125 / 148
5 故郷へ…
魔物の、尻…
しおりを挟む「はあ、夕飯に来ないと思ったらお爺ちゃんとよろしくしてた訳ね」
「食事が来てしまってはこれにてとは言えんだろ。とにかく有意義な時間を過ごさせてもらったよ」
客室に戻ると一人食堂で食事をしたと言うサリューテに詰め寄られ、嘘偽り無い返答に嫌味が返された。一人で食事をした事より、一人なのに貴族式の食事を求められた事が堅苦しくて嫌だと言う。
「まあ、下着姿で横になっては食べられんな」
「そこまではしないけどさ。一皿ずつ食べるのがヤなのよ。食べ足りない分はパン詰める感じとかさ」
お代わりしても構わないが、胃の容量を考えながら食べないと終いまで食べ切れない。その辺りのペース配分は慣れが必要だ。慣れた者はパンを一つ、酒で流し込んで食事を終える。酒場のように料理が一気に並ぶ方が気楽で良いとサリューテはボヤいた。
「足りない時は寝酒とツマミで凌いだりするぞ」
「うん、エランリエーレ様の所ではそうしてた」
アウディーが小さい屋敷に不在の時はメイド達と酒盛りしていたと言う。
─確かに、気付かぬ内に脅かして来なくなっていた気がするな─
それから2日経ち、お目通りの日となった。元気になって我先にと割り込みするかと思いきや、律儀に待ったと老閣下は鼻を鳴らす。
「生き急いでいるとは思われたくないからのっ」
「今の姿を見ては誰もそんな事言えませんよ」
「ええ。旦那様は溌剌として御座います」
「倅は悔やむだろうのう、死に損ないが生き返ったとな、ふはっ」
「それこそ丸投げしてしまえば良いのです。他領の政に口を挟む立場にはありませんが」
「それもまた面白い、か。何の準備もしとらんからの彼奴は」
「兼ねてよりのご趣味に興じるのも、良きかと」
「趣味ですか。生きるのに精一杯な私には考えられませんね」
「儂の趣味は魔道具作りよ。この車だって儂が設計して造らせたのだぞ?」
魔道具作りが趣味と言う老閣下は、その派生で身に付けた設計技術で個人用の馬車や壁の厚い屋敷を造らせたと言う。道理で他で見ない形である訳だ。4人が乗っているこの馬車は、老閣下が軽さと取り回し、そして乗り心地を追求して完成させた物であるそうだ。確かに座席に背凭れは柔らかくて張りがあり、馬車の振動を抑えている。馬車自体の揺れも少ない。馬車に乗る事がめっきり減ったアウディーは、ようやくこの馬車が良い物である事に気付いた。
「今更ですが、揺れが殆ど感じられませんね」
「道が良いと思うておったか」
「長く馬車に乗っていなかったもので」
「それは足周りが違うておってな…………」
車軸を取り払って車輪を独立稼働……。バネだけでは反発を受けるので魔獣脂を抵抗に……。速度を落とし、止まる装置……。老閣下の話は尽きず、老執事に止められて王城に着いた事を知らされる。
「ちいっ、もっとゆっくり進まんか」
「旦那様、後ろが支えております故…」
「続きはまた、機会があれば」
「男に二言は無いな?」
言質を取られてしまった感はあるが、社交辞令を知らぬ老人ではないハズと、アウディーは笑顔を返した。
「アウメンターレ、久しいな。何故老い耄れギゼルの連れ等しておる」
「アウメンターレよ、そこでふんぞり返っとる爺はの、昔魔物の尻に「アウメンターレ!返答を許すっ!」」
「は。王都門前にてたまたま居合わせ、お屋敷にてお世話になっております」
国王陛下と老閣下に何があったのか。追及する者は居ない。魔物の尻にナニをしたのか。アウディーは気になって仕方なかったが、聞きたい衝動を抑えた。
「アウディー、兄は元気にやっているか?」
「は。我が姉ともすぐに打ち解け、懐妊の報が届くのも間もなくかと存じます」
「アウディー様、それは素敵なお知らせですわねっ。私も早く大人になりたいものですわ」
「冒険者アウディー、他に報告があるなら申せ」
「アウメンターレ、お主仕事しとったのか」
仕事を請けたつもりはない。
10
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる