±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

もる

文字の大きさ
102 / 148
4 それぞれの自由

忍び寄る睡魔

しおりを挟む


「なんかさ、いっぱい出て来てない?」

「他の魔物は居なくなったのかしら」

 ダンジョン入口から溢れ出ていた地下九階層の魔物が途切れると、奴等から避けられていたエレメンツスフィアが大挙して現れた。黄色に赤青、緑に褐色。五色の光で戦地は明るく照らし出された。

「さっきみたいに怒らせる?」

「止めた方が良いだろうな。減りはするだろうが壁が崩れたら街も壊れる」

「一体ずつ確実に倒すしか無いだろうな」

「それには及ばんよ」

 サリューテの案を却下して、トロイヤの案も却下する。もう一つの手段をアウディーは持っているのだ。アウディーは大きく息を吸って備えると、穴にいる魔物達を凝視した。

─エレメンツスフィアから、核を1つ減らせ─

「あ、落ちてく」「何!?」

『火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。雷のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。火のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。土のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました。水のエレメンツスフィアから、核を1つ減らしました……』

「うっ……」

 頭の中で何度も繰り返される言葉にアウディーは呻き声を漏らす。そして少しずつやれば良かったと後悔するが時すでに遅し。だがアウディーの苦悩に応え、穴を塞ぐ程いたエレメンツスフィアはあれよと言う間に消灯し、穴の中へと落ちて行った。

「旦那様、平気?」「…無理をしたみたいだな」

「ああ、だいぶ無理をした。後悔しかない。しかも魔石が獲れないんだ」

「それは大損だね」

「あの穴に降りなきゃ魔石もドロップも拾えないのだけど」

「階段を作るしか、ないな」

 エレメンツスフィアに地面を切られている事もあり、工事は難しくなる事が予想出来た。拾いに行くなと言いたいが、人は欲をかく生き物である。

「下手に明るくなったせいで暗くなると何も見えなくなるわね」

「1匹くらい残せば良かったのにね」

「そう言うのは先に言って欲しかったな。まだ中に居るだろうし、その頃には目が慣れるさ」

 しかしいくら待ってもエレメンツスフィア所か地下九階層の魔物すら現れなかった。そして夜明けが近付き騎士団が揃っても入口からは何か出て来る気配がなかった。

「おい、冒険者っ!道が無くなっておるではないか!?」

「魔物に崩されてな」

「魔物なぞ居らんではないか!」

「夜遅くに途絶えてな。それから今まで出て来ておらん」

 派手鎧の隊長に夜戦の報告を催促されて、問答形式で答えて行く。報告自体は隣の部下が文字にまとめていて、当人は話を聞いて無さそうだが、早起き出来た事だけは評価するアウディーであった。

「報告致します!道だけでなく、入口の建屋も崩れております」

 夜目の利くアウディーでもそこまで注視していなかった。報告を聞いてハッとした。

「まさか建屋が崩れて出られない…のか?」

「どうするのだ!コレではダンジョンフィーバーが終わらんではないか!」

「それは問題無い。魔物が現れなかった理由を知れてまさかと思っただけだ」

「瓦礫の撤去でしたら魔法隊が吹き飛ばせます」

「うむ、許可する」

 派手鎧は間髪入れず許可を下した。魔力は温存すべきだろうが敢えて口出ししなかった。

「タイミング合わせ!…………放てっ」

 号令と共に一斉に放たれた風魔法が壁の真下にある瓦礫の塊を穴へと吹き飛ばす。よく訓練されていると思う反面、これしきの事にほぼ全員の魔法を使わなくとも…とも感じてしまう。

「旦那様、暖かい食事を持って来たよ」

「ありがたい。休憩させてもらおうか」

 サリューテが暖かいスープと柔らかいパンを持って来た。乾パンと干し肉のみの食事だったため凄くありがたい。壁に背を預けて座り食事をし、体を温め休息を取ると、自然と睡魔が訪れる。寝るなら宿でとサリューテは言うが、時すでに遅しであった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...