±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

もる

文字の大きさ
107 / 148
4 それぞれの自由

知らない内に人助けをしているタイプ

しおりを挟む


 アウディーの師匠を騙る年寄りは、アウディーが来たなら必ず呼ぶようギルドに依頼をしたそうで、依頼の内容は年寄りの話し相手になる事だとアウディーは考えた。

「依頼人に会うって言ってもさ、会ってヤバい仕事を押し付けられたらどうすんのよ」

「それは…ギルドマスターですし、そのような事は…」

「ギルマスが直接依頼すんならヤバい事だってあるかもじゃん」

「まあ待て。年寄りの一人や二人、殺すに手間は無いさ」「殺さないでくださいね?」

 冗談を真に受ける受付嬢から依頼を請けてギルドを出る。とは言え今から会うと言う話ではない。ギルド職員が依頼者の元へ依頼が受理された事を伝え、会うに良き日を聞いて戻るのに夜まで掛かる。アウディー達冒険者は翌日ギルドで会合の日取りや場所を聞いて依頼に臨む事となる。即ち2人は暇になった。

「丸一日空いちゃったわね」

「連れ込み宿でも探すか?」

「また私が睨まれるじゃないっ」

 どうやら抱かせてくれないようだ。さりとて屋敷に帰ってと思われるのも癪である。アウディーはサリューテを連れて帝都をぶらつく事にした。昨日は大通りだけだったので、今日はアウディーのを使って裏通りを散策する。

「どう?女の匂い、する?」

「隣からするぞ」

 街の女を抱いたとして、威力メイドに気付けぬハズがない。揶揄う言葉を素で返し、アウディーは《察知》で色々なモノを探して歩く。

─花街か…。近付くとサリューテが気付くな。……あれは、魔道具か?─

 興味の湧くモノを探していると、《察知》で色分けした点が気になった。女は黄色、アイテムは緑と色分けされた中で特に良いモノは明るく輝く。黄色の集まりを背にして少し離れた場所にかなり明るい緑の点があり、黄色から離れようと思っていたアウディーにとっては丁度良い避難路であった。

「あっちに良いアイテムがあると出た」

「冷やかしに行くの?」

「買えるなら買うかもな」

 魔道具を望んだアウディーであるが、違っていても構わない。花街の女達が濁った黄色であったため、かなり明るい緑色の示す物を見てみたくなったのだ。

「ここらしい」

「お店なの?売り物じゃないんじゃない?」

 サリューテの言う通り、《察知》の示す場所は路地裏の3階建て集合住宅の一室であり、どう見ても店舗ではない佇まいにアウディーは《察知》を掛け直す。そしてその集合住宅だけを範囲とすると、入口ドアを消した。

「え?入んの?」

「人も居らんようだしな」

「そー言うの、押し込みって言うんだよ?」

「許可を取る者がいない」

 アウディーは集合住宅へ入って行く。サリューテは溜息を吐いて続いた。中に入り、確かに人の気配を感じない。だがサリューテは違和感を感じた。薄く開けられた鎧戸に、踏み消して間も無いタバコの吸殻。鎧戸の隙間から吸い込まれる煙は、確かに人のいた形跡であった。

「跡形もなく、消したね」

「詳しくは、その内な」

 サリューテの言葉を延期してアウディーは迷いなく歩く。3階の中程にある部屋に着くと、躊躇なくドアを消した。

「で、何があるの?」

「まだ分からんが、奥の部屋だ」

 小世帯用の住宅なのだろう。入ってすぐに厨房と食卓があり、食事の跡が片付けられる事もなく放置されている。その先は寝室だろうか。アウディーはドアを開けるが窓が締め切られているようで、中は闇が広がっていた。

「窓開けるから待ってろ」「うん…」

 《夜目》の利くアウディーは見えているが、敢えて窓を開ける。部屋に篭った空気が気持ち悪かったのだ。そして鎧戸を全開にして光が差すと、サリューテの目にもその光景が届いた。

「魔法?」

「呪いだな」

 そこにあったのは呪いの儀式に使われていた道具の数々。少なくともこの帝都から誰かを呪っていたのは明らかである。この場にいた者等は既に消えてしまったが、誰をと聞く義理もない。部屋の物を全て消し、去り際に《浄化》までしてその場を離れた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...