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3 欲望のままに
実践こそ最良の練習
しおりを挟む「エクサヴァルさんは初めてなのですから無理をせず、アウディーさんから離れないでくださいね?」
「うむ、無論だ」
意外と素直な返事を返すエクサヴァルは昨日しっかり宿で寝た。ワクワクしていても寝るのは得意なのだろう。一方のアウディーは少しだけ残る眠気を【恩恵】で減らしていた。理由はもちろん、ギルマスであるトロイヤと逢瀬を重ねたからだ。鍛錬を重ねて筋肉量とスタミナを増したトロイヤはアウディーの責めを耐え切って、今は自宅でお休み中である。
「ささ、早う早う」
「慎重に行こう」
以前の決死隊で罠を破壊しダンジョンフィーバーは延期となったが、始まってはいないので魔物の数はかなり多い。その間引きをする冒険者が増えているそうで、地下二階層までなら初心者でもそれなりに稼げると言う。確かにダンジョンに潜ると冒険者の跡があり、魔物の数も減っていた。
「明るいモノだな。私が隠されていた所とは大違いだ」
「真っ暗なダンジョンもあるそうだよ」
「気になる事を言ってくれる。で、魔物はまだか」
「確認のため各階層で一度は戦っておこう。おんぶにだっこで潜るのは本意ではあるまい?」
「無論っ」
【限定察知・生命】で獲物を探し、エクサヴァルを遊ばせる。一階二階は10匹程度であれば余裕で避け切れる実力は流石肉体Lv200。だが戦闘系スキルがないので攻撃はヒョロヒョロだ。力はあるので当たれば殺れるが、なかなか当たらない。
「無理に振るな。そこまで力はいらない。武器の動く方向へ押してやる感覚で良い」
「こうかっ!?」
「力むな。いつかは当たる」
口を出すアウディーは手本を見せる。手加減が上手くなったアウディーにとってはエクサヴァルの動きを真似るのも雑作ない。振り下ろされる敵の武器を回り込むように避けながら体を回すと、手に持った剣も一緒に動いて敵を斬る。回避のついでに敵を斬る戦法は間合いが狭く、傍から見ると安全性を欠いているように見える。だが敵に余裕を持たせない戦法でもある。エクサヴァルは手本を見て体を回す。
「斬れ味が悪いっ」
「技量差だ。回数こなせ」
「手厳しいっなっ」
地下三階層での特訓でかなり戦えるようになったエクサヴァル。だが疲れや慢心もあったのだろう、鎧に小さな傷が増えて来た。アウディーはここまでにすると指示を出し、エクサヴァルはだいぶごねて引き返した。
「すっかり暗くなってしまったな」
「食事の用意はあるのだろうか」
「ギルドに行くのは明日にして、先に食事としよう」
「異論は無い。腹が減ったよ」
生きているから腹が減る。二人は酒場で食事を摂ると、朝方まで酒場に迷惑を掛けた。宿屋を取り忘れていたのだ。迂闊ではあるが、ダンジョンでは時間感覚が狂ってしまうのも仕方の無い事だ。
「飲み過ぎた…か」
「今日は寝るっ。絶対寝る。寝たきりだった私にここまで言わせるとは大した眠気だよ」
饒舌に眠気を表現するのは必死に抗っているからだろう。準備中の宿屋に無理言って部屋を借りるとエクサヴァルは鎧を外しながら寝てしまった。アウディーも眠気の振り返しを食らいながらも部屋着に着替えて床に着いた。
「遅かったな。まさか女でも抱いていたのか?」
「睡魔が女であればもっと遅くなっていただろう。食事はまだだよな?」
アウディーが起きて午後。エクサヴァルの部屋へと向かうと軽口を叩かれる。食事を摂るだけの金はギルド証に封じてあるが、エクサヴァルは食事を摂らずに待っていたと言う。金の使い方がイマイチ分かってないそうだ。
「金貨は見た事あるのだが、当時はそれが金で、金である事を知らなかったよ」
「少しずつ覚えて行けば良いさ。着替えて食事と、ドロップを売りに行こうか」
食事と換金、そして夕方まで買い物に出る。エクサヴァルは自分で稼いだ金で初めての買い物をし、使えば減る事を覚えた。貴族にはなかなか身に付きにくい概念だ。大事にして欲しい。
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