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0 その【恩恵】、酷い物だと人は言う。
せめて姉が嫁いでいたら最初の目的地に出来たのに
しおりを挟むややふっくらとした体型に、肩まで伸びた金髪が僕の体に押し付けられる。日に日に力を増し行く圧に、弟の成長を感じる。
「フォルツァ、アビリタ。母達に姉上、ジョイエッリを頼むぞ?」
「お兄様っ、ぼくがんばるっ」
「僕も頑張るから。僕がみんなを守るから」
兄に先んじて返事をする弟のアビリタを手招きして抱き着かせてやる。少し遠慮がちな性分だが、やる気は兄に負けてない。
男親を抜きにした話し合いで、次期当主は僕かアビリタに決めていた。僕が候補になったとして、より良い候補が出るかも知れないので兄弟に危害が及ぶ事はない。フォルツァが候補になったとしても同じ事。アビリタの【恩恵】が確認出来るまで生活は保証される。
問題は、兄や僕のように有益過ぎたりよく分からない【恩恵】を得てしまった時だ。その時は家族総出で逃がすしか無い。今回受けた仕打ちは母達には伝えてあるので今後の課題にしてもらう。
「おにさまっ、あたしもっ」
「2人とも交代だ。ジョイエッリ」
一番下の家族であるジョイエッリはまだ4歳だが既に婚約者を持つ。姉はまだだと言うのにだ。
「アーレ」
1つ歳上の姉のエテルニアが背中から抱き着いた。
「私に貰い手が付かぬなら、貴方が夫になりなさい」
「姉上。アレの血を、濃くしたくはないでしょう?」
姉上は溜息を吐いて脱力する。アレとアーレが半分ずつで、どちらを取ろうかだいぶ悩んだとはエテルニアの母に聞いたが、まだ葛藤しているようだな。
「栗毛で青い目をした殿方と結ばれて下さい。男の子が出来ましたら遊びに行きます」
「そうね。手紙を送るわ。お母様が揉んで暖炉に入れなければ届く筈よ」
姉だけは僕の情事を知っている。血の事もあって僕との結婚は諦めたが、子を成す事は諦め切れないようで、僕が成人するまで夫を迎えるのを控えていたと言う。姉上が成人した当時は、1年違いなのだからすぐに結婚して男の子を産めば良いのにと言ったが、離れ離れになるより一緒に過ごす事を選んだそうだ。僕は早く子を成したいのだが、姉上は目先の欲を選んだ。
兄弟姉妹に別れを済ませて自室に戻ると、移動の手配を頼んでいたメイドがドアの前に待機していた。
「若様。ご報告になります」
「部屋で聞こう」
部屋に入る僕に続き、シンスとメイドが入室し、ドアが締められる。
「では報告を聞こうか」
「はい」
報告は馬車や荷物の手配が済んだ事。明日早朝に出発となる事。向かう先は隣領の交易都市ポートロディニアである事。そして凡夫の動向であった。あの野郎、冒険者ギルドに手を回して護衛を付かなくしたらしい。馭者と2人旅で30日も掛かるとなると、面倒だが馬車は捨てなければならないだろう。護衛の居ない貴族馬車なんて襲えと言っているようなモノだからな。予定を変えねばならないようだ。
「私からも報告があります」
メイドが部屋を出て、今度はシンスが報告すると言う。
「旦那様は皆様が朝食をなさっている時にはお部屋に居られました。そこで、私の股を確認なさいました」
「済まないな」
「それは問題ありません。若様が私のお尻をご所望であるとお伝えし、その証をご覧頂きました所…」
「…犯されました」
「済まん」
「申し訳ございません。未だに旦那様の子種が残っている気がしておりまして、お湯を頂戴したいと思っております」
「分かった。私も立ち会うぞ」
「よろしくお願い致します」
貴族の風呂に、メイドが入る事は許されない。なので僕が湯を使い、洗い係のメイドを連れると言う体裁が必要なのだ。僕にとってもこれがこの家での最後の入浴となるだろう。シンスを連れて湯に向かい、凡夫の体液を捨てさせた。
─シンスから、シンスと俺以外の体液を全て減らせ─
『シンスから、シンスとアウメンターレ・ディミヌイレ・アットアルメンテ以外の体液を3つ減らしました。シンスとアウメンターレ・ディミヌイレ・アットアルメンテ以外の体液は消滅しました』
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