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4 それぞれの自由
知らない内に人助けをしているタイプ
しおりを挟むアウディーの師匠を騙る年寄りは、アウディーが来たなら必ず呼ぶようギルドに依頼をしたそうで、依頼の内容は年寄りの話し相手になる事だとアウディーは考えた。
「依頼人に会うって言ってもさ、会ってヤバい仕事を押し付けられたらどうすんのよ」
「それは…ギルドマスターですし、そのような事は…」
「ギルマスが直接依頼すんならヤバい事だってあるかもじゃん」
「まあ待て。年寄りの一人や二人、殺すに手間は無いさ」「殺さないでくださいね?」
冗談を真に受ける受付嬢から依頼を請けてギルドを出る。とは言え今から会うと言う話ではない。ギルド職員が依頼者の元へ依頼が受理された事を伝え、会うに良き日を聞いて戻るのに夜まで掛かる。アウディー達冒険者は翌日ギルドで会合の日取りや場所を聞いて依頼に臨む事となる。即ち2人は暇になった。
「丸一日空いちゃったわね」
「連れ込み宿でも探すか?」
「また私が睨まれるじゃないっ」
どうやら抱かせてくれないようだ。さりとて屋敷に帰って性急と思われるのも癪である。アウディーはサリューテを連れて帝都をぶらつく事にした。昨日は大通りだけだったので、今日はアウディーの鼻を使って裏通りを散策する。
「どう?女の匂い、する?」
「隣からするぞ」
街の女を抱いたとして、威力メイドに気付けぬハズがない。揶揄う言葉を素で返し、アウディーは《察知》で色々なモノを探して歩く。
─花街か…。近付くとサリューテが気付くな。……あれは、魔道具か?─
興味の湧くモノを探していると、《察知》で色分けした点が気になった。女は黄色、アイテムは緑と色分けされた中で特に良いモノは明るく輝く。黄色の集まりを背にして少し離れた場所にかなり明るい緑の点があり、黄色から離れようと思っていたアウディーにとっては丁度良い避難路であった。
「あっちに良いアイテムがあると出た」
「冷やかしに行くの?」
「買えるなら買うかもな」
魔道具を望んだアウディーであるが、違っていても構わない。花街の女達が濁った黄色であったため、かなり明るい緑色の示す物を見てみたくなったのだ。
「ここらしい」
「お店なの?売り物じゃないんじゃない?」
サリューテの言う通り、《察知》の示す場所は路地裏の3階建て集合住宅の一室であり、どう見ても店舗ではない佇まいにアウディーは《察知》を掛け直す。そしてその集合住宅だけを範囲とすると、入口ドアを消した。
「え?入んの?」
「人も居らんようだしな」
「そー言うの、押し込みって言うんだよ?」
「許可を取る者がいない」
アウディーは集合住宅へ入って行く。サリューテは溜息を吐いて続いた。中に入り、確かに人の気配を感じない。だがサリューテは違和感を感じた。薄く開けられた鎧戸に、踏み消して間も無いタバコの吸殻。鎧戸の隙間から吸い込まれる煙は、確かに人のいた形跡であった。
「跡形もなく、消したね」
「詳しくは、その内な」
サリューテの言葉を延期してアウディーは迷いなく歩く。3階の中程にある部屋に着くと、躊躇なくドアを消した。
「で、何があるの?」
「まだ分からんが、奥の部屋だ」
小世帯用の住宅なのだろう。入ってすぐに厨房と食卓があり、食事の跡が片付けられる事もなく放置されている。その先は寝室だろうか。アウディーはドアを開けるが窓が締め切られているようで、中は闇が広がっていた。
「窓開けるから待ってろ」「うん…」
《夜目》の利くアウディーは見えているが、敢えて窓を開ける。部屋に篭った空気が気持ち悪かったのだ。そして鎧戸を全開にして光が差すと、サリューテの目にもその光景が届いた。
「魔法?」
「呪いだな」
そこにあったのは呪いの儀式に使われていた道具の数々。少なくともこの帝都から誰かを呪っていたのは明らかである。この場にいた者等は既に消えてしまったが、誰をと聞く義理もない。部屋の物を全て消し、去り際に《浄化》までしてその場を離れた。
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