±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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4 それぞれの自由

緊張と緩和

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 皇帝とスコンブロの話の場には当然宰相等高位貴族も立ち会っているハズであり、割って入った男が公爵か三相の長でなくてはその場で首を落とされて然りの行動だ。だが周りが騒ぎ立てたり剣を抜く音はしない。どうやら首を撥ねるのはまだ先の事のようである。

「構わぬ。コレは儂とスコンブロで決めた事。ここで儂が討たれるならば首を撥ねれば済む話。違うか?」

─冗談ではないな─

 この年寄り達、仲良しにも程がある。二人で話して決めてしまったのなら宰相や三相の長が知る由もない。どうやら首を撥ねられる者はいなそうである。

「アウディーよ。陛下の痛みを散らして見せよ」

「は」

 アウディーは【恩恵】を使い、スコンブロの時と同様筋肉と関節の痛みを取り去った。

「……陛下」「何も起こらんぞ…」「謀ったか!?」

「止めよ。確かに痛みが消えた。体も軽く感じるぞ。そちの働き、見事である」

「アウディーよ、返事をせい」

「は。勿体無きお言葉に御座います」

 前方で、椅子から立ち上がる音がする。このまま退室するのだろうとアウディーは考えた。

「アウディーと言ったな。礼を言うぞ」

「!……こ」「アウディー、へ、返事はどうしたっ」

「…礼には及びません。皇帝陛下の健やかなる事こそ、民の喜びに御座います」

 アウディーは咄嗟の事で危うく言葉を返しそうになってしまった。その刹那、スコンブロによって平民アウディーの命は助けられた。皇帝が玉座から下の者の所へ降りて来て、肩に手を置く等と言う経験は例え貴族であってもある訳がない。デラクトス国王と会合した経験のあるアウディーだとしても、このハプニングには対応出来なかった。

「生きて戻りましたか」

「死に掛けたがね」

「本当にの。ワシが居て良かったのう」

 謁見が終わり、控えの間に戻ると他の貴族と入れ替わりになる。病み上がり、基、呪い上がりであると言うのに皇帝陛下はお忙しい。

「貴様、どんな粗相をしでかした。よもや陛下の御前でチューチュー鳴いたのではあるまいな?」

 勘違い男がニヤニヤして寄って来る。順番待ちで暇なのだろう。アウディーはホッとした顔で応える。

「首がくっ付いているのが不思議なモノだ。まさか陛下に肩を触れて頂けるとは思っても見なかった。卿が声を掛けてくれた事で緊張が解れたのだ。礼を言わせてもらおう。これで家の者に自慢出来る」

「フッ、フンッ。貴様のためにした事ではないっ」

 勘違い男は鼻を鳴らすと悪態吐いて行ってしまった。貴族には偶に居るのだ。悪態吐くお節介が。彼もその一人であろう。

「殺しますか?」「止めろ馬鹿、帰るぞっ」

 威力メイドは物騒な事を言う。勘違い男が踵を返す前に控えの間を退出した。

「ちと待てアウディー」

「はあ。何か?」

「依頼の達成書じゃ。ギルドに行って換金せい」

「私の手間賃は?チーヨンの分は?」

─そんな物は無い。そもそもこの謁見は依頼に含まれてないだろうに─

「アウディーに貰えぃ。では、生きていればまた会おうぞ?」

 年寄りの手から巻かれた紙が手渡され、これで幾許かの金になる。早くギルドに行って、それから小さな屋敷に帰ろうとアウディーは足並を早めた。

「アウディー様ですね?しばらく、しばらく」

 足止めをする女の声に、アウディーは声の主に向き直る。

「正室様のメイドですね。お気を付けを」

「何も致しません。奥様がアウディー様をお呼びです。貴女はお呼びでないですが」

「私はエランリエーレ様の筆頭です。下っ端はお黙りなさい」

私はわたくしはリュリュエル様のメイド。正室様付きですが、何か?」

「止めろ馬鹿っ。ケンカするなら報酬やらんぞ!?」

「報酬とあらば」「現金な事で」「殺して良いですか?」「止めろってば。とにかく移動だ。案内頼む」「承りまして御座います」

 緊張が解けて口数が増える。女が増えればより口数も増えるモノ。3人は城内を少し騒がしくした結果、正室付き筆頭に小言を言われてしまった。









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