±の成り上がり 〜無能と蔑まれる前に気付けた俺の最強卑怯な世渡り術〜

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5 故郷へ…

貴族は落ちた物を食べない

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 昨夜は楽しい酒を飲み、気持ちの良い朝を迎えたアウディーはギルド2階の会議室で話の場を設けられていた。

「……金貨400枚、確認しました」

「では、地下第10階層への許可証となります」

 金貨400枚。ダンジョンで集めた金と手持ちを合わせた金額は、たった1枚の許可証へと成り下がってしまった。だがコレで堂々とダンジョンへ潜れるのだから文句は言えない。金で許可証が買える事を知ったのはもちろん昨夜、腕枕に頭を乗せる2人からの情報であり、ギルドが有能と判断した冒険者に対しこっそりと伝えられると囁かれた。2人の伝手でギルマスに話を上げ、トントン拍子で許可証が発行されたのは当然アウディーの【恩恵】によるモノだ。

「貴殿の活躍に期待する」

「払った分取り戻さなば、な」

 恰幅のあるギルマスに返すとその足でダンジョンへ。目的はマジックバッグの入手であるが、金を稼がねば手持ちが寂しかったのだ。

─帝国金貨まで持って行かれたからな……両替手数料は浮いたが─

 移動に重きを置いたアウディーは魔物を積極的には狩らず、立ち塞がった魔物だけを煙に変えて地下へと潜って行く。そして地下30階層にてようやく念願の物を手に入れる事が出来た。

「こんなに潜らんと武器も落ちんのか…」

 ソレは一振の剣。【恩恵】で消し飛ばすのに飽きたアウディーが魔物を斬り付けた結果、大事に使っていた剣はグシャリと柄が砕けてしまった。彼の握力に剣が屈してしまったのだ。【恩恵】で如何様にも出来るアウディーではあるが、腰が軽い事は些か不安でありマジックバッグの事を忘れ武器を探すために地下30階層まで来てしまっていた。

─鑑定は、すべきだろうな…─

 考えて、迷いが生じる。拾得品は全て売らなばならぬルールである以上、この剣を腰に提げて戻るのは愚策。すぐにバレてしまうだろう。隠すにしても背嚢からはみ出るのであれば同じ事。隠して持ち帰るにはどうしてもマジックバッグが必要になってしまった。

─出るまで探す……しか…無い、か─

 アウディーは1人階段を降りる。そしてこのダンジョンの難しさを知る。サダシュダンジョンと違い、休憩出来る場所がない。階段の中に魔物が発生する事はないが、狭い段々では横になる事も出来ず、段に座って乾物と水で腹を満たす程度の休憩しか出来なかった。

─まさか、それで徒党を組んでいた?─

 丸っきり見当違いな予想をするアウディーであった。彼自身、それがボケた解答である事は理解している。だが突っ込んでくれるサリューテはいない。音も明かりもないダンジョンの階段で、アウディーは寂しさを感じていた。

「せめて、横にならねば」

 声に出し、背嚢を漁る。あるのは乾パンと干し肉に、フィールド型ダンジョンに対応するため用意していたマント。採集品に炊具等。

─食べ物を粗末にしたくはないが…─

 《基礎魔法》で生み出した石を【恩恵】で伸ばし、階段の上で平行を作ると乾パンを同じく伸ばして土台に置いた。上にマントを掛ければ石よりは柔らかい、乾パンのベッドである。

「まあ、硬いな」

 パン工房で一般用のパンを買ってくれば良かった。そうすれば味も寝心地も違っていただろう。四角いパンが売られていない事と、パンを寝床にする前提の話である事を除けば完璧な妄想であった。

 いつの間にか眠っていた事にアウディーは気付く。乾パンベッドの寝心地は案外悪くなかったようで、大きさを戻したベッドを齧り、彼は階段を降りて行った。

 地下40階層に来て、アウディーは引き返す決断を下す。背嚢がいっぱいになってしまったのだ。折角拾った剣ではあるが、今回は諦めざるを得ない。

─これは呪いの剣なのだ……そう思おう─

 魔物を殺しても両手のヤカンと鍋に魔石がいっぱいでは無駄な殺生である。アウディーは無駄な仕事をこなしながら地上を目指した。

「……何です、その馬鹿みたいな量は?」

 買取嬢に馬鹿にされるのも久しぶりである。









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