±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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4 それぞれの自由

悔しさが無いとは言わない

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 翌日は疲れもあって昼手前まで寝ていたアウディーだが、遅い朝食を摂ると装備を着込んでギルドへ向かう。サリューテには休めと言われたが、ダンジョン内部の確認は雑魚に任せる訳には行かない。報酬の引き揚げも気になっていた。

「あ、アウディーさん。ギルドマスターがお待ちです。準備しますので少し待っててください」

 客のいないギルドに入ると、すぐに声が掛けられた。昨日の事は耳にしているだろう。事務的な話があるのだとアウディーは予想した。

「昨夜だけで魔石の窃盗が頻発してしまった」

「何やってんの。受付で注意喚起はしたのだぞ?」

「済まないと思っている。注意喚起については…今初めて耳にした」

 夜明け前、見張りに着いた騎士団が、お宝を抱えた賊と鉢合わせたらしい。だがそれより前にも賊は入っていたようで、持てるだけ持って行かれてしまったそうだ。

「……対応は?」

「当該職員の解雇。衛兵による警備と賊の捜索。残ったドロップは冒険者達に依頼を出して引き揚げさせている」

「杜撰な管理を改めよ。それにダンジョンの内部調査を忘れているぞ。俺の報酬を出せるだけ出せ。街を出る」

「私は、捨てられるのか」

「捨てられたくなくば仕事をしろ。部下の失態はお前の失態だ」

 執務室に報酬の金を持って来させ、分割報酬として受け取った。

「サリューテ、街を出るぞ」

「え?もうヤって来たの?早くない?」

「仕事せん者とはヤらん。とにかく支度を整えろ」

 昼食を食べてベッドでだらけていたサリューテに喝を入れ、出発の準備を急がせた。そして午後をだいぶ過ぎてサダッシュを後にした。

「短気過ぎじゃない?」

 夜になり、床張りした木の上を野営地にしての夕飯。サリューテはアウディーの愚痴を聞いて反論を述べた。

「盗まれる方が悪いと言いたいのだろうが、論点が違う。俺はギルドの杜撰さに対して憤っているのだ」

「対応はしたんでしょ?それなら許してあげなさいよ」

「許すかどうかは仕事を見て決める」

 アウディーは言わなかったが他にもすべき事がある。だがそれをサリューテに言っても詮無き事。口は食事のために使った。

 2人の旅路はディクストプンを素通りし、途中の街にも極力泊まらず14日で帝都トルゴンスタンへ到着した。

「やっとだね。ここが帝都?」

「そうだ。ギルドに寄ったら借家に行くぞ」

「家持ちだったの?」

「借りてるだけだ」

「女に?」

「そうだ」

 アウディ一の言葉にサリューテは鼻を鳴らして返す。パトロン女の所に行くのは嫌だったが、ベッドで寝る事と天秤に掛けると欲望に忠実な方に傾いた。

「アウディー様、指名依頼が出されてますよ?」

「こちらは今帝都に着いたばかりだ。後日にしてもらおうか」

「はあ、なるべく早く請けに来てくださいね」

「その言い方、断れんのか?」

「依頼人の心証を下げますし、冒険者として長く続けたいのであれば顔は広い方が良いですよ」

 とにかく今は休むのが先決。到着の手続きだけをしてその場を離れた。

「旦那様は冒険者じゃなくても食って行けそうだしねー」

「そうだな。狩り草が安くなるからランクを上げただけだしな」

「パトロンに寄生したいとは思わないの?」

「食べて行く分くらいは自分で稼ぐさ。働かない男なんて嫌いだろう?」

「そうね。女に働かせてふんぞり返ってる男は嫌いかもね」

 話をしながら大通りを歩き、露店を見たり買い食いをして目的の借家へ歩みを進めた。

「ココはどの女のハウスなのさ?」

「こちらはエラントリエーレ・トリントン・ホールブレン様が所有する屋敷となっております」「ひっ!」

 急に話し掛けられて驚くのも無理はない。今までソコにいなかったからだ。小さな屋敷の玄関に向かって歩いていると、威力メイドのシュンイはサリューテの横に突然現れた。

「アウディー様、奥様達への連絡はお済みで?」

「まだだ。繋ぎを頼むよ」

「承知しました……して、そちらは?」「ひっ!」

─威圧を飛ばすな馬鹿メイド─









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