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5 故郷へ…
悪人アウディー
しおりを挟む「続きは後で聞こう。その者を牢に放り込んでおけ」
「畏まりました。お一人で歩けますかな?」
「歩きたくないし牢に押し込まれるのは嫌だ」
「煩い。黙って牢に入れ」
「はい…」
入牢者は質問に対し自分の気持ちを正直に答え、アウディーの命令に素直に従い、捕縛する事なく静かに連れて行かれた。
「アウメンターレよ、さっきのは…【恩恵】か?」
「父に知れればもっと積極的に刺客を送られていた事でしょうね」
「子殺しは真であったか……」
「どこの家でもありますよ」
「……そうじゃの。領の補佐となる者は改めて送らせる」
話を切り上げようとする老閣下をアウディーは止めた。そして入牢者の延命と補佐への新任を願い出る。当然老閣下は難色を見せたが、目の前で見せられた【恩恵】を利用すると説かれて唸る。
「使った分稼いでもらわねばなりませんからね」
「ふぅ…。殺すのも手間、か」
「悪い所と繋がっているなら改心させてやれば良いかと」
「お主、悪い男よの」「今更よ?お爺ちゃま」
─俺は何にも悪くないぞ?─
話を終え、老閣下達は客間に下がる。アウディー達も屋敷のメイドに連れられて客間へ向かった。領主の私室もあるのだが、あの男が使っていたベッドを使いたくないとの総意で客間を使う事にした。
「旦那様、奥様。ありがとうございました」
「礼を言われる事じゃない。生活自体は出来ていたのだろう?」
案内役の年嵩メイドは頭を垂れて礼を述べるが、アウディーはそれを否定した。ジョム・ジョプリンと言う男。派手な蓄財と散財を繰り返してはいたが街の様子は真面であった。それは兵士を見て分かる。市井が食うに困らないギリギリで圧政を敷いていたのだ。そして散財は経済を回す。動いた先が一部である事は問題だが、一部でなくすればより経済を回せるだろう。ジョム・ジョプリン、上手い男ではあるのだ。
「とにかく寝よ?疲れちゃったよ」
「そうだな。女好きの俺は女でも買って来るか」
「止めてよ、根に持ってんの?」
「まあな。酒でも飲んで良い女が寄って来るのを待つさ。お前も酒飲んで寝ろ」
「はいはい」
サリューテは年嵩メイドに酒を頼むとベッドに大の字になる。不貞腐れてしまったようだ。アウディーは年嵩メイドと一緒に部屋を出て、仕事のついでに道案内をさせた。
「……もう喋って良いぞ」
「はい」
入牢したジョムの口数は少ない。アウディーが【恩恵】の指示を変えたからだ。ジョムはアウディーに隷属した。最初からこう指示しておけば楽であったが、老閣下の前で隷属させるのは憚られたのだ。
「これからはサリューテの補佐として働いてもらう。良く従え」
「はい」
「繋がっている者との相対も卒なくこなせ」
「はい」
「その者等と繋がる時は俺も同行する」
「はい」
「隠している財産は全て予備費とする。一ヶ所にまとめろ」
「はい」
「…女の出処を言え」
「はい…………」
ジョムからの情報を聞いて女の集まる場所を《察知》するとアウディーは牢獄を出た。もちろん女の居る場所を目指して。
街の端には植樹がなされ、崖際には低い壁が建てられている。落ちる者を少しだけ減らす役割をしているようだ。アウディーが来たのは植樹に紛れるように建てられた丸太小屋で、中に人は居ないとされる。しかし隠し階段を下りて地下に入ると人数は激増した。《察知》で見える範囲には女が密集し、男の姿は僅かであった。
「誰だテメェ!?」
「女を抱きに来た。案内しろ」
数少ない男がアウディーを見て声を上げるが、彼の声を聞くと態度を一変させた。相手が客であると分かったからではない。隷属させられたのだ。そして地下空間にいる男共の尽くを隷属させると女達の押し込められている小部屋の1つに足を運んだ。
「だ、誰よ貴方っ」
「もう少ししたら助けてやる。だからヤらせろ」
「……私だけ、なら」「ズルは無しだぜ?」「私、産めるよっ」
アウディーは女達を朝まで抱いた。新手の男共を奴隷に変えて…。
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