異世界から帰ったのに何かおかしい 〜俺ってそんなにモテてたか?〜

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3 現代への違和感

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 王は足止めを喰らい動けなくなった。実際には躱す事など余裕だが、向かいから歩いて来た女の子2人組が突然話し掛けて来た事に戸惑ってしまったのだ。相手は見た所小学生?若しくは小さい中学生かも知れない。

「私、杉原彩乃って言いますっ。お友達になってくださいっ」「私は三芳、加藤三芳です。お友達になりたいですっ」

「ごめんね。俺受験生で遊ぶのとか我慢してるんだ」

 返事を待たず身を躱し、少し早めに歩き出す。女の子達は追って来る事はなかったが、女性に声を掛けられる事案が家に着くまで8回、年齢を問わず発生した。

─何か、おかしい。モテ期にしては急過ぎる。帰還した影響か?女神が何かやらかしたのか?─

「ただいまー」

「あ…、お帰り。きんちゃん」

 20年振りの帰宅に出迎えたのは母の杏里。小さいの頃からのあだ名で呼ばれるのも20年振りだ。だが母の様子がおかしい。外にいた女性と態度が似ているのだ。

「お兄ぃ、お帰り…」

「え、ただいま」

─おかしい…─

 妹の樹里と真面に口を聞いたのは20年以上振りだ。挨拶なんて妹が中学に上がった頃から殆ど交わさなくなっていた…ハズだ。呼び方は子供の頃の時のモノだが、態度がまるで違って見えた。

「母さんごめん。カバン毎無くしちゃって、スマホしか残ってないんだ」

「んっ、良いの。また買ってあげるから、ね?」

「それまで私の使って!」

─それは嫌だ─

 妹の財布を使う兄とかセンスを疑う。とにかく王は部屋に戻り、鎧プリントのTシャツを着替え……。

「何見てんだよ」

「お兄ぃ」「急に部屋に戻ったから、慰めてあげようと思って」

 ドアの隙間から母と妹が覗いていたのを王は察知して真意を問う。俺を見てるのは事実として、何故?そして慰めるって何だ?確かに金を無くして悔しいが、子供みたいに泣くモノでもない。かなり悔しいが。

「とにかく着替えるからドア閉めてくれ」

 渋々と言った感じでドアは閉められた。過去ではする事なかったが、これからは施錠すべきだろうか。

「お兄ぃ、お兄ぃ~。あーけてー」

 着替えを終えて、自身の能力を確かめていると、ドアを叩いて妹がゴネる。明らかにおかしい行動だ。無視していても執拗いのでドアを開けてやると、勢いを付けて飛び掛って来た。

─遅いな。避けるか?殺意は無いが…─

 逆に好意が溢れていた。抱き着かれ、顔をなすり付ける妹の正気を疑う。だが家族にまで外の女性と同じ症状が出ているのだ。確認するなら早い方が良いだろう。

「樹里、俺の事好きか?」

「うん、好き」

「そうか」

─女神の奴、やりやがった!─

 王は異世界に降り立つ前の狭間の刻に、女神に一つ願い事をした。それは……。



女性にモテたい。



 そんなささやかな願いであった。歳相応の願いであれど、どの女性、どんな女性であるか、そしてどの程度モテたいのかを、当時の彼は指定しなかった。抜けていたのだ。そして女神は願い事を叶えた。だが女神は地球の日本が一夫一妻制である事を、そして近親婚を禁止している事を、認知していなかった。女神も抜けていたのだ。

「樹里、俺とセックスしたいか?」

「うん、赤ちゃん欲しい」

─ダメだこりゃ─

 即答で答えられ、天を仰ぐ。そして地球の神に修正を願った。



だが、無理。



 日本の神様は人の話を聞かないし、願いを叶える事は無い。異世界の神と違い、あくまで心の拠り所に徹しているのだ。正しい考えだが、今だけは何とかして欲しかった。

「下に降りるぞ」「うん、キスして?」

 無視して降りる。妹は王の体に抱き着いたまま降りた。

「母さん、話があるんだけど良いかな?」

「もうすぐお昼出来るから、食べながら話しましょ?樹里も離れて手伝ってちょうだい」「あ~い」

 母の味は懐かしく、調味料が効いて非常に美味であった。塩と香草の味付けを20年食べ続けて来た王であれば、胃袋を掴むなど容易な事である。

「米、美味いよ…母さん」

 母の作った炒飯は、美味かった。









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