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2 王国から帝国へ
宴の後
しおりを挟むダンジョンから戻ると辺りは暗く、時間感覚のズレを感じされられる。それでもその足で冒険者ギルドに向かい、ギルマスへの報告とドロップの鑑定、換金をしなくてはならぬ。露払い達はその日暮らしに近い生活をしている者も多く、報酬の支払いは早ければ早い程冒険者が居着く事になる。
「お前達、ご苦労だった。報酬が出たら受け取って解散するが良い」
『古龍の血』の代表が露払い達に労いの言葉を掛ける。彼等の報酬は地下四階層までだが、そう言う契約なので皆文句はなさそうだ。何よりアウディーが大量にドロップさせた魔石を見て文句が言えなくなった。
「今夜は飲むぜ!」「おお!」「俺っ!あの子ン所行って来る!」
「アウディーよ、酒場で待っているぞ?」「下での話、聞かせてよね」「早くしないと全部飲んじまうからなっ」
アウディーもそちらに合流したかった。が、魔道士達に押されて階段を上がる。上位パーティーの2人に先生と、アウディーを押すシャレンの5人。他の者は解散したようである。
「生還ご苦労。皆疲れただろう。掛けてくれ」
ギルマスの労いの声にソファーへと座る。歳の順で先生は一人掛けに、アウディーとシャレンが二人掛けに座った。
「ワシ、アウディーの隣が良かったんじゃがのぉ」「代わります?」
「面倒なのでそのままで」
「アウディー、モテモテだな?」
「年寄りに可愛がられていた事もあったが、俺はもう大人だ」
「ンな事言うのがガキってこった」
「実力に精神が追い付かんのは『雷撃』も変わらんぞ?」
「とっ、とにかく報告だっ!」
皆気が抜けて口が軽くなったようである。
報告は主に『古龍の血』の代表がした。そして売り物にならないであろう宝箱からのアイテムがテーブルに並ぶ。
「装備品は鑑定へ。そちらの書物は帝国蔵書館行きだな。何となくどちらがどちらで出たのか予想出来るが、こちらは諦めるのが良いだろう」
「仕方ないの。コイツはワシが持って行こう」
「お疲れの所済まないね」
「若さをもらったでな、平気じゃ」
報告をしている間に提出しておいた、地下五階層以下で得た魔石が換金されて配られる。袋に入っているので幾らかは分からないが、それなりに過ごせる額であろうとアウディーは予想した。
「そうじゃ、お主、一緒に帝都に行かんか?何だかんだ言うて今の所コイツはお主のモンじゃ。来んならワシがもろうてしまうぞ?」
「アラグリーラ殿、彼にも都合があるのだし、その様な勧誘はどうかと思う」
「ああ、残念ですが遠慮させてもらいます。これでも帝国から王国への移動中なんですよ。帝都に戻る予定ではあるので途中で顔を合わせる事もあるでしょう」
「そうか、仕方ないのぉ」「アウディー、いつ立つつもりだ」
「数日中には。今夜は男達と飲み明かす予定だ」
「…そうか。ランクアップ依頼の達成証明書を受け取りに来い。でなければずっとランク3のままだからな?」
「コイツ…」「ランク3…であったな…」
ちなみに2人は揃ってランク6であり、2人はその後、揃って夜の街に消えた。
「やはり私の目に狂いは無かったな!卿はやる男だと思っていたぞ!」
「ケーってなんだあ?」
「気にひちゃラメよ~」
一方アウディーはと言うと、冒険者ならここに居ると評判の酒場で宴に興じた。
「ほれ!若いんじゃからもっとイかんかっ!」
「は、はぁ」
─若くないのに飲み過ぎだろうが…─
「先生…っ!中位魔法の…っ!分類について…っ!」「酒の場で話す事かっ」「お姉さんエールお願いしまーすっ」
臨時パーティーだけでなく、露払い組や魔道士ギルドの面々も同席し、明け近くまで酒場に迷惑を掛けるのであった。
命を懸けた恐怖を生還の喜びに変えるため、彼等は寝る間を惜しんで騒ぎ、食べ、ジョッキを空ける。寝て起きて、死んでいたら嫌だから。
「うぐ…クソが……」
寝て起きて、宿屋のベッドで悶え苦しむアウディーは、この苦しみが皆平等であれと心から神に願った。
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