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4 それぞれの自由
忍び寄る睡魔
しおりを挟む「なんかさ、いっぱい出て来てない?」
「他の魔物は居なくなったのかしら」
ダンジョン入口から溢れ出ていた地下九階層の魔物が途切れると、奴等から避けられていたエレメンツスフィアが大挙して現れた。黄色に赤青、緑に褐色。五色の光で戦地は明るく照らし出された。
「さっきみたいに怒らせる?」
「止めた方が良いだろうな。減りはするだろうが壁が崩れたら街も壊れる」
「一体ずつ確実に倒すしか無いだろうな」
「それには及ばんよ」
サリューテの案を却下して、トロイヤの案も却下する。もう一つの手段をアウディーは持っているのだ。アウディーは大きく息を吸って備えると、穴にいる魔物達を凝視した。
─エレメンツスフィアから、核を1つ減らせ─
「あ、落ちてく」「何!?」
『火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。雷のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。土のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。水のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました……』
「うっ……」
頭の中で何度も繰り返される言葉にアウディーは呻き声を漏らす。そして少しずつやれば良かったと後悔するが時すでに遅し。だがアウディーの苦悩に応え、穴を塞ぐ程いたエレメンツスフィアはあれよと言う間に消灯し、穴の中へと落ちて行った。
「旦那様、平気?」「…無理をしたみたいだな」
「ああ、だいぶ無理をした。後悔しかない。しかも魔石が獲れないんだ」
「それは大損だね」
「あの穴に降りなきゃ魔石もドロップも拾えないのだけど」
「階段を作るしか、ないな」
エレメンツスフィアに地面を切られている事もあり、工事は難しくなる事が予想出来た。拾いに行くなと言いたいが、人は欲をかく生き物である。
「下手に明るくなったせいで暗くなると何も見えなくなるわね」
「1匹くらい残せば良かったのにね」
「そう言うのは先に言って欲しかったな。まだ中に居るだろうし、その頃には目が慣れるさ」
しかしいくら待ってもエレメンツスフィア所か地下九階層の魔物すら現れなかった。そして夜明けが近付き騎士団が揃っても入口からは何か出て来る気配がなかった。
「おい、冒険者っ!道が無くなっておるではないか!?」
「魔物に崩されてな」
「魔物なぞ居らんではないか!」
「夜遅くに途絶えてな。それから今まで出て来ておらん」
派手鎧の隊長に夜戦の報告を催促されて、問答形式で答えて行く。報告自体は隣の部下が文字にまとめていて、当人は話を聞いて無さそうだが、早起き出来た事だけは評価するアウディーであった。
「報告致します!道だけでなく、入口の建屋も崩れております」
夜目の利くアウディーでもそこまで注視していなかった。報告を聞いてハッとした。
「まさか建屋が崩れて出られない…のか?」
「どうするのだ!コレではダンジョンフィーバーが終わらんではないか!」
「それは問題無い。魔物が現れなかった理由を知れてまさかと思っただけだ」
「瓦礫の撤去でしたら魔法隊が吹き飛ばせます」
「うむ、許可する」
派手鎧は間髪入れず許可を下した。魔力は温存すべきだろうが敢えて口出ししなかった。
「タイミング合わせ!…………放てっ」
号令と共に一斉に放たれた風魔法が壁の真下にある瓦礫の塊を穴へと吹き飛ばす。よく訓練されていると思う反面、これしきの事にほぼ全員の魔法を使わなくとも…とも感じてしまう。
「旦那様、暖かい食事を持って来たよ」
「ありがたい。休憩させてもらおうか」
サリューテが暖かいスープと柔らかいパンを持って来た。乾パンと干し肉のみの食事だったため凄くありがたい。壁に背を預けて座り食事をし、体を温め休息を取ると、自然と睡魔が訪れる。寝るなら宿でとサリューテは言うが、時すでに遅しであった。
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