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4 それぞれの自由
新たなスキル
しおりを挟む死者数81名。魔法隊8名、騎士73名。内4名はアウディーが消した者だが、死因不明にて戦死とされた。
「中隊長殿が名誉の戦死を遂げたため中隊長代理を務めます。二番小隊隊長のゾリアと申します」
「冒険者のアウディーだ。まずは弔いと休息を」
派手鎧が戦死して、代理の男が挨拶に来たが冒険者に名乗る必要は無い。それにアウディーの仕事はまだ終わっていなかった。騎士団には騎士団の仕事をしてもらい、彼は彼の仕事をする。
アウディーの仕事は土木工事だ。壁の石を消して、壁があった地面を少しずつ消して行く。
─水激の痕があるな…─
消され行く地面に乗り下へと向かう中、水激を受けた痕跡を見付けるが、この後壁で補強する事を考えれば崩れる心配は無さそうでアウディーはホッとする。
穴の奥は深く、日の光が入らない。真っ暗闇で夜目に映った光景は、さながら死者の国であった。ドラゴンを筆頭に魔物達の死体が折り重なって、煙になるのを待っている。ダンジョンの魔物は死ぬと煙に変わる。即ち、まだ息があるのだ。落下によって動けなくはなっているが、魔物達は生きていた。表層の生き残りが蠢いて、地面が揺れているような錯覚に陥る。アウディーは地面を減らすのを止め、蠢く魔物達に止めを刺した。
「《水生成》《石生成》」
2つの【基礎魔法】が穴に満たされ、半死半生の魔物達の半分を奪うと水の中からブクブクと泡が上がり煙へと変わる。蠢いていた魔物の嵩が減り、ドラゴン達表層にいる魔物が煙に変わる頃には水嵩もだいぶ減っていた。
水と石を消し、足元の地面を再び下げて底へ着くと、今回のダンジョンフィーバーで発生した報酬が層を成して積み重なっていた。
─金持ちにはなりそうだが、売り捌くのに時間が掛かりそうだな─
独り占めする気はないが、独り占めしても面倒だと感じた。報酬は、金で欲しい。
アウディーは報酬に手を付けず、さっさと壁と階段を作って行った。だが一周して思案に暮れる。馬鹿げた精神Lvをしていても、建築学がある訳ではないアウディーに、この穴を登り切れる程の階段を建築する事は出来なかった。
─どうしようか……。建築士のスキルがあるならば増やすべきだろうな。さもなくば、宝の上で死ぬ事になる─
アウディーは建築士のスキルを増やせと念じ、頭の中で《建築》が増えたと告げられホッとした。そしてレベルを上限の100に上げ、一度作った階段を消した。
階段は、分厚く建てられた壁の中に出来た。出入口には閂の付いた扉が備えられ、生き延びた魔物が上がって来られないようにされた。階段は一周毎に階層化され、荷物を背負って上がる者の休憩地となり、それが22階分と少しで地上に上がる。そこからさらに物見の壁へと繋がって、落下防止の壁や緊急避難の段差が作られた。
エレメンツスフィアに削られた道の跡は全て消され、ダンジョン入口の真下から柱が設けられた。間に1本柱が建てられ橋が渡される。跳ね橋を作るとトロイヤは言っていたが、造る手間を考えるならばコチラの方が安全だ。その代わりに多少の報酬を失ったが、それを知る者はアウディー以外にはいない。ダンジョン入口の建屋と壁に門を設置して、残るは穴の底となる。回収まではやりたくないのでギルドへ報告に向かった。
「ご苦労です。明日にでも回収に向かうよう手配しますね」
─盗みに入られるのだが……夜では仕方無し、か─
とにかく地下の入口には急ぎ衛兵を立たせるよう進言し、アウディーは宿へと戻った。
「お帰り。お宝は?」
「宝箱が出ないから大した物がなくてな、置いて来たよ」
「あるだけ拾って来なさいよ。倒したのは旦那様なんだよ?誰も文句言わないって」
「魔石を抱えて戻ってもな?換金せねば使えんのだよ。額面が遥かに低くとも、金で報酬を得た方が楽なんだ」
「お金を落とせば良いのにね」
魔物の落とす金も両替が必要だと説いた。
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