±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

もる

文字の大きさ
121 / 148
4 それぞれの自由

満たされぬ欲求

しおりを挟む


 アウディーとサリューテは昼夜を問わず森を行く。【恩恵】によって疲労や睡魔を減らされたアウディーは食事と排泄以外の全ての時間を移動に費やした。そしてサリューテはアウディーの鞘として、森に入ってからの全ての時間、腰の物を咥え続けた。

「宿で、寝かせてよ…」

「俺だって、眠い。もう少しで、バンデルロウだ」

 バンデルロウ国境砦。どこの街にも寄らず、昼夜を無視して直通で走り続けた結果、3日目の朝には砦の大門が樹冠から目視出来る位置に辿り着いた。ここからは街道を行く事になるため、アウディーは取り付いた木が激しく揺れる程に腰を振り、サリューテの中へ子種を吐き出す。この二晩で何度出したか等数えもしなかったが、アウディーの脚は乾いた子種でカピカピのベトベトになっていた。

「ふぅ…。抜きたくないな」

「あそこじゃ、女も、買えないもん…ね」

 宿を取って食事をしたら丸一日寝て過ごす事になるだろう。睡魔への後払いはきっちり支払われるため、女を買う余裕はない。

 汚れや匂いを消し、装備を整え街道を行き、昼前には国境砦に入る事が出来た。ギルドには向かわず宿を取り、早めの昼食を摂る。

「酒か」

「どうせ寝るんだし、良いでしょ?」

 満身創痍のサリューテは食事の他に酒を頼んだ。アウディーも彼女の言葉に同意して酒を頼む。他の街より物価は高いが、その分旅程をすっ飛ばしているので多少良い物を飲み食いしても良いだろう。アウディーは互いに満腹になるまで食事をし、酒を飲んだ。

 そして朝。夕飯も食べずに寝続けた2人は装備毎体を清めると、食事を摂って宿を立つ。

「食糧は持ちそう?」

「増やせばな。タバコはあるか?」

「買ってないけど、吸う暇もなかったしたっぷり残ってるよ。旦那様も吸う暇無かったよね」

「他に吸うモノがあるからな」

 買い物がないと分かると国境を潜ってデラクトス王国へ。暫くは冒険者や旅商人と同じく街道を行く事になる。サリューテはタバコを咥えて口を突き出す。火が欲しいのだろう。突き出た先端に火を放ち、すぐに消した。

「《火生成ファイヤー》くらい使えるだろ?」

「ふぅ、咥えてたら喋れないじゃん」

 煙を吐くサリューテに、火を出してから咥えたら良いと説くが、アウディー自身無詠唱であるため咥えてから火を出していた。なのでそこを突かれては返す言葉もなくなってしまう。

「無詠唱を覚えてしまえ」

「そんな事出来るの旦那様だけだって」

「もう1人出来るが、アイツはタバコも料理もせん、か」

「誰よ?女?」

「お前も会っただろ。エクスだよ」

「使わないのに覚えたの?」

「色々あるのさ。そろそろ狩場だ、道を外そう」

 狩場と言っても何かを狩る訳ではない。街道から独自ルートに入る口実だ。サリューテが吸い終わるのを待って街道を出て草地に入ると、背負子から背嚢を外してサリューテに持たせ、空いた背負子にサリューテを座らせた。

「ベルトは締めたか?」

「ん……。着けたよ」

「森まで止まらん。舌を噛むなよ」

「ん~」

 街道には人の姿があるので妥協した速さで走る。それでも街道からは速い速いと声がした。

─全く、見世物ではないぞ…─

「はは、あの冒険者も背負わされてっよ」

「そんな事をしても疲れるだけだろうにな。あまり口を開くなよ?」

 森に入ると街道沿いとは世界が変わる。薄暗く、湿度のある風が心地良い。

「そろそろ脱ぐ、ね?」

 森に入れば二人の時間。誰かに見られる事はほぼないと言って良い。

「残念だが少し待て」

「敵?」

「本当に狩場だったようだ」

 運が悪く、街道で言った口実が真実になってしまった。荷物を降ろし、木の幹にサリューテの背中を任せると、アウディーは久しぶりに抜剣する。足腰ばかり動かしていたからたまには腕を奮いたくなったのだろうか。

「今夜は肉三昧だ」「良いね!」

 高い割にそれ程満足出来る食事ではなかったようである。ボア種の首を斬り落とし、アウディーは夕飯の予定を決めた。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...