±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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4 それぞれの自由

依頼者とのトラブルにギルドは一切関与しない

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「謁見があれば鼻からそう言うとるわい」

 アウディーの文句は一笑に付され、城には入らずぐるりと城壁沿いを西に歩いて隣の屋敷へと連行される。そしてここが目的の場所であると年寄りは言い放つ。城を待ち合わせ場所にしたのは単に待ち合わせしやすかったからだそうで、メイドが待ち合わせ場所を城と聞いて、登城するものと勘違いしたようであった。さりとてメイドを責める事は出来ない。自分でギルドに行かなかったアウディーにも、その責はあるのだから。

「蔵書館なのか?」

「うむ、帝室蔵書館じゃ。ゴテゴテした鎧姿よりはそっちの服の方がマシかの」

「誂えた甲斐があります」

 大規模な教会並の建物の中に、帝国が集めた書物が収められていると言う。立ち入るには国からの許可が必要で、普通程度の平民に許可が降りる事は無いそうだ。

「所でそちらのメイドはお主の物じゃあるまい。どこぞの家の者じゃ?」

「今はアウディー様のメイドと、ご承知おきください」

「む、まあええ。あまり外には洩らしてくれるな?この2人はワシの連れじゃ」

 スコンブロはそう言うと手も触れず開かれた扉を通って所蔵館の中へ入って行く。入口を守る守衛は顔パスで通した。当然許可があると言う事だろう。アウディーが入り、メイドも問題無いようで、3人が館内に入ると扉は閉められた。

「魔力動力か。ダンジョン以外では初めて見たな」

「おいそれと作れるモンじゃないからの」

「使用人の仕事が減りますね。それに風情もありません」

「そう言うモンでも無いんじゃがの」

 所蔵館のエントランスは吹き抜けになっているが思ったより狭く、1階と2階には1つずつ大きな扉が設えられているのが見える。

「気になるかの」

「建築には興味があるが、二度と立ち入る機会はないだろうさ」

「ワシの弟子になれば何度でも入れるぞい?」

「俺は冒険者。魔道士を弟子にすべきだ」

「連れん奴め、こっちじゃ」

 1階の魔動扉を通り、奥へは向かわず右奥へ。そこには下階への螺旋階段があり、老体は足腰軋ませ降りて行く。螺旋階段には魔動の灯りが設えられ、年寄りの動きに合わせて点灯した。

─貴重な品のある場所なら、こう言う物を使うのも然り、か─

 火を使って火事を起こしたら大問題であるし、地下で火を使うのも危険である。ちなみにアウディー達が間借りしている小さな屋敷では地下でも火を使っていて、カンテラを持ったメイドに案内されて移動している。便利だが、魔石動力に掛かる維持費を思うと口は出せないと思った。

 螺旋階段を降りて、背丈程のドアを潜ると長い通路が前と左に伸びている。さっさと進んでしまう年寄りの後を追うと、真っ直ぐ行った中程で立ち止まり、ドアを開けた。

「ここがワシの部屋じゃ」

「女性を連れ込む部屋ではないな」

「どの口が言いますか」

「仕事するのに性別は関係あるまい?とっとと入ってドアを閉めよ」

 独居老人の部屋は元々それなりの広さのある部屋だったのだろうが、書棚から溢れた本に獣皮紙の束が雑多に積まれ、1人が通るにやっとな動線しか取れぬ物置きと化していた。

「依頼は掃除ですね」「止めんかっ」

「意に沿わない依頼であればこの部屋を掃除してくれよう」

「お主の拾った本の事じゃ。掃除なぞさせんわい。座れ座れ」

「……」

 座れと言われて椅子を見るが、本と紙束が占有していて座れない。

「アウディー様、我慢なりません。動線を確保します」

「よろしく頼む」「ちょ!待たんかっ」

 メイドは待たなかった。老人が狼狽するのを気にもせず、椅子とテーブル周りの荷物を部屋の隅へと追いやった。

「掃いて拭いてが出来ず申し訳ありません」

「ぐぬぬ…、メイドめぇ、どこの家か炙り出してやるぞ……」

「よくやった。お前も座ってくれ。どうせお茶の道具も無いだろうしな」

─炙り出してびっくりするが良い─

「茶ぐらいあるわい!貴重な物を汚したくないから出さんだけじゃ」

 年寄りは見栄を張る生き物であった。









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