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4 それぞれの自由
満たされぬ欲求
しおりを挟むアウディーとサリューテは昼夜を問わず森を行く。【恩恵】によって疲労や睡魔を減らされたアウディーは食事と排泄以外の全ての時間を移動に費やした。そしてサリューテはアウディーの鞘として、森に入ってからの全ての時間、腰の物を咥え続けた。
「宿で、寝かせてよ…」
「俺だって、眠い。もう少しで、バンデルロウだ」
バンデルロウ国境砦。どこの街にも寄らず、昼夜を無視して直通で走り続けた結果、3日目の朝には砦の大門が樹冠から目視出来る位置に辿り着いた。ここからは街道を行く事になるため、アウディーは取り付いた木が激しく揺れる程に腰を振り、サリューテの中へ子種を吐き出す。この二晩で何度出したか等数えもしなかったが、アウディーの脚は乾いた子種でカピカピのベトベトになっていた。
「ふぅ…。抜きたくないな」
「あそこじゃ、女も、買えないもん…ね」
宿を取って食事をしたら丸一日寝て過ごす事になるだろう。睡魔への後払いはきっちり支払われるため、女を買う余裕はない。
汚れや匂いを消し、装備を整え街道を行き、昼前には国境砦に入る事が出来た。ギルドには向かわず宿を取り、早めの昼食を摂る。
「酒か」
「どうせ寝るんだし、良いでしょ?」
満身創痍のサリューテは食事の他に酒を頼んだ。アウディーも彼女の言葉に同意して酒を頼む。他の街より物価は高いが、その分旅程をすっ飛ばしているので多少良い物を飲み食いしても良いだろう。アウディーは互いに満腹になるまで食事をし、酒を飲んだ。
そして朝。夕飯も食べずに寝続けた2人は装備毎体を清めると、食事を摂って宿を立つ。
「食糧は持ちそう?」
「増やせばな。タバコはあるか?」
「買ってないけど、吸う暇もなかったしたっぷり残ってるよ。旦那様も吸う暇無かったよね」
「他に吸うモノがあるからな」
買い物がないと分かると国境を潜ってデラクトス王国へ。暫くは冒険者や旅商人と同じく街道を行く事になる。サリューテはタバコを咥えて口を突き出す。火が欲しいのだろう。突き出た先端に火を放ち、すぐに消した。
「《火生成》くらい使えるだろ?」
「ふぅ、咥えてたら喋れないじゃん」
煙を吐くサリューテに、火を出してから咥えたら良いと説くが、アウディー自身無詠唱であるため咥えてから火を出していた。なのでそこを突かれては返す言葉もなくなってしまう。
「無詠唱を覚えてしまえ」
「そんな事出来るの旦那様だけだって」
「もう1人出来るが、アイツはタバコも料理もせん、か」
「誰よ?女?」
「お前も会っただろ。エクスだよ」
「使わないのに覚えたの?」
「色々あるのさ。そろそろ狩場だ、道を外そう」
狩場と言っても何かを狩る訳ではない。街道から独自ルートに入る口実だ。サリューテが吸い終わるのを待って街道を出て草地に入ると、背負子から背嚢を外してサリューテに持たせ、空いた背負子にサリューテを座らせた。
「ベルトは締めたか?」
「ん……。着けたよ」
「森まで止まらん。舌を噛むなよ」
「ん~」
街道には人の姿があるので妥協した速さで走る。それでも街道からは速い速いと声がした。
─全く、見世物ではないぞ…─
「はは、あの冒険者も背負わされてっよ」
「そんな事をしても疲れるだけだろうにな。あまり口を開くなよ?」
森に入ると街道沿いとは世界が変わる。薄暗く、湿度のある風が心地良い。
「そろそろ脱ぐ、ね?」
森に入れば二人の時間。誰かに見られる事はほぼないと言って良い。
「残念だが少し待て」
「敵?」
「本当に狩場だったようだ」
運が悪く、街道で言った口実が真実になってしまった。荷物を降ろし、木の幹にサリューテの背中を任せると、アウディーは久しぶりに抜剣する。足腰ばかり動かしていたからたまには腕を奮いたくなったのだろうか。
「今夜は肉三昧だ」「良いね!」
高い割にそれ程満足出来る食事ではなかったようである。ボア種の首を斬り落とし、アウディーは夕飯の予定を決めた。
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