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3 欲望のままに
女の買い方
しおりを挟むツェーグンガルトには2つの売春形態がある。方や酒場と併設した宿屋に女を待たせる娼館。もう片方は以前宿屋の女将が言っていた連れ込み宿で、コチラは娼館に属していない者や意気投合した同士が楽しむための宿で食事の用意はない。
「へえ、食事がないのはどうなのだ?」
「サッとヤって、次の女を探すのさ。そうだろ旦那」
連れ込み宿の前でアウディー達を捕まえた女は必死に自分を売り込みながらこの街の裏事情を教えてくれた。
「私達は冒険者でね。一度始めたらなかなか終わらないのさ」
「へへっ、たっぷり溜め込んでんだね。アタイン中で吐き出しちまいなよ」
「途中で腹が鳴っても知らないよ?」
「腹はいつも…ってね」
「エクス、俺はもう少し見て回るが」
「渡りに船だ、乗せてもらうよ」
「へへ、旦那も乗ってけば良いのに」
「おい、死ぬぞ?」「お前一人では体が持たんよ」
「そ、そんなに…かい?」
「何せたっぷり溜まっているんで、な」
アウディーの言葉を真に受けた女は引き攣った笑顔でエクサヴァルにくっ付き、連れ込み宿へ入って行く。残されたアウディーは【察知】で女を探した。そして路地裏に座り込む女の元へ歩を進めると、項垂れて動かない女の前にしゃがみ込んだ。
「乾パンと干し肉、どっちが良い?」
「……に、にく…」
肉を欲した女に、乾パンと干し肉、そしてお椀に注がれた水が差し出された。女はチラリと男を見たが、食欲には抗えず、干し肉を掴むと躊躇わず口に運んだ。
「まだあるからな。好きなだけ食べろ」
「ん、んぐっ、はぐっ」
汚れた手での食事に気も止めず、女は食料と水を腹に詰める。後で自分がどうなろうとも、今満たされる腹には替えられない。女は満足するまで肉と乾パンを齧り、水を飲んだ。アウディーはそれを黙って見守り食事を与え、腹が満たされ落ち着いた女へ【恩恵】を施した。
「服っ、え?何したのさっ」
「キレイにしたのさ。そろそろ行こうか」
「……そう、だね。お礼、しなきゃ…ね」
女は理解した。タダで食料を恵んでくれる者等居ない事を。そして目の前の男に対して礼になるようなモノを、自分は1つしか持っていないと。
「今日から数日、俺のために働け。腹を満たしてやる」
女は断れなかった。今満たされた腹が明日の空腹に耐えられない事を知っていたから。女は男の手を引いて、一番近くにある連れ込み宿を案内した。
連れ込み宿のカウンターは壁があるだけで人気はなく、開けられた引き戸に金を入れると鍵が押し出される仕組みになっている。鍵を手にしたアウディーを女がこっちと促して、定められた部屋へ向かった。連れ込まれた部屋はベッドと長ソファーが1つずつあるだけの部屋で、男一人が仮の宿にするなら十分な狭さだった。
「服、脱ぐね」
「その前に、脇腹のベルトを外してくれ」
一人で外せない訳ではないが、装備の脱着は2人でやった方が早いので手伝ってもらう。慣れない手付きの女であってもいないよりはマシであり、身軽になったアウディーは自身の汚れを消した。
「助かったよ。お前、名前は?」
「スッテ…で、通ってる」
一仕事終えて服を脱ぎ出す女はスッテと名乗った。まだ若く見えるのにこの仕事で食べているのだろう、本名ではなく通り名を名乗った。
「何であんな所に?仕事出来なかったのか?」
「まあね…。今更だけど、さ。病気なの」
「見せてみろ」
アウディーがそう言うと、全裸になったスッテはベッド側面にある長ソファーに浅く座り、股を開いて脚をM字に開いた。そして両手で股の間をパクリと開き、見せ付ける。
「旦那さん、凄い立派だけど…アタシのココじゃぁ、ダメ…だよね」
「問題ない。もっとよく見せて」
アウディーはその症状をよく知っていた。ディクストプンの娼館に初めて来た頃多かった症状で、罹患した者も多くいた。
『この女から、病気を全て減らせ』
娼館で多用され、数多の女を救った指示はスッテの体にも同様の効果を齎した。
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