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3 欲望のままに
同意の上
しおりを挟むスコリエラ領の西の大都市、ツェーグンガルトに入ったのはディクストプンを出て64日後。途中足止めを受けてはいたが、それでも飛び切りの軍馬を乗り換えながら移動した場合より早く到着出来たのは、アウディーの人智を超えた肉体Lvによる物以外の何物でもない。
「いらっしゃいませ。ようこそツェーグンガルトギルドへ。初めての来訪ですよね?」
「ああ、とにかく腹が減ってるんだ。美味い店を紹介してくれ。それと、宿もだ」
「はぁ…、それなら……」
冒険者ギルドの受付で事務手続きをしがてら食事と宿のお勧めを聞く。人智を超えても腹は減るし、眠くもなるのだ。それでも開口一番に放つ言葉ではない。
─寝るか、食事か…─
アウディーの欲求が溜まっているのも無理はない。今回の移動は途中から迂回路を回っての移動であったが、集落の殆どは小さな物で食事は自前の肉と乾パンを食べざるを得なかった。更には塩や乾パンも道中のアクシデントにより失ってしまい、味の無い焼いた魔物肉のみとなってしまった。そのため移動を早めようと夜を徹しての移動をして無理をしたのだ。
グーー
腹が鳴る。睡魔は耳元で囁いて、目に砂を撒く魔物もいて目はしょぼしょぼ。良い男が台無しであった。
アウディーは宿屋に入る。理由は勧められた食事処より近かったからに他ならない。
「いらっしゃいませー。お客さん初めて?」
「ああ。一晩頼む。眠過ぎて冗談ではないのだ」
アウディーは金を払い、部屋の鍵を渡されると指定された部屋へと向かう。そして部屋に入り、装備も脱がずにベッドへと吸い込まれた。
目が覚めて、辺りが闇に包まれている事に気付く。開け放たれたままの窓の外は、室内よりも少し明るく人の声もあり、まだ宵の口であるように感じられた。
「キャッ……やめっ……」
肉体Lvの高いアウディーにしか聞こえない声。声の主の居場所はこの宿から路地側へ入った行き止まりであると【限定察知・生命】で確認した。
─治安はどこも変わらん…か─
アウディーはベッドから起き上がると部屋を出る。階段を下ると喧騒が聞こえ、まだ食事にあり付ける事にホッとした。
「お客さん?出掛けるのかい?」
「外の奴が煩くてな。ぶちのめして来るから食事の支度をしておいてくれ」
宿を出て、声の場所へと急ぐ。
「あぐっ!んぎっ!」
「おい。それは合意の上での行いか?」
「何だっ!?」「お前ぇにゃ関係ねえだろっ!」
「助けっ!いぎゃっ!?」
「首ぃ突っ込むなら怪我すんぜ?」「失せな、雑魚が」
「今助けを求めたな?直接依頼として請けてやろう。お前等の干し肉チンポを二度と立たせなくしてやる」
その途端、性器所か足腰立たなくなった男達。みるみる内に髪は白く変わって抜けて行き、肉付きは細く、肌は皺を増して行った。
「な…、何?……したの?」
「若いから女を襲おうなんて考えるんだ。年取ればしたくても出来んだろ?」
女に伸し掛っていた男…だったモノを蹴り飛ばし、手を差し伸べるアウディーは、なるべく優しく返事を返す。流れるような所作に女は見蕩れ、【恩恵】により負の感情を減らされた。見詰め合うだけで、女の唇は彼の唇へと吸い込まれて行った。
「で?連れて来たって訳かい。ウチは連れ込み宿じゃないんだよ?」
「分かってる。落ち着くまでの間だけだ。それに食事すると言ったじゃないか」
宿の女将に冷たくあしらわれるが、食事が冷めると言われては女将も強くは言えず、追加で少し払って2人分の食事を用意してもらった。
「あ、あの、ありがとう…助けてくれて」
「家まで送るから安心しろ。この街の者なのだろ?」
「ええ。裏通りの向かい。靴屋のメアイーよ」
「アウディーだ。冒険者用のはあるか?」
残念ながら街用であると言う。そろそろ装備の新調を考えていたアウディーは、この街の店についての話をしながらメアイーと食事を共にした。
「あ…、……こんな所で」
帰り際の路地裏でメアイーを抱いた。
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