±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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4 それぞれの自由

見据える未来

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「まあ。それで4日も帰らずに」

「はい奥様。私、待ったのです。雨の夜も、風の朝も。待ち続けたのでございます」

「おお、よしよし。可哀想に……」

「よよよ…奥様ぁ」

 アウディーは、呼ばれた屋敷に3泊し、4日目の夜に小さい屋敷へ戻った。その間待ち続けたと言うメイドを慰めるエランに跪いて撓垂れ掛かるメイド。雨も強風も無かったが、待たせてしまったのは事実であるのでアウディーは敢えて茶番を飲む。メイドは朝に迎えに来ると言ったのだ。迎えに出て、相手方に門前払いされた事を根に持っているように見える。

「悪かったよ。聞ける願いは聞いてやる。だから嘘泣きは止めろ」

「幾つでも?」「何でも?」

「1つだけ。俺で出来る事だけだ」

 迎えの予定を無下にされたメイドだけでなく、エランまでもが願いの趣旨を捻じ曲げて来る。アウディーは趣旨を伝え直すがエランや屋敷にいた他のメイド達も待っていたと聞き、アウディーは観念した。

「では僭越ながら……」

 この強かなメイドに何を言われるかと冷や汗を垂らしたアウディーは、明日の夜まで屋敷の女を抱き続ける事となる。メイド達の総意が体一つで賄えるモノであると知ってアウディーは息を吐いたが、翌々日の朝エランからの願いを聞いて体が強ばる。

「土地…、それも王国に…?」

「ええ。キレイな所が良いかしらね」

「ある程度街に近い方が良いと思うわ」

「そうね、よしなに」

「領土侵犯にならないか?それにサリューテは知っていたのか?」

「知るも何も、奥様達を妻にするんでしょ?家が必要よ?」

「そ、そうだな」

「メイドも連れて行くのよ?300人くらい」

「……大屋敷だな」

「ある程度自給したり、外貨を手に入れなきゃならないよね?お酒造りしたりさ」

「給与、か……」

「小作も雇う事にもなるよね」

「……まるで貴族だな……」

「貴族の暮らしが骨身に染みてるのよ?」

 サリューテとの問答で、アウディーの肩はズンズンと沈んで行く。3人の王妃を娶ると言って、その先を考えていなかったアウディーはプレッシャーに押し潰されそうな気持ちになる。使用人が300人、小作を雇うなら更に増す事となる住民数は、大きな村と同等の数であり、王国にそれだけの広さの土地を買える場所はない。王国の土地はどこもどこかの貴族の所有であるためだ。

「……分かった。金はともかく、まずは買えるかどうか伺いを立てて来るよ」

「それならば、アレを」「承知しました」

─何か持たせる……?こうなる事を見越していたのか?─

 エランはアレをと言ってメイドに何かを持って来させる。そして戻ったメイドのトレイの上には3本の書簡。

「これは……誰の元へ?」

「兄弟の何れかに」

 国内にいるアルテッラではなく、王国にいるエクサヴァルとホトルキンの事であるとアウディーは気付く。そうなると書簡を持参する相手が兄ではない事は考えるまでもなかった。

「明日にでもここを立ちます」

「ええ、ご無事で。サリューテも怪我無きよう」

 一人の方が早いのだが、エランはサリューテにも言葉を述べる。サリューテも行く気のようでアウディーは断らなかったが、何か目的でもあるのだろうか。彼は少し考えて考えるのを止めた。花街に行かせないためだろう事は明らかであろうから。

 翌日。久しぶりに装備を着け、貴族生活との別れを惜しむ。

「さ、行こ?」

 サリューテの声は心做しか嬉しそうに聞こえる。貴族生活は窮屈だったのだろうか。

「嬉しそうに聞こえるな」

「嬉しいよ?久しぶりに旦那様を独り占め出来るもん」

「今夜は寝かさないぞ」

「寝るなら街で寝てよね?」

─寝ないなら森の中でも問題無い、か─

 男女の思惑は擦れ違い、見送りを受けて小さな屋敷を後にする。久しぶりの二人旅、後ろ髪引かれるのを振り払うようにサリューテを背負って足を速めた。

「ねえ、森に行こうよ」

「まだ出たばかりだぞ?」

「今朝の分、出してないじゃん」

 森に走り、サリューテを抱いて走る。









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