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4 それぞれの自由
企む女達
しおりを挟む王妃3人、妻にするとは言っても今すぐとは行かない。皇帝が存命で、どんどん元気におなり遊ばされるからだ。とは言え歳である事は変わりなく、3人は気長に待つと言う。
「それでアウディー。貴方の力をあの人に使うか否かなのですが」
使わないと言う選択は不敬を買うとリュリュエルは言う。さりとて最大までは使えない。そこでスコンブロに施した程度で収めるべき、と言う事になった。
スコンブロからは肉体的疲労と関節及び筋肉の痛みを減らした。皇帝は疲労していないので、痛みを減らすだけで良いようだ。
「主治医や治癒士に恨まれそうだが」
「私ががさせませんよ。それにアラグリーラが持ち出して来た話です。恨むにはそれなりの覚悟が要りますよ、ふふっ」
あの年寄り、皇帝とは幼い頃からの遊び相手であったそうで、更に実力も確かであれば恨むにはリスクが高過ぎるとリュリュエルは続けた。であれば余計に弱者である自分に皺寄せが来そうであるが、その時は躊躇わないとアウディーは決めた。
翌日。メイドチーヨンがスコンブロの元へ連絡に出ると、帰って来るまで暇になったアウディーは装備の新調をシュンイに頼んだ。
「予算の都合もあるが、謁見用に一揃え欲しい」
「あの服はお気に召しませんでしたか」
「冒険者として前に出るなら鎧姿の方が良くはないか?」
「旦那様、使わない鎧なんて買っても勿体無いだけだって」
シュンイは自分達が夜なべ仕事で仕立てた服を蔑ろにされる事を嫌がり、サリューテは金が勿体無いと言う。言い分は違えどどちらも作った服を着ろと言う事だ。
「今から用意するにしても調整は必要です。鎧は服のようには参りません」
「出来合いのなんてダメなんでしょ?」
「ダメではないが、そうか調整か…」
何となく言いくるめられてしまったアウディーは連絡待ちで外にも行けず、食堂で酒を貰うと書斎に籠り、煙草と共に酒を飲んだ。すっかり不貞腐れてしまったのである。
────
「拗ねちゃった」
「そのような日もあります」
客間に残されたサリューテに、シュンイはお茶を供す。
「それにしてもどーすんだろ」
「これからの、お話ですね?」
「うん。皇帝が亡くなったとしてさ。奥様方は屋敷を離れてどこに住むのよ」
「好きな場所で良いではありませんか」
「家がなきゃ、お貴族様は住めないでしょ?」
「確かに。家探しするにも建てるにも、時間は掛かりますね」
「旦那様は頭良いハズなのに、変な所抜けてんのよねえ」
「ソレはソレで、可愛いではありませんか」
「貴女達はどうすんの?奥様に付いてくんだと思うけど」
「それはもちろん。ああ、確かに大きな屋敷、その前に土地も用意しなければなりませんね」
「うろ覚えだけど、3つの家のメイド、しかも王家…帝室だっけ?ともなりゃそれなりの人数が居るんでしょ?」
「当家とナルセンス様は大体50人、リュリュエル様は300人程かと記憶してます」
「そうなると400人、食わせて行かなきゃいけないのよね」
「お金は大事ですね」
「稼ぐ手段もね。私この国の稼ぎ場に詳しくないからさ、旦那様の仕事先を見繕ってよ」
「新鮮な情報はまたの機会に。古い情報ですと、やはりダンジョンでしょうか。魔石や魔物のドロップの他に、鉱石が掘れるダンジョンが存在します。正確にはダンジョンでなはいのですが、魔物の出る洞窟と言う点では同じです」
「それ、利権とか平気なの?」
「ピンハネはされますね。帝室の直轄領ですし」
「んー、帝室から離れた方が良くない?」
「奥様方も国渡りには積極的ですし、いっその事王国で土地を買いましょうか」
「それこそお金、稼がなきゃ」
酒に溺れるアウディーを他所に、女達は話を進めて行った。そしてこの話はエランリエーレの報告に上がり、リュリュエルとナルセンスへは手紙にて共有される事となる。
「面白い事になりましたわね」「楽しみが増えましたわ」
謁見の日、3人は別室で顔を合わせた。
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