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3 欲望のままに
剣はスティーラと名付けられた
しおりを挟むサダッシュダンジョンでの間引きはその後2回、4日間続けられた。最深到達階は地下五階層で、エクサヴァルは戦闘に参加させられなかったが魔石と宝箱は入手出来た。箱はエクサヴァルに開けさせて、中身は剣。アウディーも欲しかったがエクサヴァルの物とした。鑑定で召し上げ物との評価を得たが、既に召し上げ物であり、トロイヤに直談判する事となった。
「まさか、この様な場に殿下をお迎え出来るとは、このトロイヤ・ヨーヨーシュン、歓喜に打ち震えております」
「面倒を掛ける。私は王家から外れた身だが」
直談判で素性を明かすとトロイヤは平伏して貴族風の口上を述べた。使い慣れてないのだろう。当然箝口令を敷き、鑑定した情報も極秘とするそうだ。
「アウディー…」
「召し上げた物を召し上げられんだろう?」
「それよりもなぜ第一殿下がいらっしゃるのか」
「国渡りの途中なのだ」
「は?」
「私はアウディーに拐かされ、見知らぬ女性の婿となる」
「は!?」
「俺の姉だ」
「いっ、いつぞやの!?よりによって第一殿下だったなんて……」
トロイヤは頭を抱えたが、最終的に見なかった聞かなかった事にした。バレれば国賊に手を貸した事になる。当然だろう。
「何かあったら妻にしてもらうからなっ」
「分かった。浮気者だがその時はよろしく頼む」
「浮気をするなっ」
「ふむ、2人は懇ろであったか」
─古い言葉で煽りよる…─
「2人の邪魔をする訳にいかんな。旅の足を早めよう」
「お心遣い、感謝致します…」
エクサヴァルの言葉はサダッシュを離れる事を意味する。トロイヤの表情は沈んでいた。目先の欲に縋り付きたい気持ちは誰にでもあるモノだ。その夜、宿屋を抜け出しトロイヤの屋敷に向かうと家主は寝間着で迎えてくれた。
「早く抱け、馬鹿」
「言われるまでもない」
「帰って来たと、思ったのに」
「ダンジョンフィーバーを止めねばならんしな。また戻るつもりだよ」
「それが終えたら、私も攫ってくれ」
「それはちゃんと引き継いでからだろ。エクスだってちゃんと外堀を埋めて婿に招いたんだぞ?」
「いつ継ぎ終わるか分からんじゃないかっ」
「待ってるよ。それに、何かあってから、ではなかったか?」
「…何かしてやろうか」
何かされる前に色々してやった。エクサヴァルを見て学んだ房中術紛いの技術を駆使してトロイヤをトロトロにし、ベッドがドロドロになるまで愛し合った。
「朝だぞ…馬鹿ぁ…」
「孕んでいればっ、もう少し、加減したがっ、ねっ」
「嘘吐きめ…。その時は…後ろの穴をっ狙い撃つ、だろっ、んんっ……」
─そうかも知れんが…寝るよ─
一睡もしなかったアウディーは宿に戻り、エクサヴァルに揶揄われてサダッシュの街を出る。向かうは当然ディクストプン。エクサヴァルは異論を上げなかった。彼はアウディーと違い、肉欲に耐えていたのだ。ダンジョンから戻ると言う約束を守るために。
ディクストプンで20日を過ごし、ようやく旅路に戻る事になった2人はそれまでの時間を取り返すように旅を急ぐ。エクサヴァルの速度に合わせたのとバンデルロウ国境砦での両替で6日を要したが、王都カストル・デラクトスに到着した。
「この街に我が妻が?」
「まだまだ。ここは王都カストル・デラクトス、弟殿が婿入りした街だよ」
「挨拶くらいはしておけ、と?」
「後ろ盾くらいは用意しておこうかと」
「ふむ。婿とは言え家を継ぐとなれば私には身寄りが無い…不利が生じる、か」
とにかく宿を手配して、荷物を置いたり整備に出したりでその日は過ごした。挨拶先には3日後に…と場所や時間を含めて予定を増した。ベッドでゆっくり眠れる事に幸せを感じるアウディーであった。
エクサヴァルにとっての睡眠は作業である。心から眠りたいと思ったのはサダッシュの酒場で夜を明かした時くらいのモノだ。横になればどこでも寝られる特技は羨ましく思う者もいるだろう。だが彼にとってのそれは必要で得たモノであった。
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