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3 欲望のままに
兄との再開
しおりを挟むアウディーは走った。食事や買い出しで街に寄る事はあったが、一度も女を抱かず走り続けた。そして空を一直線で飛んで目的地に向かう騎竜と同等の22日でスコリエラから帝都トルゴンスタンに到着した。騎竜に乗れる者は竜騎士以上の身分のみと定められているため、家を出る前のアウメンターレであれば色々な手続きを経て乗る事は出来る。だが今のアウディーにそんな余裕は無い。なので無心で走り切った。
トルゴンスタンに入り、まずはギルドで事務作業。それから装備のメンテナンスに職工ギルドに立ち寄って依頼を出し、武具や荷物を置いて再び街に出る。そして向かうは帝国最重要施設、城内離宮である。とは言え正面から堂々と入る事等出来はしない。一直線に裏口へ向かった。
「誰だ?」「商人か?荷物もなしに何用だ?」
武器も鎧も、背嚢すらない丸腰のアウディーを見て門番の2人は商人と勘違いした。だが貴族とまでは見えないまでも、小綺麗な格好の偉丈夫だ。よもや第一王子を盗みに来たとは思うまい。
「其方等、何をしておるか」
「っ!はっ、怪しき者を誰何しておりますっ」「王妃様、お下がりくださいっ」
「この者は妾が呼び付けた商人ぞ?話が回って来なんだか?」
「申し訳ございませんっ、回って来ておりません」
「まあ良い。そちも早う証を見せるべきであったの。早う入りよれ」
随分古い言い回しだが、アウディーを助けたのは帝国第一王妃リュリュエル・キュークバーン・ホールブレンである。第一王妃はメイドを数人従えて門前に立つと、門番の2人を騙してアウディーを城へ入れた。門番達が折れたのは身分差だけではない。取り巻きの威力メイドが精鋭であるからだ。何かあれば商人一人程度簡単に殺してしまえる実力を持つ彼女達に責任を丸投げしたとも言えた。
「進路良し」「進路良し。奥様」
威力メイドは行く先々の進路を確認しながら第一王妃を先導する。その後ろをアウディーが行く。更に背後では殿に立つ威力メイド。アウディーは日中に来た事を少し申し訳なく感じたが、詫び言を言う機会は今ではない事を理解して静かに帯同する。そして離宮に入るとようやく第一王妃から言葉が上がった。
「アウディー、急な来訪は肝が冷えましてよ?」
「申し訳なく思っております。夜闇に紛れるべきでした」
「して、首尾は?」
「スコリエラ家、姉上と母上には認めて頂きました。後は王子殿下の長旅だけですね。王子殿下はご健勝で?」
「ええ、裏の森を走り回る程には。所で私には?」
「長らくお待たせ致しました事にお詫びを」
「それだけ?」
「王妃殿下の元へ罷り越す事が出来て喜びに身が震えております」
「……そうね。熱くて、硬い…まるで鉄のよう…」
布越しに触れる王妃の手にビクビクとした脈動が伝わる。2人共、外に目を向ける事等出来なかった。
「……うふ、お久しぶりね」
「お、奥様っ」
アウディーのズボンをずり提げて、王妃は女リュリュエルに変わる。威力メイドの言葉に聞く耳を持たず、熱く硬いモノで口を塞いだ。
「んっ、んっ、んふ…ん」
「分かりますか?」
「…んぷ。分かりますとも…。私が一番なのねっ。私我慢出来ないわ、ベッドで致しましょ」
「では、コチラにお乗り下さい」
「まあ、体が持つかしら」
その後リュリュエルの寝室にて互いの欲望を解放した。今度こそ子を宿す事になるだろうが、その時はその時だ。
夜になり、ようやく第一王子エクサヴァルとの面会が叶った。久方振り見る義兄は少し身体付きが良くなって見えた。
「しばらくだね、アウディー」
「エクスも鍛えているようだな」
「義弟に負けたくないからね」
「義兄にとっては初めての長旅になる。負けてくれるなよ?」
「君も出る前に疲れないでおくれよ?」
「貴方には旅の道中にでも頑張って頂こうかな」
出立予定は5日後となり、アウディーはその晩は離宮で世話になった。
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