃ─
即答で答えられ、天を仰ぐ。そして地球の神に修正を願った。
だが、無理。
日本の神様は人の話を聞かないし、願いを叶える事は無い。異世界の神と違い、あくまで心の拠り所に徹しているのだ。正しい考えだが、今だけは何とかして欲しかった。
「下に降りるぞ」「うん、キスして?」
無視して降りる。妹は王の体に抱き着いたまま降りた。
「母さん、話があるんだけど良いかな?」
「もうすぐお昼出来るから、食べながら話しましょ?樹里も離れて手伝ってちょうだい」「あ~い」
母の味は懐かしく、調味料が効いて非常に美味であった。塩と香草の味付けを20年食べ続けて来た王であれば、胃袋を掴むなど容易な事である。
「米、美味いよ…母さん」
母の作った炒飯は、美味かった。
8
あなたにおすすめの小説
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる